だからちがうんだってば.

ブログ人から引っ越しました

続・事業仕分け

2009-11-15 10:28:27 | 生活
行政刷新会議の事業仕分けについては,オープンな場で議論されることが望ましいという意見や,オープンだからエンジョイプレイ…ではない,スタンドプレイに走りやすく衆愚政治そのままだとの話や,少しくらいスタンドプレイがあってもきっかけ作りや政策形成の方向性の転換にはいいんだとか,そうかもしれないけど対象となる事業規模が少ないので意味がないとか,いったん振り子を逆に振ること自体が意味があるんだとか,そもそも予算編成過程における位置付けがよく分からんとか,いろいろな見方があってどれもそれなりに一理あるところなのですが.さて.

「13日の仕分け結果の詳報」より.

 【地方交付税交付金】概算要求は自治体への配分額で15兆7773億円。地方債を発行し公共事業を行った自治体には、元利償還金の一部に相当する額を交付税に上乗せして配分していることなどが「政策誘導」「恣意的な運用」と批判された。判定では18人全員が「見直しが必要」と指摘、ただ「交付税の総額を圧縮」としたのは6人にとどまったことなどから、結論は「抜本的な制度見直しを行う必要がある」となった。
三位一体の改革とかいって一つの内閣が重要課題の一つとしてとりあげて議論したような内容を1時間くらいがやがやいって決まるものか,と思ったり.地方交付税の現在の実態としては,補助事業の裏負担を足し上げた上で単独事業に相当するようなものを足して計算しているわけで,制度設計自体からして政策誘導,ということは時の内閣の政策目的に応じた恣意的な運用になっているわけで,そこから否定されるとなると,税収格差が地方によってあるなかで補助事業を展開するというさまざまな政策分野でのやり方そのものを見直す必要があるわけで,いやそれを見直してもいいんだけども,その結節点というか,残差みたいにして決まっているところだけ採り上げて「こりゃひどい」といっても話は始まらんですよな,ということには,ご説明に行った官僚以外には気がついていなかったのか,それとも気がついていたけどそれをいったら仕分けにならんから黙っていたのか,どうなんでしょう.ま,中継を聞いていたわけでもなんでもないのでなんともいえませんけど.


 【競争的資金(若手研究育成)】博士課程修了者らに経済的不安を感じさせず研究に専念させることなどを狙った特別研究員事業(要求170億円)は「雇用対策の色合いが強い」「民間に資金を出してもらえないか」との意見が相次ぎ、予算削減となった。若手研究者養成のための科学技術振興調整費(同125億円)と科学研究費補助金(同330億円)も削減との結論。
雇用対策の色合いが強い,って言われても,「出口」のことを考えずにうかうかと大学院の拡大を進めて,猫も杓子も……と言ったら言い過ぎでしょうけど,大学院をやたら作って定員増やして,定員を埋めなきゃ交付金を減らすよと脅したり…ではない,誘導したりして大学院生を増やしておいて,就職口のないポスドクがそこらへんにうろうろしているところでは特別研究員事業は雇用対策そのものと言われてしまえばまあそのとおりの話.民間に資金を出してもらえないかと言われても,今後活躍するかどうか分からない(活躍するかもしれない)ポスドクをわざわざ雇おうとする民間企業はそれほど期待できないわけで,広く言えば基礎研究は民間部門がやらないから公的部門がやるほうがいいですよね,とおんなじ理屈が成り立つはずのところ,そこから否定されては,ぐうの音も出ないですね.ぐう.博士課程まで行ってみて専攻に見合う就職口がなかったら学卒とおんなじ扱いでもいいから就職して,それでも就職口がなければ生活保護でも何でも受けて,という方向に政府が向かうんだったらそれはそれで一つの見識だとは思いますが,そうすると,数少ない就職口を求めて博士課程での競争が激しくなって質が向上するかもしれないし,大学院に行くような間抜けが少なくなってより生産的な分野に労働力が回ってけっこうなことである一方,多少なりとも規模の経済の効果の働く研究という分野での質の低下は避けられないだろうし,そうすると将来の大学教育の質も落ちるのではないかしらんと危惧されるところ,そのころに今の政権にいる人たちが責められる気遣いはほとんどないので,仕分け人的にはそれでいいんでしょうなきっと.あ,博士課程の人間が減れば,議員さんが落選したあとに大学に就職しやすくなる,というメリットもありますか.

sunaharayくんも書いてますが,いま博士課程にいるひとや,出てすぐの人にとっては生活にかかわる問題で,すでに投下された人的投資をどうしてくれる,と思ったり.ま,移行過程の話なので,望ましい政策ならば,理論的にはそこへ補償を行っても割に合うはずなんですがね,どうなんでしょうな.

この事業仕分け,内閣が国会に提出する予算の策定過程の一環のはずです.すでに所管大臣が激怒しているとかいう話もあるところ,大臣のあいだでいがみ合うような様子を,透明性を保って公開することにどれほどの意義があるのか分かるような分からないような.そういう透明性と,説明責任ってもちょっと違うものではないかしらん,と思ったりします.国会議員だったら,予算案が提出されたところで国会で審議して修正させればよいのじゃないか,と思うのですけど,ええと,議院内閣制で内閣が多数派与党から構成されていればふつうはそのまま多数決で通っちゃうわけで,そうするとやっぱり予算案の段階が重要なんですかね.

というか,ほんとに生活に不自由が出るまで増税を受け付けないほど,日本の有権者は馬鹿じゃないと信じたいんですが,慈悲深い議員さんたちはどうしても増税したくないんでしょうねえ.

自治体クライシス 赤字第三セクターとの闘い (講談社BIZ)伯野卓彦.2009.
自治体クライシス 赤字第三セクターとの闘い (講談社BIZ)
ルポというかノンフィクションというか,として面白かったです.増税という選択肢は初手から考えられないようですね.



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