goo blog サービス終了のお知らせ 

雨あがりのペイブメント

雨あがりのペイブメントに映る景色が好きです。四季折々に感じたことを、ジャンルにとらわれずに記録します。

春を詠う

2018-03-08 10:39:29 | 人生を謳う

 春を詠う 短歌と俳句
    日本海側や北日本の雪もどうやら終息に向かい、暖かい日が数日続いたと思っていたら
   今日は又冷えた空気の寒い一日になりそうです。
   しかし、障子の向こう側に見える陽の光は、明るく春の陽光を散りばめている。
   庭の梅の古木も八分咲き。雀たちが餌場の餌を求めて飛び交う姿も春の訪れを感じます。

   短歌・俳句の中から春を詠ったものを紹介します。
   
   〇 廃屋の続く下北半島に雪の間(あわい)の蕗の薹(とう)見つ
                       ……(秩父市) 畠山時子 朝日歌壇2018.03.05
         日本最北端の半島。風の下北半島、雪も吹き飛ぶ。
         天気の良い日には津軽半島のかなたに北海道が見える。
         最果ての地にも遅い春が確実にやってくる。
  
   〇 爛漫へ梅一輪の序曲かな
                       ……(牧方市) 中嶋陽太 朝日俳壇2018.03.05 
         福寿草が咲き、クロッカスが咲く。やがて梅が咲く頃、春爛漫の幕が上がる。
         「序曲」と言う表現に時の流れの中の自然の息遣いが聞こえてきそうな
         「春、第一章」の歌です。

   〇 春の雨野は沈黙を解き始む
                        ……(神奈川県琴平町) 三宅久美子 朝日俳壇2018.03.05
         しっとりと降る春雨に傘は不要です。「春雨じゃ、濡れていこう」。
         差し出された傘を粋に手で押しやって一歩を踏み出す。
         寒さに沈黙した柳の芽が、草むらの土筆(つくし)が顔を出す。

   〇 ごめんねの言葉届かず春時雨
                          ……(徳島県松茂町) 奥村 里 朝日俳壇2018.03.05
         春時雨。日本語っていいな。「ごめんね」って呟く。
         直接いえない意地と後悔。春時雨の中につぶやきが消えていく。 

   〇 あれからの重さこれからの長さふくしまの春かすんでゆれて

 

                                   ……… (福島市)美原凍子 朝日歌壇2015.4.6
          2015年の作品です。原発事故。訳も解らずに放射能の恐怖から逃げた。
          多くのものを失い不安に満ちた日々を送った。これから先どうなるんだろう。
          先の見えない福島の春。

            (2018.03.08記)    (人生を謳う)

 

 

 

 

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

雪を詠う

2018-02-21 13:45:48 | 人生を謳う

雪を詠う
 関東に降った雪もすっかり解け、暖かく明るい日差しの中で福寿草が輝いている。
日陰の霜柱も姿を消し、春の兆しが感じられるこの頃です。
しかし、北国では異常気象の名残りがまだ続いているようです。
雪に閉ざされ、雪かきに追われる日もきっとそろそろ終わりを告げることでしょう。
朝日新聞の俳句や短歌の投稿欄にはたくさんの雪に関する歌が投稿されています。
その中から好きな歌をそれぞれ5つを紹介します。


  〇 雪被る家並みの上の狭き空赤みを帯びて夜の明けくる
                      ……(昭島市) 奥山君子 朝日歌壇2018.02.19
     一面の雪に覆われた世界だ。白々と明るくなってくる東の空が、ほんのりと赤みを帯びてくる。
     除雪は大変だけど、雪国の美しい夜明けに感動している

  〇 積もりたる雪の歩道を鶺鴒(せきれい)は雪突(つつ)きつつ小走りに行く
                                              
……(千葉市) 笹倉童心 朝日歌壇2018.02.19
    この歌もまた雪国の一瞬の日常の風景を切り取った、絵のような風景が漂う歌である。
            雪に埋もれて餌の乏しくなった鶺鴒が歩道どうの下から現れるわずかばかりのえさを求めて小走りに               行く姿を優しい目が追いかけている。

                      
  〇 大雪に折れたる枝を取り除く頂(いただき)に柚子一つ残れり
                      ……(栃木県) 富田洋司 朝日歌壇2018.02.19
              降り積もった雪に樹々たちの枝がしな垂れている。枝をゆすり、棒で叩きながら枝に着いた雪を払っ                 ていく。 払いきれない枝のてっぺんに柚の実が一つ輝いている。

