深く潜れ(Dive Deep)! キネシオロジー&クラニオセイクラル・ワーク(クラニオ)の蒼穹堂治療室

「ココロとカラダ」再生研究所、蒼穹堂治療室が送る、マニアックなまでに深く濃い、極私的治療論とお役立ち(?)情報の数々。

臨床の現場から 13

2019-10-26 19:43:15 | 症例から考える

ハードボイルドの巨匠、ロス・マクドナルドは『動く標的』の中で、私立探偵、リュウ・アーチャーに
「私の仕事の大半は人間を観察し判断することだ」
と語らせている。

治療家という仕事もまた同じ。人を観察し、そこから仮説を作り、その仮説を検証するように施術する。そして施術の結果を観察し、そこからまた仮説を作り直す。その観察し、仮説を作り、検証するということの絶え間ない繰り返しが、我々(あるいは私)がやっていることの全てだ。

中には一見しただけで(あるいは2,3言葉を交わしただけで)その人の抱えている問題がほとんど全て分かってしまう、というような人もいるようだが、私には到底そんなマネはできないので、大抵は仮説を作っては壊し、作っては壊し、をすることになる。
けれども、時には最初に作った仮説がビシッとはまって、それだけでストレートに行けてしまうこともある。例えばYさんのケース。

その時のYさんの主訴は、首の痛みだった。階段を降りたり後ろを振り向くような動作をすると、左頚部にズキッとした痛みがあり、ひどい時は頭痛まで起こるという。

痛みが出ていたのは(左)頚部だが、首の部分を調べても特に問題はない。そこで一旦主訴から離れて、筋反射テストを使って体のどこにどんな反応が出ているかを調べてみると、左右の太衝(たいしょう)穴と攅竹(さんちく)穴に強い反応があった。

太衝は肝の原穴。東洋医学(中医学)では「肝は目に開く」という。その上、攅竹は眉頭に位置するツボだ。試しにギュッと目をつぶってもらうとインジケータ(指標)筋がアンロックする(=弱くなる)。そしてキネシオロジーの内臓筋肉反射(注)では、目と耳の関連筋は上部僧帽筋とされる。上部僧帽筋は上項線、外後頭隆起、項靱帯に起始するから、その筋に問題が生じると頚部や頭部に症状が出る可能性は十分あり得る。そこから

     攅竹穴
      ↑
太衝穴―肝←目→上部僧帽筋―首

という構図が仮説として浮かび上がってきたので、それを元に施術しようと考えた。

もちろん、これはよくできた構図ではあるが、上にも述べたようにあくまで仮説であり、これを絶対視することはしない。これがダメなら別の仮説を立てる心構えは常に持っていなければならない。
実は治療家に成りたての頃、自分では「これで行ける」と絶対の自信を持って打った手がまるで効かず、内心「ギョエ~」となったことがある。人の身体は一筋縄ではいかない。「これで俺はこの件は全て見切った!」などと思ったら、次の瞬間には奈落の底だ。

ただYさんのケースでは、施術として太衝にお灸をしたところ、それだけで肝、目、そして攅竹の反応も取れ、実際に首を回旋させるなど体を動かしてもらっても痛みは全然出なくなっていた。プランBは考えずに済んだのだ。ヤレヤレ。

長くやっていると、時々こういうふうに絵に描いたように1手でズバッと決まるケースもある、という話。

(注)内臓筋肉反射とは、特定の臓器は特定の筋肉と対応関係を持ち、その臓器に何らかの問題が生じると、対応する筋肉(関連筋という)に異常が生じる、というキネシオロジーにおける機序。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 膜の向こう側 | トップ | カバラと「生命の木」 19 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

症例から考える」カテゴリの最新記事