新書にしては厚めで,軽い新書が多いご時世にあってページあたりの情報量も多い,読みごたえのある本でした.とくに第5章は社会科学系のひとにも興味深いものではないかと.
本書では繰り返し,”現場”とはどこにあるのか,“専門家”とはいったい誰であるのか,と問い続けてきた.(中略)私たちはあなたがいま”現場”にいることを知っている.その”現場”が大変であることも知っている.だから次は,それぞれの”現場”と”専門家”をつなげる想像力と勇気を,私たちは発揮しなければならない.(中略)そしてもちろん私たちひとりひとりにも”現場”がある.私たちもピースの1つだ.(中略)ほんの少しの想像力は大切だ.しかし私たち人間はふしぎなことに,一回体験しないとうまく想像することができない.(第5章「想像力と勇気」424-458ページ)「現場」という単語はよく分からんよねー,とは,以前sunaharayくんと話したような気がしますが.高山義浩・厚生労働省健康局課長補佐とのインタビューから.
厚労省に対する批判のひとつとして,現場を知らないっていうのがありますよね.私がひとつ行政の仕事をしながら学んだこと.それは,現場を知らないこと自体は問題ではないということでした.(中略)自分のなかにある現場の感覚で,現場を知っている気になって押しつけようとしたときに軋轢が起きる.だからいちばん大事なのは,自分は現場を知らないと気づくことなんです.(中略)危ないのは自分なりの現場感覚で,それが現場のすべてだと誤解してしまうこと.自分の殻のなかの現場という感覚で,そこから出なくなることです.自分の現場というのは本来ボキャブラリーであって,コミュニケーションツールです.(第5章「想像力と勇気」484-485ページ)この高山さん,大学のときのクラブ名簿で名前を見たような.別人かな.面識はないですが.
瀬名秀明,鈴木康夫監修 インフルエンザ21世紀 (文春新書) 発売日:2009-12 |
高山義浩.ホワイトボックス 病院医療の現場から 発売日:2008-03-11 |