星降るベランダ

めざせ、アルプスの空気、体内ツェルマット
クロネコチャンは月に~夜空には人の運命の数だけ星がまたたいている

アスリートのゴール

2007-09-01 | NO SMOKING
朝から「50㎞競歩」という過酷なレースを、アイロンをかけながら見ていた。
エアコンつけた部屋のTVの前でアクビをしながら寝ているネコと、炎天下をひたすら歩いてる人間達。なんとなくアイロン台など出してきたのは、彼らと自分との距離感を調整するためなのかもしれない。でもやはり自分がどちらに近いかといわれれば…

大阪の炎天下、走りたい本能を押さえて、選手がひたすら歩いている。
早さは、時速15.6㎞(20㎞世界記録)というから、通常歩く速さの4倍、自転車を漕ぐ速度くらいだ。
厳しいルールが二つ、①両方の足が同時に地面を離れてはならない②着地から身体の真下に来るまで膝を伸ばしておかなければならない。
これをチェックするため、ひたすら同じルートをぐるぐるまわる。マラソンのように、沿道の風景が変わるわけでもない。
まるで、最初から、罰ゲームのような、なんだか見ていて胸が痛くなる競技だ。

100Mのゲイ選手の走ってる時の顔のゆがみは、スロー映像で見ると凄かった。
瞬間もの凄い風圧を自ら作り出しているのだ。でも、たかが10秒のこと。
競歩の選手の苦痛は長い。4時間に及ぶ。

次々と選手が倒れていく。もどしてもまた歩く。熱中症の実況中継みたいだ。
40㎞を越えて倒れる選手、こんなことなら2㎞くらいで足がつった方が良かったかもしれない、なんて思う人は観戦者失格ね。限界状況に挑戦するのがアスリートなんだから。
「より早く、より高く」を目指して、今の自分の限界を越えようとする選手の姿に私は感動する。だけど、競歩は、なぜ無理して歩かなければならないの?と、つい思ってしまう。禁止事項の上に成り立つ、故意に作り出した過酷なスポーツのような気がする。
とにかくもう、ゴール目指してがんばれーっていうしかない。

と、レース終盤…持っていたアイロンを、落としそうになった。
なんと、日本人トップの山崎選手を、係員が間違って誘導してしまったのだ。
頭から水をかぶって、苦悶の表情をうかべ、時々よろめきながらもひたすらゴール目指して歩いていた山崎選手。
その彼を、なんと、係員が、間違って誘導してしまった。
1周はやく、スタジアムに入ってしまう山崎選手。
本人は、自分が間違っているなんて思っていない。
あと少しでゴール、あと少し…と、一歩一歩、足を進める。
このままいったら失格になってしまう。今までの4時間近くの努力が…。
関係者、何してるの。早く、早く、つたえてよー。
だれか彼に伝えて、つたえてよー。TVに向かって叫んだわ。
…(日本国中から発せられたはずの)その声は届かない。
何分か後、意識朦朧として幻のゴールに入って倒れ込む山崎選手。

もう、涙が出て止まらない。なんて、なんて、かわいそうなんだ。
係員もわざと間違えたんじゃない。わかってる。
でもね、この大会に向けて毎日練習してきた成果を出そうと、全力振り絞る選手を支えるんだっていう自覚持った仕事をしてあげてほしい。もしかしたらマラソンに比べて注目度の低い競歩だから、係員の数が少ないのかな?こんなに選手が頑張る競技なのに。

ええ、私は、1964年の東京オリンピックの開会式で、世界の国旗を覚えた世代です。だから、子供の私から見て、立派な大人達が立派な仕事をした、という記憶で残っている大会なのかも知れない。でも、あの時アイロン持って見ていたら、よーし、私もいい仕事するぞーてきっと思ったにちがいない。でも、今日は、ストライキしたい気分。

山崎勇喜さん、あなたのゴールは、北京オリンピックよ。
本当のゴール目指して、頑張って~。
今日のあなたを見ながら、アイロンかけたハンカチ振って応援するから。
コメント
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