街角にまだ残っていた。そこにあらわれる、きっとあらわれる。そう思っていた。そして、それは詩になった。忘れないように、ライラックの花の匂いのことを書いた。手の匂いに似ていた。そのとき書いたことば、手の匂いに似ていた以外は、もう忘れてしまったが、書いた記憶、なによりも、そこにあらわれる、きっとあらわれると思っていた記憶が、まだ街角に残っていた。小さな本屋は消え、熱いコーヒーを飲んだ店もなくなっていたが、あのときの、ライラックの匂いが残っていた。もう何年も前のことなのに。あの日と同じように、風に揺すられて、広がったり集まったりする匂いが残っていた。そんな詩を、きっといつか書くに違いないと予感した、そんな悲しみ、悲しみのままでが残っていた。それが、いま、あらわれた。
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