深く潜れ(Dive Deep)! キネシオロジー&クラニオセイクラル・ワーク(クラニオ)の蒼穹堂治療室

「ココロとカラダ」再生研究所、蒼穹堂治療室が送る、マニアックなまでに深く濃い、極私的治療論とお役立ち(?)情報の数々。

2023年冬アニメの感想と評価 2

2023-03-31 09:50:16 | 趣味人的レビュー

2023年冬アニメについての、ネタバレなしの感想と評価。3月末を待たずに放送が終わったものについては「1」に述べた。この「2」では、それ以外で3月末までに放送が終了したものについて。

ちなみにアニメの評価については、私の場合、何より物語が面白いことが重要で、作品全体の評価の少なくとも半分はそれで決まる。逆に萌えやエロといった要素にはさほど興味はないし、作画崩壊も(目に余るほどヒドくなければ)問題にはしない。

以下、並びは50音順で、評価はA~E。

『アルスの巨獣』

時折、巨獣と呼ばれる存在が街を攻撃してくる世界、アルス。巨獣は甚大な被害をもたらす一方、人もまたその巨獣を狩り、解体し、売りさばくことで経済が回っている。だが、なぜか近年、強力な「赤目の巨獣」が頻繁に出没するようになり、大きな脅威となっていた。そんな中、あることのために心を閉ざしていた主人公、「死に損ないのジイロ」は“研究所”から逃げ出してきたという実験体22番、「二十と二番目のクウミ」と出会い、彼女を救うべく再び立ち上がる。
産業革命前のヨーロッパのような町並みと謎の超テクノロジーが同居する奇妙な世界が舞台のオリジナル・アニメだが、意図的にジブリに寄せてるのか結果としてそうなったのかはわからないが、全体的にジブリアニメの劣化版という感じの作品。何より不思議なのは、あれだけのテクノロジーを持っているのに、巨獣には剣や槍で立ち向かっているところで、その辺はキチンと説明がほしい。とはいえ、例えば登場人物ほぼ全員が二つ名を持つことで各キャラの説明的な描写を省くなど、物語を進める上での工夫がなされている。
だが伏線を残したまま放り投げてしまったような、あの終わり方は何だ!(「続きは劇場で」のはずが立ち消えになってしまった、とか?)立ち回りのシーンとか作画は頑張ってたと思うだけに、残念。
評価はC+。

『うる星やつら』第2クール(1期後半)

第1クールは登場キャラ紹介クールだったので、ほとんど見るべきところはなかったが、キャラがほぼ出揃った第2クールになって、やっと少しは見られるようになった。とはいえ、どう考えてもこの作品は時代性に合わない(といっても、間違っても「コンプライアンス云々」という意味ではない)。今の若い人たちがこれを見てどう思うのかは分からないが、正直、今の私には受け入れがたい。
一時YouTubeに新版の絵に旧版の声を入れ込んだ動画がアップされていて、「スゲー、全然違和感ねえ~」みたいなコメントがたくさんついていたが、こういうの新作の制作陣が見たらどう思うんだろうな(ちなみに今、この動画は全て削除されている)。こういう作品には必ず「旧作に比べて新作はダメだ」的な意見がついて回るもので、私もそういう意見には辟易しているのだが、この『うる星やつら』に関しては「単なるリメイク」以上のものではないので、仕方がないと思う。
評価は第1クールはD~D+だったが、第2クールはD-~C-。旧作もそうだったが、回によって「一応当たり」から「大ハズレ」まで、話の面白さの落差が激しい(そして、その原因はもちろん原作にある)。アニメはあと2クールの放送が予定されているが、見るかどうかは微妙。

