斎藤茂吉『万葉秀歌』(3)(岩波書店、1980年、06月25日、第58刷発行)
吾背子は仮盧作らす草なくば小松が下の草を苅らさね 中皇命
「草」は「かや」。「か」の音の繰り返し。「か」に似ているが少し違う「が」の響きが「吾背子は」と「小松が下の」にあらわれる。そして、後者の「が」のすぐ上には鼻音の「ま」があって、この部分の流動的な響きがとても印象に残る。きのう読んだ「厳橿がもと」の響きに似ている。もしかすると「響き」よりも、それを発するときの口腔内の舌の動き、息の動きが快感なのかもしれない。キスの舌の動きではないけれど、何か、「粘膜」というか、肉体の快感、官能を刺戟してくるものがある。
吾が欲りし野島は見せつ底ふかき阿胡根の浦の珠ぞ拾はぬ 中皇命
「底ふかき」でトーンが変わる。「野島」は海に浮かんでいる。海上から海底へ、「底ふかき」ということばで一気に視点を転換させる。このスピードがとてもおもしろい。また、茂吉が書いているように(私の読み違いか)、「吾が欲りし」の、本当に欲していること、こころの底に隠している欲望が「底」ということばで暗示されているようでおもしろい。
茂吉の「末世人が舌不足と難ずる如き渋みと厚みがあって、軽薄ならざるところに古調の尊さが存じている」という評に、私は傍線を残している。
**********************************************************************
★「詩はどこにあるか」オンライン講座★
メール、skypeを使っての「現代詩オンライン講座」です。
メール(宛て先=yachisyuso@gmail.com)で作品を送ってください。
詩への感想、推敲のヒントをメール、ネット会議でお伝えします。
★メール講座★
随時受け付け。
週1篇、月4篇以内。
料金は1篇(40字×20行以内、1000円)
(20行を超える場合は、40行まで2000円、60行まで3000円、20行ごとに1000円追加)
1週間以内に、講評を返信します。
講評後の、質問などのやりとりは、1回につき500円。
★ネット会議講座(skypeかgooglemeet使用)★
随時受け付け。ただし、予約制。
週1篇40行以内、月4篇以内。
1回30分、1000円。
メール送信の際、対話希望日、希望時間をお書きください。折り返し、対話可能日をお知らせします。
費用は月末に 1か月分を指定口座(返信の際、お知らせします)に振り込んでください。
作品は、A判サイズのワード文書でお送りください。
少なくとも月1篇は送信してください。
お申し込み・問い合わせは、
yachisyuso@gmail.com
また朝日カルチャーセンター福岡でも、講座を開いています。
毎月第1、第3月曜日13時-14時30分。
〒812-0011 福岡県福岡市博多区博多駅前2-1-1
電話 092-431-7751 / FAX 092-412-8571
*
オンデマンドで以下の本を発売中です。
(1)詩集『誤読』100ページ。1500円(送料別)
嵯峨信之の詩集『時刻表』を批評するという形式で詩を書いています。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168072512
(2)評論『中井久夫訳「カヴァフィス全詩集」を読む』396ページ。2500円(送料別)
読売文学賞(翻訳)受賞の中井の訳の魅力を、全編にわたって紹介。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168073009
(3)評論『高橋睦郎「つい昨日のこと」を読む』314ページ。2500円(送料別)
2018年の話題の詩集の全編を批評しています。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168074804
(4)評論『ことばと沈黙、沈黙と音楽』190ページ。2000円(送料別)
『聴くと聞こえる』についての批評をまとめたものです。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168073455
(5)評論『天皇の悲鳴』72ページ。1000円(送料別)
2016年の「象徴としての務め」メッセージにこめられた天皇の真意と、安倍政権の攻防を描く。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168072977
問い合わせ先 yachisyuso@gmail.com