セロニアス・モンクのピアノの音がことばになろうとしている。
都会のビルの夜にあらわれた遠い崖の、
淵から見下ろした黒い海の、見えない岩にぶつかり砕ける白い波に。
けれどことばには準備ができていなかった。
ヴィレッジバンガードで若い男がラウンドミッドナイトを弾いていたとき、
地下鉄の通過する音が響いてきた。ことばは、胸打たれて、そのノイズを、
モンクの孤立した音をつつみにきた宇宙ということばにしようとした。
けれど壁の向こう側の闇は宇宙になる準備ができていなかった。
イエローキャブには乗らなかった。地図を街灯で読みながら舗道を歩くと、
冬の裸の木の匂いがした。ことばは、雪のように結晶してみたかったが
冷たい力がまだ足りなかった。スピリットも。
セロニアス・モンクのピアノの音がことばになろうとしている。
すれ違った黒人の男の目が、熱い息のように白い。毛糸の帽子が耳を隠している。
けれどことばは和音の準備ができていなかった。
都会のビルの夜にあらわれた遠い崖の、
淵から見下ろした黒い海の、見えない岩にぶつかり砕ける白い波に。
けれどことばには準備ができていなかった。
ヴィレッジバンガードで若い男がラウンドミッドナイトを弾いていたとき、
地下鉄の通過する音が響いてきた。ことばは、胸打たれて、そのノイズを、
モンクの孤立した音をつつみにきた宇宙ということばにしようとした。
けれど壁の向こう側の闇は宇宙になる準備ができていなかった。
イエローキャブには乗らなかった。地図を街灯で読みながら舗道を歩くと、
冬の裸の木の匂いがした。ことばは、雪のように結晶してみたかったが
冷たい力がまだ足りなかった。スピリットも。
セロニアス・モンクのピアノの音がことばになろうとしている。
すれ違った黒人の男の目が、熱い息のように白い。毛糸の帽子が耳を隠している。
けれどことばは和音の準備ができていなかった。
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谷内 修三 | |
思潮社 |