『大雪海(おおゆきうみ)のカイナ』

『シドニアの騎士』、『BLAME!』と同じく、原作は弐瓶勉、制作はポリゴン・ピクチュアズのゴールデン・タッグ(?)による作品。SFながら、前2作がバリバリにメカニカルな未来世界を舞台にしていたのに対して、この『大雪海のカイナ』はどこか『風の谷のナウシカ』を思わせる世界観で、ジブリがフルCGでアニメを作るとこんな感じになるかも、という『アルスの巨獣』と並ぶ今期の疑似ジブリ枠。
「雪海」に覆われた地表に巨木「軌道樹」がそびえ立つ世界。軌道樹から広がる天膜の上で暮らす少年、カイナは雪海からやって来た少女、リリハと出会う。リリハは雪海の中の王国、アトランドの王女で、滅びに貧した国を救うため「賢者」を求めて天膜までやって来た、と語る。巨大な移動要塞を擁する大国、バルギアからの脅威にさらされるアトランドのため、天膜の村から雪海へと向かうカイナとリリハを待つものとは?
絵柄はジブリ的だが、物語は同じ弐瓶勉の『BLAME!』と重なる部分も多く、「これは『BLAME!』の世界観を変えてのセルフ・リメイクなのでは?」とずっと思っていたら、最終回の後の劇場版の予告で、それは間違いだったことを知った。そうそう、『カイナ』は劇場版に続くのだ。
白を基調としたあの絵柄のせいか全体的なトーンは静謐で余白が多い感じ(実際、雪海の世界は雪が音を吸収するため、とても静かなはずだ)。物語の展開はとてもジブリ的なボーイ・ミーツ・ガールから始まる冒険活劇のはずなのに、クライマックスまでその静謐さのためか、全然“血湧き肉躍る”感じがしない。
私は、こういう設定ならもっとはっちゃけたものを見たかった、と思うので、評価はC-~C。

『スパイ教室』

タイトルだけ見ると「『暗殺教室』のパクリか?」と思ってしまう人もいるかもしれないが、もちろんそうではない。系統としては2022年秋期にドラマ化された『霊媒探偵・城塚翡翠』と同じタイプのミステリ作品と言える。
伝説のスパイ、クラウスはかつてミッションの失敗によって所属チーム〈焔(ほむら)〉が壊滅する、という事態を経験している。そこで生き残ったクラウスが新たな不可能任務(ミッション・インポッシブル)のために集めたのは、各スパイ養成機関で落ちこぼれの烙印を押された少女たちだった。「そんなの自分たちには無理」と訴える少女たちにクラウスは「伝説のスパイである自分を仮想敵にして腕を磨け」と語る。そして、いよいよその不可能任務が始まる。
…という最初の「不可能任務」のエピソードには叙述トリックが使われている。叙述トリックとは人の持つ先入観を逆手に取った言葉/文章によるトリックで、本来、映像でそれをやるのは至難の業だが、『スパイ教室』はその難題をギリギリ成功させていた(と私は思っているが、ネットでは否定的なコメントも数多く見られる)。また、それに続くエピソードにも意外な仕掛けがなされている。
原作者は『ジョーカーゲーム』や『Princess Principal』を見てスパイものを書いてみようと思ったという。スパイものとしては『Spy×Family』の1期(2期は切ってしまって見てないので)よりは遥かに上だが、残念ながら『Princess Principal』や『ジョーカーゲーム』には及ばない、というのが私の正直な感想。とはいえ、物語に仕掛けられたトリックはなかなかに切れ味鋭く、その点では侮っていい作品ではない。
評価はC~C+。最終回は意味深な終わり方で、公式サイトによると4/7に新たな情報が出るようだ。