    三首とも雪国のなにげない風景を切り取った感性が素晴らしいと思います。
      



  〇 「寂しい」のうかんむりに雪つもりゆく屋根の重たさ
                 
…… (福島市)美原凍子 朝日歌壇2015.1.26
      辺り一面の雪の原。震災と原発がなにもかも奪ってしまった。ただただ寂しい雪の景色である。
      その「寂しさ」さえ、雪が埋め尽くしていく。心までも被いつくすような寂寥感が漂っている。

  〇  雪しまく峠を自転車で避難したあの人のことが忘れられない  
                                         ……梅田洋子
       「雪しまく」と言うから、
      吹雪の舞う峠道を自転車で避難していく人の後ろ姿が今でも心に焼き付いている。
      「
あの時」。 生きていくことにみんな必死だった。
                 何処へ逃げるか。人の流れる方を目指して誰もが必死で避難行
をしたのだろう。
                 避難指示で渋滞する道路、ガソリンもない… 
                 消えていったあの人は今何処にいるのだろう。
      
忘れられないあの日の一瞬が今もよみがえってくる。    

  〇 街灯の一夜を雪の降り積もる  
             …… (静岡市) 松村史基 朝日俳壇2018.02.19
       寝静まった深夜ぽつんと立った街灯に雪は降りつみ、朝、それを見ると昨夜降った雪の傘が歴                             然と残る。

  〇 美しく消ゆるは難し残る雪
             …… (東京都) 徳竹邦夫 朝日俳壇2018.02.19
       東京に降る雪。明くれば車にはねられ、人の踏みあとたちまち汚れてい来る。
       誰しもが感じる雪の白さに対する憧
れが消えていく瞬間でもある。
 

  〇 三日目も四日目もまだ雪達磨
             …… (東大阪市) 宗本智之 朝日俳壇2018.02.19
       子どもたちが久しぶりに降った雪にはしゃぎながら作った雪達磨が、まだ解けない。
       冬の寒さがひとしお厳しい日々である。

  〇 帰りゆく子の背を追ひし春の雪
             …… (岩倉市) 村瀬みさを 朝日俳壇2018.02.19
       久しぶりに帰って来た帰って来た子が帰っていく。その背中に春の雪が降っている。
       感慨深い句である。雪を背負って遠ざかる我が子…  未練が残る…

  
  〇 春立つと天は言へども屋根の雪
             …… (高岡市) 四津三樹夫 朝日俳壇2018.02.19
       暦の上で立春を迎えても、屋根の上には雪がいまだに溶けないで残っている。
       例年にない雪の深さをうたっている。その裏側に見えるのは、春を待ちわびる心なのだろう。
        (人生を謳う)                                                       (2018.02.21)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

老いをみつめる

2018-01-14 19:00:00 | 人生を謳う

老いをみつめる
  
  手術しか手立ては無くて手術は耐えられぬ母の命の行方よ
                 
(横浜市) 毛涯明子  朝日歌壇2018.01.08
      「体力がないので手術ができません」と医者から告げられた時のやりきれない気持ち。
      残された選択肢はあるのだろうか。
      切なさがこみあげてきて、「どうしたらいいのだろう」。
      逡巡する気持ちが、せつなさにかわり、老いた母の顔をみつめる。




   再びは帰宅かなわぬ転院の母送りゆく氷雨ふるなか
                 
(静岡市) 池ケ谷春雄 朝日歌壇2018.01.08
                 
「お母さん、何にもできなくてごめんね」
      安定期に入った母に下された診断は、転院だなんて。
      何にもできない無力な私。
      「お母さん、ごめんね」。
      声にならない声が、氷雨のなかへ消えていく。



  凩(こがらし)やあなたが眠るまで歌ふ
                 
(熊本市) 池ケ谷春雄 朝日歌壇2018.01.08
      
せめてあなたが眠るまで、私は歌を歌う。
      あなたが好きだったこの歌を……
      外では木枯らしが吹いている。
      深々とふけていく夜の中で
      命の「ともしび」を温め、歌を唄う
                 人間っていいなー



 
次の二句は自分の現実を見つめた句です。 

    人いつか還る虚空に銀杏舞ふ
                 (鹿児島市) 青野迦葉 朝日俳壇2018.01.08

      いつかは「土」に還っていく命。
      他人事でなく自分の「命」。
      虚空を被う大銀杏。
      金色に輝く銀杏の葉が降ってくる。
      厳選されたことばの19文字に広がる小宇宙
  
            

