詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

Estoy Loco por España(番外篇278)Obra, Laura Iniesta

2023-01-18 10:46:21 | estoy loco por espana

Obra, Laura Iniesta
"La paraula arbre"200x200cm, técnica mixta sobre tela,FUNDACION VILA CASAS, Colección privada de Antoni Vila Casas.

 La obra de Laura. ¿Cómo la pintó ella? ¿O cómo la "escribió"?
 Su trabajo siempre me recuerda a la 書(caligrafía). Las gruesas líneas negras son impresionantes. En caligrafía(書)el pincel se mueve de arriba abajo, de izquierda a derecha. ¿Y en esta obra?
 Me parece que escribió (o pintó) de abajo hacia arriba. Lo que rebosa de abajo sube hacia arriba. Además, cuanto más subes, más grande se hace. Las composiciones cercanas a triángulos invertidos suelen ser inestables, pero esta obra es estable. ¿Por qué? No sólo está siendo empujada hacia arriba desde abajo, sino que la fuerza que llega arriba está tirando hacia arriba de la energía de abajo.
 Este fuerte movimiento engrandece aún más la obra.

 Laura の作品。どうやって描いたのだろう。あるいは「書いた」のだろう。
 私は彼女の作品を見ると、いつも書を思い出す。黒の太い線が印象的だからである。書というか漢字は、上から下へ、左から右へと筆を動かす。この作品は?
 下から上へ向かって描いているように見える。下から溢れてきたものが、上へのぼっていく。しかも、上に行くほど、それは大きくなる。逆三角形に近い構図は、ふつうは不安定だが、この作品は安定している。なぜか。単に下から突き上げているだけではなく、最上部に達した力が、下にあるエネルギーを引っ張りあげているからだ。
 その強い運動が、この作品を、さらに大きなものにしている。

 

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「現代詩手帖」12月号(40)

2023-01-18 10:16:45 | 現代詩手帖12月号を読む

「現代詩手帖」12月号(40)(思潮社、2022年12月1日発行)

 高橋順子「哀悼・大泉史世」。

いま大泉さんの声で
「死ぬのっていいわよお」
と聞こえてくる
困っている

 大泉は充実した人生を生きた人だったんだなあ、と感じさせることばである。そう思わせるのは、なかなか大変なことだと感じる。「困っている」はうれしい、だろう。
 高橋は、こういうことを「自然」に書くことができる。

 高橋睦郎「老老行」。ひとは、どういうときに「老いた」と感じるのか。そして、どう生きようとするのか。(高橋は正字体で書いているが、新字体で引用する。)

前立腺肥大予防に老いびとも自慰励めとぞ雨戸閉てきり

 やっぱり病気が気になる。病気は死につながるから、死が気になると言い直せるかもしれない。逆に、それは生への執着、どうやって生き続けるかということが気になるでもある。生は性にもつながる。でも、老人は何を想像しながら自慰をするのだろう。ここからが、老詩人・高橋睦郎の真骨頂である。若者の自慰とどこが違うか、書いてしまう。詩人は、書かずにはいられない。

死ぬるまで性交せよと週刊誌叫喚す性交しくつつ死ねとか
老男女交接のまま相死ぬる窮極相対死とや言はむ

 ここに書かれる死は、セックスの絶頂のときの、エクスタシーではないのだが、完全に行動されている。若者の「死ぬ!」という絶叫とは全く違うはずなのに「死ぬ」ということばが重なって、そのことばのなかに快感、官能、欲望、本能が動いている。
 しかし、「意味」はわかるが、どうも、読んでいて楽しくない。「音」がぎすぎすしている。「死ぬのっていいわよお」につながるような音の伸びやかさがない。音がもっとのびやかで、音楽的だったらどんなにいいだろう。
 私は、このぎすぎすした音に「困っている」。これでは「うれしい悲鳴」(共感)ではなく、むしろ「叫喚」に近い。

 竹中優子「骨壺」。ああ、また、死が出てくる。現代詩手帖のこの編集は「わざと」なのか「偶然」なのかわからないが。

夕方 博多駅に着く
うどんでも食べて帰ろう
そう思いながら階段を下る
席に着く、鞄をそっと引き寄せる
鞄には父の骨壺が入っている

 「鞄をそっと引き寄せる」の「そっと」がとてもいい。大きな肉体の動きを書いてきて、そのあとに「そっと」。小さな動きがはじまる。「遺骨」ではなく「骨壺」と竹中は書いている。そこに、なんというか、「肉親」ならではの距離感がある。他人の「遺骨」を「骨壺」と呼ぶことはなかなかむずかしい。
 父が死んだ、母が死んだというかわりに、父が亡くなった、母が亡くなったという人がいるが、私はこういうときの「亡くなった」には妙な冷たさを感じる。「死んだ」がいい。それと同じように、この詩では「骨壺」がとてもいい。「遺」ではないのである。「生きている骨」というと語弊があるが、死んだ人間の骨ではあるが、まだまだ「生きている」ものが、そのまわりに動いている。「遺」にはなっていないのだ。
 その微妙な動きのなかに、竹中は「そっと」入っていく。何かに触るたびに「生きている」ものが動くのだ。高橋順子が書いた大泉の「死ぬのっていいわよお」は、竹中には「逆説」のように聞こえるだろう。そうだろうなあ、死んでしまった人間は何も悩むことはない、「そっと」動く必要なんかはない。どれだけ暴れ回っても、すべてが「たのしい」思い出である。

今日
私の身体は温かく流れている
引き込んだものと混じり合って
骨壺は部屋にある
布の下に父は眠っている

 いろいろなものが混じり合っているかは「そっと」竹中は息を整えている。そばには父の骨壺がある。それを竹中は再び「そっと引き寄せ」たかどうかわからないが、最後の一行には「そっと」を補って読んでしまう。

布の下に父は「そっと」眠っている

 やっぱり、「生きている」。
 『冬が終わるとき』に収録されているのだが、どの詩もすばらしい。とてもいい詩集である。

 


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