かつて1970年代には、神戸港のコンテナ取り扱い量は世界一だった。
震災後の2年間のブランクの間に船はみんな釜山に行ってしまった。復興後の今でも32位(2005年)。
港の赤いキリンさんは、オブジェのようにただ立っていてはいけないのだ。
かれらは、本来ガントリークレーンとして、コンテナを貨物船に積み込むためにそこにいる。
2年前の秋、メリケンパークに古いコンテナがたくさん並んでいて、その風景が、なにか哀しげで、ゲートをくぐって、その中に入っていけなかった。でも凄く気になっていたのだ。あのコンテナの中には、いったい何があるのだろう?って。
今年も、神戸ビエンナーレのメリケンパーク会場には、67個のコンテナが並んでいた。今年こそ覗いてみよう。
最初に入った御幸朋寿「折紙神宮」
…段ボールをこれだけ組み立てる作家のエネルギーに感嘆する。2.438m×2.591m×12.192mのコンテナ空間は洞窟のようであり、尖った角が今にも動き出しそうな立体に囲まれる不思議体験である。
入り口のウサギさんに誘われるように入ってしまった、Crag Quintero & Joyce Ho の「Liquid Dreams」
…奥には液体の入った大きな甕がある。入り口で願い事を書いた紙をその中に入れて木棒でそっとかき混ぜると、私の願い事は水に溶けてしまった。木棒から手を離すと、微妙に液体の中に入らないギリギリの所で止まり、その繊細さが、この明らかに作り事のような願い事遊びを、もしかしたら、と瞬間思わせて、つい、たくさんの人の願い事が混ざり合った甕の中をもう一度覗いてしまった。
赤堀マサシの「わっ!平面なんだ!」…平面でした。
伊庭野大輔&藤井亮介「Walk into the Light」
…全面鏡の空間に存在するのは、一個のミラーボールだけ。新鮮さはないけれど、こういうの大好きだから。
そして、戸島麻貴の「beyond the sea」
…素晴らしい13分間。流れるような、スピード感はあるけど、静かな印象の、大切に覚えていたい夢、のような映像が、白い砂の上に展開する。遠い記憶の中の街、睡蓮の水辺、繰り返し波が打ち寄せる浜辺、光る水、色づく世界…
…ふと見ると、入り口に作者:戸島麻貴さんの言葉があった。
「本作では、一見無機質なコンテナが、海を渡る時、ひそかに見たかも知れない、夢を表出してみようと思います」
(あー、これはコンテナの夢だった。)
かつてはその中に、小麦を積み、バナナを積み、TVを積み、シャツを載せ、幾千回も大洋を渡ったコンテナ。
外から見たらただの箱。
でもその中は、こんなに違う世界が拡がっている。
その2.438m×2.591m×12.192mの空間でしか表現できない何かが、確かにある。
メリケンパーク・コンテナ祭2011、今から楽しみです。