星降るベランダ

めざせ、アルプスの空気、体内ツェルマット
クロネコチャンは月に~夜空には人の運命の数だけ星がまたたいている

左手で草を抜く

2007-09-27 | NO SMOKING
阪神電車の全路線距離はとても短い。
そして、阪急やJRに比べると、駅と駅の間が、短い。
そのことにあらためて気づいたのは、30代でぎっくり腰になった時だ。

座るのと、立ったままの方が楽か、迷った末、バーに力入れてそっと座席に座る。
発車…「ウオっとー」腰に振動が伝わらないようにぐっと腕に力を入れる。
やっとスムーズに走り始めたと思ったら、すぐに次の駅に着く。
ブレーキの「カックン」…これが腰にどんなに響くかは、魔女の一撃を経験した人にしかわからない。
運転手の中には、まるで急発進、急ブレーキを楽しんでいるかのような○○がいて、朝から呪いをかけるに近い気分になる。でも運転手に呪いがかかったら迷惑を被るのは乗客なので、目尻に涙したお願いに変える。
それだけでも、カァーっとなるのに、乗っている間中、腰への打撃を少しでも少なくするために、両腕に力を込めるから、35分後勤め先の最寄り駅で下車する時には、大汗をかいて、肩がガチガチになった。

(えーっと、腰の話じゃないわ。)

右足膝を負傷して2ヶ月ギブスをして、電車に乗って通ったことがある。
その時、駅の自動改札というのは、健康な成人男子に合わせてつくられた機械であることがわかった。切符や定期券を入れた人が1秒後にサッと取り出すことでスムースな人の流れが生まれる。一人でもそこに到達するのが遅れると、後ろにいる何名かの人を朝から不機嫌にさせる。結局通勤で混み合う時間を避けて、私はいつもより半時間以上早く家を出ることにした。おかげでそれまで見たことのないような素晴らしい朝焼けを見ることができた。

(えーっと、足の膝の話でもないの。)

左手の話。この間、思いがけずガラスで右手を切った。右手の親指、傷はかなり深い。夜中だったから、指の付け根をジッと押さえて止血。なぜか、引き出しいっぱいある滅菌ガーゼで押さえて1時間。やっと、止まった。
親指なので、1週間くらい右手が使えなくなった。
こうなって初めて、自分がほとんどのことを右手でやってきたことに気づく。今までずっとサボっていた私の左手よ、頑張るんだ。君にもできる。

そう、この際積極的に左手を鍛えよう。使ってなかった身体の部分を使うんだ。
足の指で素晴らしい絵を描く人がいる。すごいなぁと毎年絵はがきに感心しても、それを描くまでに、どんな努力があったのかは知らない。絶望を経験した後の希望の絵筆に、ひれ伏し絵葉書を買う。

これから、どんどん衰えに向かう自身の身体、いつか自分も障害者になる。使ってちびていくなら諦めがつくけど、使わなかったから駄目になってしまったというのは、悲しい悔いが残る。というわけで、左手を使おう。

…左手で歯磨きが上手くできるようになった頃、右手の絆創膏もとれた。

今日は秋のわが町クリーン作戦だった。左手で草を抜いた。案外上手に抜けた。草の根っこの当たりから、蟻がわらわらと、飛び出してきて右往左往する。彼らに声があったら「なんだ、なんだ、何するんだ!」と叫んでいるに違いない。

本国ではあまり知られていないのに、日本の子ども達はみんな知ってるお話、というのに、「フランダースの犬」と、「ファーブル昆虫記」がある。なぜだろう?翻訳が良かった、挿絵が良かった、編集者に力があった?いやー、きっと「一寸の虫にも5分の魂」っていう諺のおかげかもしれない。などと思いながら、歩道のコンクリートの上に風で運ばれた僅かな土にもたくましく根を張った草を抜いていた。

というわけで、腰がいたーい。(↓の草は決して抜かないように)
                 
コメント
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