  積もりゆく雪よ減りゆく吾(わが)が時よ
                     (青森市) 小山内豊彦 朝日俳壇2018.01.08
      降りつむ雪に埋もれていく生きてきた歳月。
      「歳を取ったな」
      そう思いながら、あと何年元気でいられるのだろうと
      行く末を自分の歳に重ね合わして思いにふける。
      「そんなに悪い人生ではなかったぞ」
      指に刻まれたシワの深さがそう語りかけてくる。

      

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ねむのきの歌 (俳句と短歌から)

2017-08-08 08:30:00 | 人生を謳う

   象潟や雨に西施がねぶの花   芭蕉
   
紀行文「奥の細道」で、憧れの象潟を訪れた時の歌です。
           雨に煙り薄桃色に咲いた繊細な花、
     見ようによっては美貌ゆえに水に沈められ殺されてしまう傾城の美女・
           西施がうなだれている様子と合歓の花が重なって芭蕉の心を感動させたのでしょうね。
           
海に続く象潟にたたずみ、往時を偲ぶ芭蕉翁の姿が浮かんできます。
   
   下の句は今では隆起してしまい地続きになってしまった象潟に立ち、
        
在りし日の芭蕉の姿を思う作者の気持ちがよく表現されています。

   遠き日の象潟偲ぶ合歓の花
           
………相馬市 鹿又一武 朝日俳壇2017.07.31

 

   合歓の花暮れゆく山を優しゆうす
           
………尼崎市 田中節夫 朝日俳壇2017.07.31
    合歓の花には、「やさしい」「憂い」「ひかえめ」「寂しい」というイメージがあるようです。
    この花の似合う時は、「夕暮れどき」「小ぬか雨の降っているとき」なのでしょう。
    山すそに咲く合歓の花は、後ろに広がる山さえ優しく見えさせてしまう。


   合歓の木に合歓の花咲く夕小道いつしか空き家になっていた家
            
………福島市 美原凍子 朝日歌壇2017.07.31
     何時ものように夕方の散策に小道を辿って行った。合歓の花が毎年私を迎えてくれる。
    この小道に沿って建っていた家は今は人の気配のない空き家になっていて、私はこの家に
    住んでいた人はどうなったのだろうと思いながら、何時もより淋しく映る合歓の花を
    眺めています。 


     私のイメージは傾城の美女・西施の、
              美しさゆえに男をとりこにしてしまい、やがてはそれが自分の命をも

     縮めてしまう悲しい物語に繋がってしまう。
     こうした思いを芭蕉はみごとに、合歓の花=西施にダブらせたのでしょう。
                (2017.08.07記)      (人生を謳う)

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

核・放射能・被爆を詠う

2016-09-03 06:00:00 | 人生を謳う

 核・放射能・被爆を詠う (朝日歌壇・俳壇より)

 幾つかの核の光がこの星に弾けて静かな遊星となる
                          ………… 福島光良 
  ある日、何の前触れもなく「核のボタン」が押された。誰がどんな状況で押されたのか。
  最も危険で、得体のしれない「核のボタン」。アメリカは「核による先制攻撃はしない」と公言しているが、
  もしも、核保有国のどこかの国が、アメリカに向けて「核のボタン」を押してしまったら。
  幾つかの核の光が地球の青い空を飛び交って、生けるものすべてが息絶える。
  静かな惑星は死の惑星だ。

  オバマ大統領は広島訪問の際、「核のボタン」を持参した。
  小さな過ちや誤解が核戦争を起こす危険性をこの地球はいつも抱えている。
  「核抑止論」もっともらしい理由付けだが、死の惑星になる危険性も十分にある

 

 ふる里のアスパラ近所に配りたり線量検査済みと言ひつつ
                                …… 細野八重子 
   なんて悲しいことだろう。自分で作った野菜が、「線量検査済み」ですからと、
  言い訳のよう言わなければならない現実。見た目には、よくできたおいしそうな野菜。
  だがここに、無味無臭の危険な物質が混入していたとしたら、
  今なお、避難解除地域への帰還を遅らせている原因の一つでもある。
  野菜に限らず、農産物、漁業、畜産等々に広がる不安は、今も完全に取り除かれたわけではない。

  汚染に関わる不安や風評を払拭して、一日も早い「復興」を遂げようと多くの人々が活動している。
  福島県産の食品を機会があれば購入する。ささやかな福島支援になればと思う。

  何処からか、次のような声も聞こえてくる。

 核兵器絶対悪の筈なれど必要悪と囁く声が
                         ……二宮正博

  真実は一つなり、と言いたいところだが、歴史はいつも二律背反、互いの主張をどのようにして相手に知らしめ、
  自分の主張を正論にしようと腐心する。勝てば官軍、歴史は常に勝者によって書き換えられる。
     原発の地元では、原発の正否を語ることはしない。
  反対する対局には必ず賛成し、原発で生業(なりわい)を立てている人がいるからだ。
  基地問題も同じように、反対の声は大きく、報道もされるが、賛成の声はかき消される。
  賛成する人がいないわけではないのに。
                     (2016.9.2記)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

