君とともに生き、君とともに逝くのならば、僕は君の為に生きよう。

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『君がいる幸せ』 限りある永遠(limitato etemita)編二章十九話

2016-06-13 01:52:19 | 『君がいる幸せ』 limitato etemita編二章
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。 
 <用語>
惑星ノア 人類の首都星
惑星メサイア ミュウの星 ノアに近い位置にある
軍事基地ペセトラ 人類の軍事拠点 戦後十二人の代表で議会制になる 軍部解体中
<人物>
ジョミー ノアの前副首相 ジュピターという宇宙の軍を動かせる権限を持っていた
キース・アニアン ノアの首相 人類の評議会議長を兼任していたが…ニュクス事件後行方不明中
ソルジャー・トォニィ ジョミーの後を継ぎミュウの長となる。ニュクス事件による政変でノアの議会を掌握する。現在、ジョミーのジュピターの権限を預かっている。
ソルジャーズのブルー 人類が作ったブルーのクローン(タイプブルー)
シルジャーズのジョミー 本当はジョミーのクローンではなく実子(タイプイエロー)
ヴィー キースの部下 ミュウ部隊の隊長 ニュクス事件で仕事を失う
セドル 惑星ニュクス生れのクローン 商売に長けているキースとジョミーに近づく
アガレス・ベリアル 悪徳商人 セドルの上司 彼の親とジョミーは大戦時に会っている

※オリジナルキャラの設定を追加しました


   『君がいる幸せ』 限りある永遠(limitato etemita)編二章十九話

 『世界』は僕の手を離れた。僕がそれを欲した時に消えたのだ。
 だけど、まだ僕は、足掻き続けるだろう。そう、道は一つではないのだから…。

「ジョミー。本気ですか?」
 メサイアの空港でヴィーがそう言った。
「ソヌスプロジェクトの事も、それを牛耳るソヌスの存在も今までははっきりしていなかった。ニュクス事件でキースが退き、トォニィとセルジュが性急に事を進めようとしたした事で動き出したようだ」
「ソヌスはマザー信奉者ですよね?」
「彼らはミュウを目の敵にしていた訳ではないんだがな…。セルジュが邪魔になったという事か…トォニィを操ろうなんて…甘く見られたものだな…」
「…ソヌスを攻撃って、場所はペセトラですよね?マズイんじゃ…」
「セルジュが彼らを押さえ込もうとしていた。だから、軍部も協力してくれるだろう。出来る限り拘束してくれればいい」
「今さら、人類の部隊とですか…信用できますか?」
「セルジュの為になら動いてくれる」
「了解。しかし、あのアガレスに協力を求めるなんて、信じられない」
 見るのも嫌だとヴィーが顔を歪める。
「使えるものは使うべきだよ」
 え?と驚きヴィーはジョミーを見る。
「ジョミー。実際のあなたより、思念体の方が怖いんですね」
 と、ヴィーは皮肉を言った。
「そうかも…しれないな」
 僕はそう言うと、目をふせ、窓(宇宙)へと目を向けた。
「そんな事より、キースに会わないといけないな」
「どうやってですか?」
「セイレンがキーを持ってきてくれたからね」
「セイレン?」
「フィシスの…ね」
「では、予知してるとかですか?」
「さぁ、それはわからない。ただ、キースに会う時が来たのだろう」
 そう言ってジョミーはセルジュの所へ繋がるコードナンバーをヴィーに教え、静かに消えていった。
「キースを締め出した。人類との共闘…。こんな風にこそこそとしてるのは嫌なのに。僕はこの後に何を見てゆけばいいのか…教えて下さい。キース…」
 と、ヴィーは呟いた。

  ジョミーの部屋

「ありがとう。ヴィー」
 ヴィーの苦しみが伝わる。
 ゆっくりと思念体を体に戻すと、セイレンのキーコードを使い部屋に仕掛けられたシールドを一つ一つ解いてゆく。
「ちょっと疲れた…な」
 ソルジャーズのジョミーは、僕をどう思ったのだろうか?助け出せるチャンスをふいにして、知っていた事を知らせずにいた。僕ならミュウのソルジャー・シンはどうしようもないなと思うよ。
 彼との約束、(ソルジャーズの)ブルーに会わせる事、それだけは何を代償にしても叶えなくてはならない。
 それと、トォニィが始めた軍縮・改革という名の粛清。これがソヌスの所為で曲げられた本人の意思でないのなら、僕はそれを止めなくてはならない。彼は僕らの希望なんだ。
「…んーっ。最後は…と」
 僕は大きく伸びをすると、最後の枷。手と足に付けられた透明の鎖を見た。
 これを外すと実体で動く事が出来るようになる。
 もう一度手をあげて、透かして見る。よく見れば肉眼でうっすらと見える。これはトォニィ本人が僕につけたものだろう。
「これを外すと、僕はトォニィの想いを裏切る事になるのか…」
 カチカチ…と小さな金属音がする。
 手が震えていると思った。失いたくないものだから、こうまでするのなら…。僕は動いてはいけなかったのだろうか?
 今なら、止める事が出来る。僕はただ見ていれば良かったのか?
 何度すくっても手から零れ落ちてゆくものがある。
 トォニィも僕をそう見ているのかもしれない。
 寂しさや、儚さで作られているかのようなこの鎖。

