詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

どこが「特ダネ」?(情報の読み方)

2020-12-22 09:31:10 | 自民党憲法改正草案を読む
どこが「特ダネ」?(情報の読み方)

 2020年12月22日の読売新聞(西部版・14版)1面。「桜」前夜祭の続報。(番号は、私がつけた。記事は必ずしも番号の順番で構成されているわけではない。)

安倍前首相 任意聴取/東京地検 不起訴の公算/支所は略式起訴 週内にも

①安倍晋三前首相(66)側が主催した「桜を見る会」の前夜祭を巡り、東京地検特捜部が安倍氏から任意で事情を聞いたことが関係者の話でわかった。
②特捜部は、安倍氏が前夜祭費用の補填などの実態を知らなかったとの見方を強めており、不起訴とする公算が大きい。
③一方、政治団体「安倍晋三後援会」の代表を務める安倍氏の公設第1秘書については、週内にも政治資金規正法違反(不記載)で略式起訴する方針。

 デジタル版(ネット)では「独自」のマークがついている。「特ダネ」である。でも、どこが「特ダネ」なのか。すでに、あちこちで推測が書かれていたこととどこが違うのか。やっぱりという既視感が強い。「推測」ではなく「確認した」ということが「特ダネ」なのか。
 ①「関係者の話でわかった」とあるが、「リーク元」は匿名のままである。「いつ」かも明確にされていない。
 ②「見方を強めており」は誰の推測(判断)なのか。「不起訴とする公算が大きい」もだれが、そう推測(判断)しているのか。取材した記者(読売新聞)だろう。だから見出しにも「公算」と書いているのだが、このジャーナリズムが多用する「公算」は、非常に無責任である。「公」という文字が大手をふるっている。恣意的である。誰の判断か明記せず「公算」ということで、世論をリードしようとしている。
 ③の「略式起訴」(見出しの最後にとっている部分)が「特ダネ」なのかもしれない。「起訴」ではなぐ「略式起訴」。
 この部分については、記事の「末尾」で、ていねいに、ていねいに、ていねいに、こう解説している。

④不記載罪の法定刑は、5年以下の禁錮または100万円以下の罰金など。略式起訴を受けた簡裁は通常、公開の法廷を開かず、書面審理だけで刑を言い渡す「略式命令」を出す。
⑤ただし刑事訴訟法は、事案が複雑で慎重な審理が必要だと簡裁裁判官が判断した場合などには、正式裁判を開く必要があるとしている。

 ④からわかるように、略式起訴だと「公開の法廷を開かず」、処分が決定する。起訴の罪さえ「公開の公判を開かない」なら、安倍の関与についてはもちろん公判を開かない。つまり、これは「安倍不起訴」を補強するための材料として書かれている。
 ⑤は一見、まだ秘書の起訴がありうるかもしれないと言う意味を含んでいると読むことができるが、逆だろう。「事案が複雑」と「簡裁裁判官が判断」するわけがない、と念押ししている。
 秘書は、

⑥公設第1秘書は特捜部の聴取に対し、「前夜祭の収入と支出は後援会の収支報告書に記載すべきだった」などと供述しているという。

 と「罪」を認めている。「否認」していない。何ら「事実関係」を調べる必要がない。

 ここからが問題だ。
 「桜を見る会」で問われているのは(世間が注目しているのは)、「政治資金規正法違反(不記載)」ではない。
 ②の「安倍氏が前夜祭費用の補填などの実態を知らなかった」かどうか、という問題である。この問題は、安倍が「東京地検特捜部」に「実態知らなかった」(デジタル版には見出しにとっていたが、記事中には、そういう文言は明記されていなかった)と言えば解決することなのか。知っていても「知らなかった」と言うことはできる。「知らなかった」は「忘れていた/覚えていない」とも言い直せる。
 このことについては、読売新聞は、こう書いている。

⑦安倍氏は首相当時の国会答弁で「後援会としての収入、支出は一切なく、収支報告書への記載は必要ない。補填したという事実は全くない」と述べていた。
⑧ただ、安倍氏は後援会の役職には就いておらず、安倍氏周辺によると、不足分を補填していないか安倍氏が確認した際、事務所担当者は「支出していない」と虚偽の説明をしていたという。
⑨特捜部は、捜査を尽くすためには安倍氏の認識を問う必要があると判断し、聴取を実施。安倍氏は不記載などへの関与を否定したとみられる。

 ⑦は国会答弁として記録に残っているので、「事実」である。
 ⑧は安倍が嘘をついたのではなく、秘書が嘘をついた(安倍はだまされた)ということを語っている。
 ⑨は、安倍が「関与を否定したとみられる」という憶測。
 このとき、問題になるのは、なぜ⑧の秘書が安倍に「虚偽の説明」をしたのか、その「理由」のようなものがわからないことである。⑥でわかるように、秘書は「記載の必要性」を認識している。知っていて、嘘をついたのはなぜか。
 ありふれた例でいえば、秘書が事務所の経費を「私的流用」した場合、「金を使っていない」と嘘を言うことはある。自分のためにつかったのだから。ところが、今回の場合は、自分のふところには入れていない。もちろん、ホテルに補填した金額からいくらかのキックバックを受けている(私的流用をしている)という可能性はあるが、そういうことをしているという「供述」は表面化していない。
 なぜ秘書が嘘をつく必要があったのかが解明されないかぎり、安倍と秘書は「口裏を合わせている」ということになる。
 すでに書いたが、この問題がニュースになったとき、秘書はたしか「安倍にうその答弁をしてもらった」というようなことを語っている。
https://blog.goo.ne.jp/shokeimoji2005/e/6cda4fed1cb8e654a15cd5014f262468
 「してもらう」というかぎり、そこには「打ち合わせ」がある。
 11月25日の読売新聞には書かれていたことが、きょうの新聞では「省略」されている。つまり、ここでは「情報操作」がおこなわれている。
 そして、いま多くの国民が注目しているのは、この「情報操作」なのである。安倍と秘書がどんな「情報操作」をしたのか。その「情報操作」に対して東京地検はどこまで踏み込むのか。国会は、その「情報操作」をどこまで追及できるのか。

 もし、きょうの読売新聞に「特ダネ」があるとすれば、11月25日に報道したことを「隠蔽」しようとしている、「情報操作」に加担しているということを明確にした点か。すでにわかっていることだが、「読売新聞は安倍の味方」であることをアピールしているのが「特ダネ」。
 それは、きょうの読売新聞の記事のどこを読んでみても、「安倍が不起訴でいいのか」という疑問が書かれていないことからもわかる。東京地検の動きを「不起訴の公算」と伝え「不起訴」へ向けて、世論を説得する(安倍は知らなかったのだから、罪は問えないと宣伝する)ことがジャーナリズムの仕事なのかどうか。ジャーナリズムがしなければならないのは、東京地検の不徹底な態度、国会の安倍の虚偽答弁を許す姿勢への追及だろう。安倍を擁護することではなく、安倍の問題点を厳しく追及することだろう。









#菅を許さない #憲法改正 #読売新聞



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「情報の読み方」は10月1日から、notoに移行します。
https://note.com/yachi_shuso1953
でお読みください。
 

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