だからちがうんだってば.

ブログ人から引っ越しました

価格か,量か

2011-07-28 23:13:00 | 授業ネタ
台風が来て以来ちょっと猛暑も収まっているようですが,やはり節電の夏となりそうで,もともと省エネをがんばっていた国なのにすごいですなあ,と思っているところです.大口需要家は15%減が義務,小口需要家・家庭も15%減が努力目標になっていて,大口需要家は違反すると1時間100万円ですか.えらいことですな.さて,震災直後の計画停電以来,経済学者とよばれるひとたちは電力消費の抑制のために電力料金の値上げ・課税を主張していて,一律削減なんて効率的ではない,電力の実質的な価格引き上げが話題にも上がらないのは経済学的な考え方が欠如している証拠で,市場メカニズムが根付いていない証しで,だから日本は社会主義国家とか言われちゃうんだばかげている,みたいな感じです(ばかげている,まで言っているかどうかは知りません.雰囲気ってことで).経済学部に籍を置く小心者としては,エライ先生たちが揃いも揃ってそうおっしゃるんだったらそうなのかしらん,たしかに外部性のはなしをするときにはピグー税を教えるもんなあ,でもなあ,と思っておりました.

ちょっと前になりますが,RIETIのサイトで私淑するあの川口大司先生が「一律15%削減でも構わない」という文章を 載せておられて,やっぱりそうだよなあ,と思いました.やっぱりと思うくらいなら最初から言えばいいのにと反省はしております.はい.さて,川口さんのポイントはわりかし簡単で,「電力料金を上げるのもいいけどいくら上げていいかよくわかっていない.失敗したときのコストは大規模停電という形で大きく発生するから,直接に量を規制してもよい」というものです.総量を規制するなら排出権取引みたいに電力取引を事業者間(電力会社との間で,ではなく)で行えばいいじゃんと議論は続きます.

たしかに,外部性の例としてよく持ち出される公害規制や環境のはなしをするときにも,もし限界費用か限界便益の情報が不確かで,量を制限することに重点が置かれるのであれば,不確実なピグー税を用いるより直接的な量的規制のほうが事前の(期待値ベースでみた)社会的な費用は小さくなる,という議論をすることがあります.ぼくも学部のゼミでこんな話を聞いた気がしますし,Leachの公共経済学の教科書にも載っていたような.

排出権取引のような仕組み(共同制限使用スキーム)はすでに導入されていて,METIはさすがになかなかやるな,と思います.ついでにいえば「違反すると1時間100万円」というのも(2段階の)従量税みたいなものなんだから,価格メカニズムと言えないこともないですね(禁止的に高いだけで).もし共同制限使用スキームが利用されているとすれば(オムロンはビジネスとして参入するみたいです.これ),参加した事業者間で金銭のやり取りが行われていれば(直接的にではないかも),その情報から価格弾力性も求めることができて,来年以降の制度設計に資するかもしれません.

RIETIのサイトでMETIを褒めているのもなあ,というのも思ったり思わなかったり.ええ,川口さんはそういう方ではないですけど.