前半を0-0で終えたときは、不安いっぱいだった。
ロシアはこれで満足だろうと思ったから。
こうしてオランダをやぶったのだから、スペインだって破れないはずはない、と思っていたはずだ。
ヒディングは早くいきすぎた。それが敗因だ。
なんとか延長戦に持ち込む、くらいの気持ちで、後半も前半と同じように守備に集中していれば、スペインは苦しんだろう。
アグレッシブにきたぶん、スペインは早いパス回しでリズムをつかんだ。
ビジャの負傷は誤算だったが、この早いパス回しのリズムがでれば飛び込む選手はいくらでもいる。
そしてまず、シャビがそれをやった。イニエスタとは身体で感じあっていたはずだ。
アラゴネスの采配は今日も強気だった。
たとえけが人が出て10人になっても勝てる、と信じているような25分での2枚代え。
トーレスは決めるべきときに決めなかったし、ファウルに負けていたから、グイサのほうがやるに違いない、と考えたのだろう。
そして事実、その通りになった。
もう一枚はアロンソ。アラゴネスは、イニエスタもシルバもさわらず、いつものようにシャビを下げた。シャビは今日も悲しい表情。そしてアロンソは非常に良かった。
スペインで先発をつかむのはたいへんだ。
偉大すぎるラウルがいれば、ラウルの使いどころを考えねばならず、ほかの選手達も気を使う。アラゴネスはそれを嫌ったのだ。その判断は正しかったろう。
グイサの2点目も、シルバの3点目も、まさにスペインらしいゴールだった。早いパス回しで相手をふりほどき、とっさのアイデアで抜け出してしまう。
ポルトガルにもオランダにも、同じことができるテクニックはある。だが、両者とも本番でそれができなかった。
ヒディングが我慢していれば、そういう危ない展開になったかもしれない。
しかしスペインが焦れ、あせりはじめるまえに、ロシアは挑んできた。
それは裏目にでた。
スペインはやりやすくなり、リズムをつかんでイマージネーション溢れるサッカーを始めた。
終わってみれば完勝と思えるが、ひとつ間違えば全く違う展開になったかもしれない。
しかしポルトガルやオランダのような過ちは犯さなかったから、決勝に残ったのだ。
あとは日曜日、どんなドラマがあるのか。
もうこれで残すところ1試合だけとは、早い・・・。
毎日眠いなか、2試合を楽しんだ至福の時間は過ぎ去ろうとしている。
寂しい。物悲しくさえある。
[ロシア×スペイン 0-3 euro2008 準決勝]