「説得に応じなかった場合、キースを殺してもいいですか?」
 ニュクスへ向かう前、シャングリラでトォニィは僕に聞いてきた。
 それに僕は「自分が手を下すから、誰にも手を出させないように」と答えた。
 けれど、結局僕はキースを殺せなかった。
 トォニィはそれを怒っているんじゃないのはわかっている。
 キースを殺すと決めるまでのトォニィの苦しみを知っていて、そう答え、それを実行しなかった僕への怒りだ。
 だけど、トォニィ。
 キースのしようとしていた事を僕は最初から認められなかったんだ。
 誰かを殺して見える未来(さき)って何だ。
 僕らはもう十分に人々を仲間を殺してきているんだ。
 もういいじゃないのか?
 ピシッと小さく音を立てる鎖。
 そして、パンと粉々に砕けた。
「トォニィ…。確かに僕たちには守らなくてはならないものがある。でも、それだけじゃいられないんだ」
 セルジュとの連絡が取れなくなったのは、ニュクス事件の時、僕がトォニィとメサイアに戻る前だ、そこに不自然さを感じた。それよりもニュクスの前にセルジュ自身が僕に会いたいと場所を指名したきたあの日から変だった。ノアとペセトラがキース暗殺へ動きだしたと知らせに来た。あの時から、セルジュは何らかの脅迫を受けていたのかもしれない。セルジュはそれに応じず、彼を人質として、矛先がトォニィに変わった。
 暗殺や謀略、人類はどこまでも傲慢なんだろう…。
 セイレンの指示通り、施設の屋上にフレッチアがあった。僕はメサイアの空へと飛んだ。
 
「大切なものを守る為に自分を犠牲にするのは良い事なの?」
 それは、部屋を出てゆくソルジャーズのジョミーが心で思った事だった。テレパシーの交信はなかったが、流れてきた感情だった。
「僕のそれは…ただの自己満足…」
 飛びながら、ジョミーは答える。
「それで守れるなら、皆、そうしている。待ってろよ。キース。間違っているって教えてやる」
 頬を伝うものがあった。
 それを手でぬぐい、僕はキースが居る場所へと速度を上げた。


  惑星メサイア・遺跡(人類の入植の跡地)

 メサイアが過去に人類の入植をされた星である以上、こういう遺物は残っている。ここは遺跡と呼ぶにはまだ新しい。200年程しか経っていない物だった。
 コンピューターテラを取り出し、それを元の結晶の形に戻してから、キーの解除をする。
 監視はすべて人工物。つまりアンドロイドだ。
 コンピューター・テラがあれば、ミュウの力を使う事無く、彼らを従わせるのは簡単だった。
 キースが居る部屋へと着き、ドアを開ける。
 と、同時にふわりとホログラムが浮かぶ。
 それは僕の前進を阻む。
「ジョミー。戻って」
「これ以上、進まないで」
 懇願するように、それは言う。
「ごめん。僕がここに来た事で答えは出ている、僕はもう後戻りは出来ない」
「グランパ。お願い」
「トォニィ」
 一歩進むと、前に出るトォニィの映像。
「聞いて、トォニィ。惑星ニュクスを救うと君が悪政を布くのは視えていた。これは、僕が君を信じて進んできた道だ。大丈夫。大丈夫だから、未来を掴もうよ」
「グランパ」
「トォニィ…信じて」
 トォニィのホログラムを突き抜ける。
 悲しいような、寂しいような、それでいて笑っているような顔のトォニィがゆっくり消えていった。

「キース・アニアン」
 僕は、細長い球体の中で眠るキースに声をかけた。
 静かにホログラムが浮かんでくる。
「……」
「眠っているの?」
「…いや、さっきのも見えていた」
「キース。僕らは離れる。こうなる事が望みだったんじゃないだろう?」
「…お前はトォニィには強がるんだな…」
「それが…悪いか?」
 僕はキースを睨み返した。
「映像のくせに、憎まれ口なんて、本人と確認するまでも無さそうだね」
「そうだな」
 キースは小さく眉を上げた。




 つづく




※やっと会えたのにケンカ腰…。^^;
 甘々にしたいと奮闘中です。
 ここで会ってまた離れてしまうので、何とかしたいです。 





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