深く潜れ(Dive Deep)! キネシオロジー&クラニオセイクラル・ワーク(クラニオ)の蒼穹堂治療室

「ココロとカラダ」再生研究所、蒼穹堂治療室が送る、マニアックなまでに深く濃い、極私的治療論とお役立ち(?)情報の数々。

栄養に関わる、あるケース

2006-10-09 09:11:36 | 症例から考える

言うまでもないことだが、きちんと栄養を摂ることは生きていく上で必要不可欠なことだ。しかし、栄養バランスに気を遣っているつもりでも、そもそも世の中に出回っている食品の多くが正直言って「ひどいものだということもあってか、知らず知らずのうちに何らかの栄養の不足やアンバランスが生じている、というのは珍しいことではない。ここに紹介するケースもそのヴァリエーションの一つだが、ちょっと不思議な例である。

その人の主訴は、立ち上がった時の踵の内側の痛み(これは以前から)と、胸の胸骨体下部に時々現れるキューンという痛み(これは最近)。前回の治療では、まず左右の踵内側の肉体より上の4層に渡っての弱さと、直接そこに触れた(TLした)時の弱さを検出。その原因を追っていくと、ミネラルの不足があり、更にその物質を特定すると、銅の不足があることがわかったので、さっそくその治療を行い、踵の内側の(肉体より上の層も含めた)弱さを取った。

とは言え、例えば、腰の前屈で痛みを訴える人に、何かの栄養物質を持たせて前屈させると、その痛みが消えてしまう、といったことは、AK(アプライド・キネシオロジー)を使っている治療家には半ば常識である。だから、もちろん、こんなネタでブログを書いても全く意味がない。問題はこの後だ。

踵で銅の不足があったので、体の他の部分にも銅、あるいは他のミネラルの不足による問題が起こっている可能性がある。そこで上の治療に続いて、他にミネラルの不足が出ているところがないかを診たところ、胸骨体の下部に反応があり、更に詳しく調べると心臓の右心室から肺動脈弁の範囲に弱化が起こることがわかった。とすると、例の胸のキューンという痛みの原因はこれかもしれない…と思った矢先、反応が出ていたのは、ミネラルの不足でではなく、銅の過剰でだったことに気づいた。調べる時に私がうっかりチョンボしていたのである

…しかし、あれ? この人、確か踵は銅の「不足」だったはず。だとすれば、胸部・心臓もあるとすれば銅の「不足」でなければおかしい。なのに何故、銅によって弱さが出るのか? 踵か胸かどちらかの検査結果を勘違いしているのか? しかし、そうではなかった。踵は銅によって弱さが消えた。改めて確認しても、弱さはない。心臓に聞くと(などと書くと、変に感じられるかもしれないが)「銅は過剰だ、あるいは、あっては困る」との答。つまり話を整理すると、この人は踵では銅が不足し、胸部(心臓)では銅が過剰になっている、ということになる。

そこで、銅によって弱さが現れるところは他にないかを調べると、膵臓と上腸間膜でも心臓と同じことが起こることがわかった。一体何だこれは? 銅の代謝異常か? 銅の代謝異常でまず頭に浮かんだのは、目に現れるカイザー・フライシャー環だが、そんなものは出ていない(と言っても、写真でしか見たことはないが)。もっとも、そんなものが出ているなら、ウチなんかに来るより、まずは病院に行かなければならないところだ。

結局、この件はよくわからないまま、取りあえず心臓の銅に対する弱さだけ治療することにした(原因はわからなくても治療できてしまうのが、手技療法のいいところだ)。なお、これを治療したら膵臓、上腸間膜の問題も消えたので、それらは2次性に出ていたものだったのかもしれない。

銅の代謝異常は、病理学の教科書によれば、ウィルソン病と関連するという。ウィルソン病は肝機能の低下によって起こる銅の代謝異常で、血中セルロプラスミンの減少、尿中の銅排泄増加、肝臓や脳への銅の沈着から、肝硬変や錐体外路系の異常を引き起こす。また、目にカイザー・フライシャー環と呼ばれる褐緑色の輪が現れることもある。

ちなみに、この人の場合、少なくとも肝臓の異常は検出されなかった(脳・神経関係は調べていない)ので、少なくともウィルソン病ではないと考えられるが、念のため次回、改めて調べてみようと思う。

…というわけで、これは、一人の人で同じ栄養物質の不足と過剰が同時に出ることもある、ということを初めて知ったケースだった。もともと栄養関係を治療で扱うおうとすると、生化学などを含めた幅広い知識と実際のブツが必要なので、ウチではまだ通り一遍の調べ方しかしていないのだが、それでもこんなケースがあろうとは…。

余談だが、栄養を調べて不足している栄養素が見つかり、「○○(栄養素名)が不足していますね」と言うと、「○○の入っている食品はちゃんと食べているので、そんなはずはない」と言い返されることがある。しかし、栄養素の不足は次の三つのケースで起こることを知っておかなければならない。
1.その栄養素を含む食品を摂っていない
2.その栄養素を含む食品は摂っているが、それがきちんと消化、吸収されていない
3.その栄養素を含む食品は摂っていて、きちんと消化、吸収もされているが、吸収される以上に消費されてしまっている(例えば、強いストレスはビタミンを大量に消費させる)


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