原発を詠う

2016-06-05 06:00:00 | 人生を謳う

原発を詠う
   朝日歌壇・俳壇から原発に関する歌を選んでみました。

 〇 原発をとめる根拠がないと言ひ人の不安は根拠に入れず  ……川越市 小野長辰  
      川内原発。大きな被害をもたらす地震が近くで続発している中で、
        全国で唯一稼働している九州電力川内原発
1、2号機は運転を続けている。
        敷地内で観測された揺れが原子炉を緊急停止する設定値を下回っているからだ
と言う。
 〇 全国の活断層のその上に人は暮らして原発は建つ  ……川崎市 小島 敦
                   
危険な活断層、原発も危険。でも危険と知りつつその上で暮らさざるを得ない不安。

 
 〇 原発の再稼働阻止の新聞が忘れたように括られている  ……三郷市 木村義熙
        
昨日の記憶さえも古新聞のように括られて忘れ去られてしまう。
        のど元過ぎれば……。
        
 〇 花霞む山里ゆけばおちこちに隠しようなきフレコンバック  ……福島市 美原凍子
 
〇 福島の美しき里ぼうぼうと無人の家にいのしし住み着く  ……国立市 半杭螢子
        フレコンバックのなかで、放射能への怒りや不安が閉じ込められて、いつの間にか
        帰れなくなってしまった故郷。いのししの住み家になってしまった。
 〇 被災地のさくら果てたる真の闇  ……福島市 池田義弘  
        しばし桜が咲いて明るさの光が見えた。だが、桜が散ってしまうと再び人のいない
        故郷が現れる。
 〇 国破れ被曝の春の山河あり  ……川口市 青柳 悠
        匂いもなく目にも見えない得体のしれない放射能に被曝したが、季節は春を迎え慣れ親
        しんだ故郷の山河は何事もなかったように静まり返っている。


   今日の新聞でも、被災地熊本はニュースから忘れ去られている。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

春を歌う

2016-04-23 10:00:00 | 人生を謳う

春を歌う (つれづれに…心もよう№34)

朝日俳壇の中から春を題材にした俳句を紹介します。

いちめんの菜の花いちめんの放射能 (馬目 空さん)
       
      あの日放射能が降った。除染された故郷に帰って来てみれば、いちめんの菜の花が春を謳歌している。
     だが、目には見えず匂いもしない放射能の汚染の記憶が、いちめんの菜の花と重なり、
     あの日の記憶を呼び起こす。


さまざまの事忘れゆく櫻かな (釋 蜩硯さん)

      辛い日もあり、哀しい日もあった。いろんなことがあったなー。
     こうして風に舞って散っていく桜を観ていといろんなことが
走馬灯のように浮かんでは消えていく。
     
訪れた安息の日々に、過ぎし日を思い出している自分が愛しく思えてくる。

大桜いかなる人の住む家ぞ (浜田博文さん)

      空いっぱいに広がる大きな桜が、塀の外まで枝を茂らせている。大桜の木に宿る時間の長さを思いながら、
             
長い時を経て今なお美しく咲く桜を眺めながら、この樹をおそらく何代にもわたって守り育ててきた人のこと
              に思いをはせるひと時。

人生の果てまだ見えず花の宴 (橋本正幸さん)

      春爛漫。青空を覆い尽くすように咲いている桜。桜並木が続き、遠くの方は桜と空が一体となり春霞の中に
     溶けて煙っている。や
がて、春の風に花びらのひとひらひとひらが散っていく。
     春の終わりは、晩春の始まりでもある。相変わらず、迷いながら
逡巡して歩いている人生だが、
     まだまだ歩きつづける人生だなー。


最後に大好きな芭蕉さんの歌を一句挙げましょう。

行く春や鳥なき魚の目に涙  松尾芭蕉
      
       惜春の歌です。芭蕉は千住で船を下り、見送りの人々と別れを告げる。胸中は旅の行方を想えば、
      
「前途三千里」の遠い遠い東北への旅である。別れを惜しむ見送りの人たちに手を振りながら、
      『上野・谷中の花の梢、又またいつかわと心ぼそし』と、旅の不安を感じている。
      過ぎていく春にのさなか、晩春のこの日、別れを惜しんで、鳥は泣いて悲しみ、
      魚さえも目に涙を浮かべている。 
                                                                                                         (2016.3.22記)

 

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする