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詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

斎藤茂吉『万葉秀歌』(12)

2022-11-03 17:07:04 | 斎藤茂吉・万葉秀歌

斎藤茂吉『万葉秀歌』(12)(岩波書店、1980年、06月25日、第58刷発行)

石見のや高角山の木の間よりわが振る袖を妹見つらむか          柿本人麿

 茂吉は「角の里から山までは距離があるから、実際は妻が見なかったかも知れないが、心の自然なあらわれとして歌っている」と書いている。この「心の自然なあらわれ」というのが、いいなあ。何か、ほれぼれとする批評。
 山から里はよく見える。しかし里から山はよく見えない。というか、木がいっぱいで、木の間なんて見えない。たとえ見晴らしのいいところから袖を振ったって、あそから手を振るとでも先にいっておかないかぎり、見えない。でも、人麿は袖を振っている。自分から里が見えるのだから、里から自分が見える、と錯覚する。この錯覚が、そうなんだなあ「心の自然なあらわれ」というものなんだなあ。
 私は、ちょっとしつこく書いてしまったが、この山と里の関係は、街中の暮らしではなかなかわからない。山の中をいつも歩いている、という自然があってこそのものだなあ、と思う。
 私は山の中で幼い時代を過ごしたので、この感覚の「自然」な動きが、とても気に入っている。山の上からは、なんでも見えるね。友だちの家、畑で働いてる両親、牛小屋でモーッと鳴いた牛、柿の木に立てかけた自転車……。
 現実よりも、「心の自然なあらわれ」という点では、次の歌もそうだなあ。

青駒の足掻を速み雲居にぞ妹があたりを過ぎに来にける          柿本人麿

 「空」を見て、あの「空の下に妻の家がある」という感覚。これは山から里を見下ろすのではなく、見えない「山の向こうの里」を思い浮かべるときの感覚。空を見て、あの空の下に……と思う気持ち。前の歌と重ねあわせると、妻も空を見て、あの空の下辺りにと思っているかも、という具合に、感じてしまう。

 

 


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