『TRIGUN STANPED』

昔、マンガ原作のアニメとして『TRIGUN』という作品が作られた。その時に制作の現場にいた人たちが、そのリブートとして作ったのが、この『TRIGUN STANPED』である。私は元の『TRIGUN』を知らないが、今作は旧作と世界観の一部を共有してはいるものの、物語上のつながりはない独立した作品のようだ。
砂漠のような風景が広がる荒廃した世界で、“人間台風(ヒューマノイド・タイフーン)”と異名を取る、お尋ね者を探して取材を続ける新人記者のメリル・ストライフと飲んだくれのベテラン記者のロベルト・デニーロ。彼らが出会った“人間台風”その人は、深紅のコートを着たお人好し、ヴァッシュ・ザ・スタンピードだった…。
全編フルCGのアニメだが、制作は『宝石の国』、『BEASTERS』などを手がけてきたオレンジなので、アニメーションとしてのクオリティは保証済み。問題なのはストーリーラインとキャラクタで、制作陣がやりたいことは分かるのだが、主人公であるヴァッシュが“いい人”過ぎて、彼の行動原理が全く理解も共感もできない。その点でいえば、舞台設定がちょっと似ている『錆喰いビスコ』のビスコやパウーの方がまだ理解できる(私はどちらかというとナイヴズの側の人間なのだ)。なので、物語もとても冷めた感覚でしか見られなかった。
なので評価もその分を差し引いて、C+~B-。で、物語はこれで完結、と思っていたら、更に完結編が制作されるようだ(今のところ、どういう形になるのかは分からないが)。

『ツルネ』2期「つながりの一射」

高校の弓道部を舞台にした、いわゆる部活動もの。展開は部活動ものの定型そのものでありながら、テンプレ感が全くないのは、さすが京アニ。1期「はじまりの一射」では、主人公、鳴宮湊(みなと)が所属する風舞高校弓道部の県大会までが描かれたが、この2期はその続きで、他校の生徒たちまで含めた彼らが弓道を通じて成長していく様が物語の軸となる。
聞くところによると、アニメで弓道のシーンが描かれるとネットに、そのシーンについてあれこれあら探しして批判する「弓道警察」が湧くらしいが、この『ツルネ』には「弓道警察」が湧かなかったそうだ。それだけ綿密に取材し、丁寧に作られているということだろう。派手さはないが、その質の高さは一見すれば歴然で、特に試合のシーンなどは見ていて涙が出るほど。
京アニの制作なので、もっと話題になってもよさそうだが、見たところアニメYouTuberでこの作品について語っている人はほとんどいない。今期のアニメでも指折りの良作だと私は思うので、この反応の(少)なさは悲しい。1期はEテレで第12話が最終回として放送された後、その後日談となる第13話がネット限定で公開されたが、2期でもまるで最終回のような第12話の後、その後日談として第13話が放送された。
とにかく上質の青春群像劇であり、評価もA-。

『不滅のあなたへ』2期第2クール

死を超越した不死の存在であるフシと、謎の敵、ノッカーとの戦いを描いた作品。
正直なところ、1期はあの衝撃的な第1話を除くと、あまり面白いとは思えなかった。だが、この2期を見て、1期は全て2期のためのプロローグだったのだと思うと合点がいった(それでもボンが出てきた時は、「あぁ、またここでグダグダになるのかぁ」と思ったが)。
それと1期を見ていた時、この作品のテーマは「アイデンティティ」だと思っていたが、2期を見ていると、これは「生と死」そのものを問うている作品だと分かる。
類型的なストーリーラインに終始するアニメがほとんどの中、『不滅のあなたへ』は物語がどう展開するのか最後まで全く予測できなかった。見終わった後も(いい意味でも悪い意味でも)「自分は一体何を見せられていたのか?」と思う。押井守は「クリエイターはどこかで自分の死生観を問う作品を作ることになる」と述べているが、原作者、大今良時にとってこの作品がそれなのか?
評価は1期だけならD+~C-だったが、上記のような理由でC+~B-。3期も制作されるので、またつき合うつもり。

