11/15、タレントで俳優の阿藤快さんが亡くなった。この日の午後、仕事先に姿を見せない彼をスタッフが自宅に訪ねたところ、ベッドの中で既に冷たくなっていたという。死因は胸部大動脈瘤破裂。ベッドに横たわるその顔は非常に穏やかで、苦しんだ形跡は見られなかったとニュースは伝えている。
──というその一報をネット・ニュースで知った時は驚いた。別に知り合いでも何でもないが、つい最近、ドラマ『下町ロケット』に弁護士役で出演していたのを見ていたからだ。まさに突然死だった。
そのことで、HEALTH PRESS(ヘルプレ)に出ていた理学療法士の三木貴弘氏の記事が非常に重要なことを書いていたので、ここに紹介したい。元記事は「その“腰痛は危険なシグナル。阿藤快さんも亡くなる前に訴えた『痛み』とは?」。
先日、俳優の阿藤快さん(享年69歳)が急死した。死因は「大動脈破裂胸腔内出血」とのこと。体内で最も太い血管である大動脈にできた瘤(こぶ)が破れる、危険な疾患だ。大動脈瘤が破裂したら、その死亡率は80~90%にも上るといわれている。
動脈瘤は、いったんできてしまうと、自然に縮小することはない。治療せずに放置しておくと、瘤の壁にできた血塊や動脈硬化片が剥がれて血管内に流れ出し,動脈の末端に詰まって障害を起こしてしまうこともある。
また、当サイトで紹介したとおり、突然に解離(動脈壁の内膜が裂ける)することもある。
「病院着前に20%以上が死亡! 芸能人やミュージシャンが次々に発症する大動脈解離とは?」
症状には、胸部の大動脈瘤なら咳、血痰、胸痛、背中の痛み、腹部なら腰痛や腹痛などがみられる。ただし、この段階は破裂する危険性が高まっている状態で、大動脈瘤が大きくなって破裂すると急死の危険性がある。
マッサージでは治らない危険な痛み
このように、大動脈瘤は背中や腰などの痛みと深い関係がある。実際に阿藤さんも亡くなる直前まで、背中の傷みを和らげようと、マッサージを受けていたことが報じられた。
当然ながらこの痛みは、実際に筋肉に何らかの問題が起きているわけではない。「関連痛」と呼ばれる内臓から引き起こされたものだ。
関連痛とは、疾患の部位とは違うところが痛むことだ。簡単にいえば、神経が内臓の痛みを勘違いして表面の皮膚に伝え、そこが痛むことをいう。たとえば、尿管結石になると腰に激しい痛みが起きたり、心臓に問題があれば左肩に痛みを感じたりする。これは、関連痛によるものだ。
大動脈瘤などの深刻な疾患の可能性がある痛み、ということでもある。もし、大動脈瘤が原因による腰の痛みを改善しようと、マッサージを受けたら破裂を招く恐れもある。最悪の場合、死に至ってしまう、ということになりかねない。
では、その痛みが、単なる腰痛なのか、それとも大動脈瘤などの深刻な疾患なのは見分ける方法はどのようなものにしたらよいのだろうか。
目安は「腰の痛みが動作とは関係なく起きる」
もちろん、まずは医療機関を受診することだが、自分でおおよそ予想できるのは、「腰の痛みが動作と関係なく起こる」か。
たとえば、「曲げる」「反る」などの動作に関連せず、不規則に痛むが起きる。安静にしていても痛い、夜間時に痛む、痛みの種類がいつも違う(ジンジンするような痛み、だんだんと強くなってくる)、発熱や炎症などを伴う、など。これらは目安になるだろう。
このような痛みの特徴があれば、深刻な内臓疾患が潜んでいる可能性がある。何かいつもと違う痛みを感じたら、速やかに医療機関を受診することをお勧めする。
実際に阿藤快さんにマッサージを行なっていた人が、彼の訴える痛みに対してどんな見立てをし、どういう施術を行なっていたのかはわからない。だが、それが単なる筋疲労から来るような痛みでないと気づいていたのかどうかは気になるところだ。
治療家として患者を診ていればすぐにわかることだが、患者が症状を訴える場所と本当に悪いと場所は違っていることが多い。だから相手が症状を訴えている部分を施術してもあまり意味がなかったりするものなのだが、例えばネットの治療家・セラピストが意見交換するサイトなどでも、
「患者が痛いというところを一生懸命揉んでるけど満足してもらえなくて、技術の未熟さを痛感しています。固まっている部分を柔らかくするにはどんなテクニックを使えばいいか教えてください」
のような質問が相変わらずあって、そういうことを聞いてくる人は、その中に
「固いところというのは固くなる理由があって固くなっているわけだから、固い部分を緩めるのではなく、痛みが出るまで固くなっている原因を探すことを考えるべき」
みたいな回答があっても、適当にスルーしてしまっていたりすることも少なくない。
要するに「痛いのはそこが固くなっているためだから、それをほぐして柔らかくできたら勝ちィ」という発想しかないまま、マッサージ的なことをやっているわけだ(ちなみに、「マッサージ」ができるのはマッサージ師の資格を持った人だけ)。患者にしてみたら怖いよね。だって
もし、大動脈瘤が原因による腰の痛みを改善しようと、マッサージを受けたら破裂を招く恐れもある。最悪の場合、死に至ってしまう、ということになりかねない
んだから。
もちろん、怖いのは患者ばかりではない。こういうケースは治療家、セラピストにとっても、とっても怖い話。目の前の相手が本人も気づかない重篤な疾患を持っていて、それを検知あるいは感知できなければ、ヘタすれば施術中に相手が治療台の上で突然死、なんてこともあり得るわけだから。
それはまあ運・不運といったこともあるのだろうけど、それで片付けちゃいけない。阿藤快さんのケースは、そういうことを教えてくれるものでもあったと思う。
おたずねしたいことがあって、おじゃましました。
先日帰省して温泉に行ったときに母の背中を見たら、ちょうど腰の辺りの一部分だけ、長さ7~10cm、深さ1cmくらいあったでしょうか、へこみがあり、背骨がえぐれたようになっていました。他に同じような人がいないかと見渡すと、同じような年代(70代くらい)の人に同様のへこみのある人を見つけました。
本人はまったく知らなかったようで痛みは無いようですが、何が原因なのか、病気の可能性、骨粗しょう症?など気になります。
ネットで検索してもヒットするものがなくて、ふとsokyudoさんのことを思い出しました。お知恵を拝借できますか?
ご質問頂き、ありがとうございます。
一番ありそうなのは脊椎の前方すべり症で背骨の一部が凹んでいる、というものですが、そういう場合、凹みはせいぜい2~4cmほどであり、7~10cmにわたって凹んでいるというのは正直、見たことがありません(腰椎の前彎があまりにも強くて、広範囲にわたって凹んでいるように見える、という例はありますが)。
自覚症状のようなものはなさそうなので、必ずしも病的なもの、とは言い切れません。まず問題は、それがいつからあるのか、です。先天的なものか、ある時期に背中や腰を打つような事故やケガなどがなかったか。ただそれも、ご本人も心当たりがないとしたら行き止まりです。
というわけで、書かれたことだけでは、これ以上はわかりませんとしか申し上げられません。こんな知恵でスミマセン。
差し支えなければ、その部分の写真でも送って頂ければ、そこから分かることがあるかもしれません。