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詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

高橋睦郎『つい昨日のこと』(13)

2018-07-22 09:30:19 | 高橋睦郎「つい昨日のこと」
13 ヘクトルこそ

ホメロス語るいちばんの英雄は どんな英雄か
いちばん強い者でも いちばん賢い者でもない
人生がつまるところ敗けいくさだ と知りながら
運命を背負うことから 逃げることのない勇者

 この四行目は、こう言いなおされている。

祖国の終わりを身に引き受けるヘクトルこそ その者

 「背負う」は「身に引き受ける」。
 書き出しで繰り返された「いちばん」は、どこかへ消えている。
 「いちばん」は何と向き合っているか。どう、言いなおされているか。
 「終わり」ということばと向き合っている。
 「いちばん」は「始まり」、「始まり」の対極は「終わり」だ。
 すべてのことは始まったときにはまだわからない。終わったときに、それがなんだったかがわかる。
 「いちばんの英雄」「いちばん強い者」「いちばん賢い者」は、ことが終わったときにわかる。
 「始まり」は特定できるが「終わり」は特定できるか。「終わり」はあるのか。
 この詩の最終行は、こうである。

きみの高潔な魂への 終わることのない讃仰の燔祭

 「終わり」は「終わることのない」ということばで引き継がれている。「終わり」はない。「始まり」はあるが「終わり」はない。
 「終わることのない讃仰」、それこそが「いちばんの讃仰」という「意味」だが、「意味」で固定してはいけない。
 「いちばん」と「終わり」、さらにそれを「終わることのない」ということばへ動かしていく運動、緊密なことばの変化こそが詩なのだ。


つい昨日のこと 私のギリシア
クリエーター情報なし
思潮社

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