『ブルーロック』第2クール

日本人サッカー選手の中に世界的ストライカーを育成するために作られた、ブルーロック(青い監獄)に集められた若きプレイヤーたちの、生き残りをかけた激闘を描く。第1クールで1次セレクションを勝ち抜いた主人公、潔世一(いさぎ よいち)たちは、第2クールで次の2次セレクションに挑むことになる。2次セレクションは「サッカー花いちもんめ(?)」だ。
1次セレクションが熱かったので、2次セレクションでパワーダウンするんじゃないかとちょっと心配だったが、それは杞憂だった。負けたら終わりのギリギリのせめぎ合いの中で、選手一人ひとりが超覚醒を遂げていく。描かれるのはサッカーの話だが、能力開発という部分で参考になる点は多い。
細かい部分に突っ込みたくなるところはあるものの、今期の中で一番放送が待ち遠しい、パワフルで面白かった作品なので、評価はA-~A。1期の最後に2期と劇場版(スピンオフ?)の制作決定も報じられた。楽しみに待ちたい。

『文豪ストレイドッグス』4期

横浜を舞台に、文豪の名とその文豪にちなむ異能力を持つ者たちによるバトルを描く『文豪ストレイドッグス』は、これまで途中1本の劇場版を挟んで3期が放送された。第3期の終わりで武装探偵社はついに異能力「罪と罰」を使うロシアから来た魔人、フョードル・D(ドストエフスキー)を倒した。だがロシアからの脅威はこれで終わりではなかった──というのがこの第4期。ちなみに第4期はその前に、福沢諭吉と江戸川乱歩が出会い、武装探偵社を設立するまでが最初の3話を使って描かれる。
これだけ長くやっていてもしっかり面白い、というのが『文スト』の何よりの強みだろう。登場人物はかなり多いし、〈猟犬〉部隊など今期初めて登場する者も少なくないが、それぞれのキャラがキッチリ立っていて物語に絡んでくるので、誰が誰だか分からないということもない。
ただ、これまで『文スト』は期ごとに完結した話になっていたのが、この4期は話の途中で急に最終回を迎えることになってしまった。7月から5期が放送されるようだが、実態として、この4、5期は分割2クールのエピソードと見るべきだろう。
ややパターン化しているとはいえ、展開は予測不能で、純粋に物語として面白いので、評価はB+~A-。

『REVENGER』

虚淵玄(うろぶち げん)によるアニメ版「必殺仕掛け人」あるいは「必殺仕置き人」。そういえば映画でも『藤枝梅庵』が公開されていて、皆、口ではやれ人権だ、やれコンプライアンスだのと言いながら、実は心の中ではこういうのを求めているんだねー。
舞台は幕末の長崎。人々の困りごとを解決する利便事屋の裏家業は復讐代行業、すなわちrevengerだった(ってダジャレかよ?)。彼らは強い怨みで噛まれた一両小判(怨噛み小判)によって利便事(revenge)を請負うのだが、彼らの後ろには利便事屋たちの元締めとして礼拝堂(=キリスト教会)がいて「汝らの罪を洗い清める」とかテキトーなことを吹いて上前をはねてる、という構図だ(更に物語が進むと別の構図も見えてくる)。
この手の話は、殺される側の「悪」をどれだけキッチリ描けるかが大きな鍵になる。「こいつら、どこにでもいるただの小悪党じゃん…」と視聴者に思われてしまったら、利便事屋がそいつらを殺す必然性がなくなってしまう。だから、ドラマ〈必殺〉シリーズでも「悪」の側の無慈悲さ、卑劣さ、悪辣さを描くことに十分な時間をかけていた。それに対して、この『REVENGER』は30分アニメだから、毎回違った「悪」を持ち出すと中途半端になってしまう。そこで物語全体を貫く「悪」として、薩摩藩によるアヘンの密貿易に端を発した長崎の闇の世界というものを据えていて、これは非常に上手いと思う。だからこそ、あの終わり方は「悪vs悪」の話としてちょっと綺麗すぎる。
そういうわけで、評価はB台をつけたかったところだが、最終回で心変わりしてC+。


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