深く潜れ(Dive Deep)! キネシオロジー&クラニオセイクラル・ワーク(クラニオ)の蒼穹堂治療室

「ココロとカラダ」再生研究所、蒼穹堂治療室が送る、マニアックなまでに深く濃い、極私的治療論とお役立ち(?)情報の数々。

臨床の現場から 6

2016-10-07 10:46:29 | 症例から考える

9月になって突然、体調不良に襲われるようになった、という学生さんを診た。元々、知り合いから横浜の澤ひろゆきさんのところを紹介されていたのだが、埼玉県の人なので横浜までは遠い、ということで澤さんがウチを紹介してくれたらしい(澤さん、ありがとうございます)。

授業中や部活動(運動系)中に全身が脱力して立てなくなるような状態になるという。少なくとも以前に同じような体調不良を経験したことはなく、9月からバイトを始めたのだが、それがストレスになっているのだろうか、ということも聞かれた。

事前に電話でそうした状況を聞いていたので、体調不良が起こった日と時間をわかる範囲でメモ程度でいいので、書いて持ってきてほしいとお願いした。

そして第1回目。問診票を書いてもらっている間、体に目を向けてキネシオロジーの筋反射テストで調べると(いつもやっていることだが、目で見て調べてはいるものの、こういうのは多分、視診とは言わない)、心臓付近に何か鍵がありそうだった。

書いてもらった問診票と持ってきてもらったメモに元に、更に問診で詳しい体調不良の中身を聞くと、朝から頭がフワフワする感じや頭重感があり、午後から夕方になって全身が脱力した感じで立てなくなったという。また息切れしたように息が荒くなり、手足がしびれて硬直したようになることも。病院でも診てもらったが、特に異常は見つからなかったようだ(医師によれば、手足のしびれは過呼吸によるアシドーシスだろうとのことだった)。

治療室に来た時は別段、体調不良はなかったので、実際に体調不良に襲われた時の体の状態を時遡行(ときそこう)によって再現し、何が起こっていたのかを探ってみた。持ってきてもらったメモによれば体調不良は9月に3回起こっていて、その3回に共通してあったのが左心室の中の前乳頭筋の弱化だった。

前乳頭筋は左右の心室にそれぞれあって手の指のような形をしている。先の方からは腱索という紐状のものが出て、左心室側は大動脈弁に、右心室側は肺動脈弁にそれぞれ付着している。心臓が収縮して血液を送り出した後、今度は前乳頭筋が収縮して腱索を引っ張り、動脈弁を閉じて血液の逆流を防ぐ仕組みだ。

だから当然、体調不良の時には大動脈弁の問題も出ていただろうと診ると、ビンゴ! ついでに椎骨動脈や脳底動脈の血流低下もあったことがわかった。そして脳と心臓の優先順位は、心臓。つまりは何らかの原因で前乳頭筋が弱化したことで一時的な大動脈弁の閉鎖不全のようなことが起きていて、脳の血流も低下(ということは全身の血流も低下していたはず)。それで体は心臓の働きを高めようとして呼吸の回数を増やし、それが過呼吸の状態を作り出してしまったのではないか、ということだ。

そこで前乳頭筋が弱化した原因を探るべく、キネシオロジーによる問題の釣り上げを行ってみた。

問題の釣り上げは、構造、環境、栄養、感情、遺伝、人間関係、…といったカテゴリで優先的に対処すべき問題を釣り上げていくもの。例えば人間関係のカテゴリでヒットするなら、更にそれが家族関係なのか仕事関係なのか…、仕事関係なら上司、同僚、部下、取引先、…というふうに問題の焦点を絞り込んでいく(私の場合は我流なので、もしかしたら使い方が間違ってるかもしれないが)。

今回ヒットしたカテゴリは栄養と環境。栄養ではビタミン類の不足があり、こちらはサプリメントで補った。環境で出てきたのは電磁波と化学物質。そのうち前乳頭筋の弱化に直接関わっているのは化学物質の方らしい。そこで家の中で芳香剤や消臭剤の類は使っていないか質問したところ、それらについてはよくわからないが、そういえば虫除けを8月頃から使っているとのこと。そこで次回、それを実際に持ってきてもらって調べることにし、1回目はエッセンシャルオイルやお灸で心臓へのケアを中心に行った。

で、2回目はその5日後だった。施術の次の日は調子が悪かったが、それ以降は調子はいいという。

早速、持ってきてもらった虫除け(網戸に貼るタイプのものだった)を使って体への反応を調べると、百会(ひゃくえ)方向や左頭頂部~側頭部近くに置くと、左心室の前乳頭筋、大動脈弁の弱化、椎骨動脈や脳底動脈の血流低下が現れる。どうやら、これが原因のようだ。ただ解せなかったのは、体調不良は自宅ではなく外にいる時に起こっていたことだ。そのことを言うと、体調不良に襲われた時は元々、朝から調子が悪かったので、そこに授業や部活などの負荷が加わって全身の脱力などとなって現れたのだろう、との意見だった。つまり素地はやはり自宅にあったわけだ。

「事件は現場で起きている」とばかりに、目の前の患者の身体を詳細に調べるのはいいけれど、目の前の患者の身体しか診ていないと見えなくなってしまうものがある。その人の広い意味でのカラダは、その人の生活してきた時間と空間の全体からできている、ということは忘れてはいけない。

そういうわけで、この件は2回目であっさり解決。


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