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詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

ジョン・スタージェス監督「荒野の七人」(★★)

2011-02-28 09:01:03 | 午前十時の映画祭
監督 ジョン・スタージェス 出演 ユル・ブリンナー、スティーヴ・マックイーン、イーライ・ウォラック

 うーん。黒沢の「七人の侍」のよさばかりがよみがえるなあ。リメイク(盗作?)とは言いながら、肝心の雨のシーンがない。荒野では雨が降らないといってしまえばそれまでだが、雨にかわる自然現象がないとねえ。砂嵐とかね。そこに住んでいるひとの、地の利、土地の感覚がないと、こういう「抵抗もの」(ゲリラもの)は生きてこない。最後に「勝つのはいつも農民」という「七人の侍」のセリフがそのままつかわれるけれど、この「農民」というのは農業をやる人という意味だけではない。土地に根差して生きているひと。ね、ベトナム戦争でもアメリカが負けたのは、結局、その土地に生きていない侵略者だから。フィリップ・ノワレ主演の「追想」(だったかな?)も、結局、彼が暮らした家が戦場だから一人でドイツ軍に勝てた。土地を知っている人が勝つ――というのが、抵抗の本質。雨で(砂嵐で)視界が利かない。けれど、その土地のありようが分かっていれば、視界が利かない分だけ、有利になる。これは、ほら、「暗くなるまで待って」では、オードリー・ヘップバーンが電気が消えると有利になるのも同じ。そして冷蔵庫の室内灯?がつくと不利になるというのにもつながる。誰にでも不利、有利があり、それをどう生かすかが弱者が勝つための条件。「荒野の七人」は凄腕の七人だが、相手は多人数という意味では「弱者」だよねえ・・・。その「弱者」が「負けない」ための条件がねえ・・・。
 だからさあ、最後がとっても変だよねえ。七人は捕まって、追放され、そこから村へ引き返して戦うなんて、むちゃくちゃ。勝てるはずがないのに、ただ戦う。そして映画だから善が悪に勝つ――あら、馬鹿らしい。黒沢映画のいいところをまったく生かしていない。盗まれた黒沢が怒るはずだね。
 演技もみんな下手糞だね。特に農民がひどい。主演陣も、人間描写の掘り下げがぜんぜんない。薄っぺらい。そんななか、ユル・ブリンナーが変に光っている。なぜだろう。はげ頭の光? いいや、セリフ回しだ。声だ。映画役者の声ではなく、舞台役者の声、発音だな、これは。「Y」の音なんか、異様にくっきり響いてくる。スティーヴ・マックイーンのしゃべり方とぜんぜん違う。ユル・ブリンナーが「王様と私」が代表作になってしまう(他にいい作品に恵まれない)という理由はこのあたり?
 あ、映画そのもののことからずいぶん離れてしまったなあ。そういう感想しか思いつかないのが、この映画ってことだね。
                    (「午前十時の映画祭」青シリーズ4 本目)




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