君とともに生き、君とともに逝くのならば、僕は君の為に生きよう。

真城灯火の小説ブログです。
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オンラインな彼女と僕 6

2012-07-15 18:18:03 | オンラインな彼女と僕 (真城灯火)



 「オンラインな彼女と彼氏と僕」
 
                 -6-



「…気にいらない?良い子じゃん。明るくて」

 僕は背中に嫌な汗が流れた気がした。

 シアは少し、ヤンデレ?だったのである。
 若いから考えすぎてしまうのだろうが、神経質な子だった。
 ちょっとした言動や他のPCの行動を悪い方向に取ってしまい、よく落ち込んでいた。

 少し前のある時、深夜組の明石と、相談にのっていたのだが、その日はシアはある事で悩んでいた。

 そして、
「車を見落として渡ってはねられそうになった」
 と言った。
 はねられてはいないが、ケガをしたので、病院に通う事になり、しばらく学校を休むのだという。
 会話からも落ち込み具合からも、嫌な感じがする。
 僕は「それはもしかして?」と思ったが、聞けずにいた。

 すると、明石が、
「それって、死のうとしたんじゃないよね?」
 と聞いた。
「見落としただけですよ」
 とシアは答えた。

 そんなちょっと怖い、心配をさせてしまう危うさのある子だったのだ。

 僕から見ると、今のまさみ(つぼみ)は言動が大人らしくなくなっている。

 ゲームの中の他人の気持ちまで考えろ。
 とまでは言わないが、人を傷つけて平気なのは良くない。

 ……。

 「あんた、気に入らない」とはっきり言ってしまうのでは、と心配になった。
 
 

 余談だけど、
 シアの事で、僕はこの少し変わった所のある明石を信用するようになった。

 彼はゲーム内での情報通で人脈も太い。
 で、かなり自分の世界のある人だった。

 明石は自分のリアルを一切言わない。
 年齢も読ませてくれない。
 性別は男性だが、そこから疑ったら国籍も疑えるくらいの人だ。

 僕の誤爆につっこみが早く、現れるのも消えるのも早かった。
 気が付けば目の前に居たりする事も多かった。
 まるで、隠密な人なのだ。
 




 さて、

「シアのそこが気に入らないの」
 とつぼみが言う。

「明るいのが?」

「そうよ。無神経なの。私達をバカにしてるような事を言うし」

 あぁ、始めて1ヶ月くらいのシアは、始めて2年になる高原とつぼみが毎日インしているのに、カンストしていない事を、
「そんなに時間かかるの?そんなに出来ない」と言ってたっけ。
「学生だから、課金も出来ない」とかも言ってたな。


「そりゃ、言われて嬉しくはないよな」

「でしょ、でしょ」

「まぁ、人それぞれだし…」

「それに…あの子、高原を狙ってない?」

「え…えぇ?それはない…んじゃ」

「ねぇ、女だと思うんだけど、どっちか知ってる?」

「知らないけど、男だと思うよ」



 ああ、そうか。

 そういう事か…。
 シアに確認してみるか…。


 その時、僕は気がついていなかったのだけれど、高原がつぼみと付き合い出してから、
 京極と三人でいるのもあまり見なかった。

 京極のあの発言があるので、僕と同じ理由で彼は遠慮しているだけなのかと思っていた。



 最近はいつも高原とつぼみは、二人だった。

 そして、大きな町とかに居る時は、二人は重なるように座っていた。

     
 これは。グラフィックならではの「合体技」です。




 ちなみに、僕はそれを面白い。

 と思って見ていたけれど、誰もそんな事を街中でしていないので他のPCがどう思っていたかは不明です。




 シアの性別を確認しようと思っていたけれど、僕は姉の退院で忙しくなってしまい、また数日入れなかった。


 そして、

 夕方の、僕にしては珍しく早い時間にインすると、高原がいた。



「時間ある?」と聞くので

「ご飯落ちするまでの1時間くらいなら、いいよ」
 と答えた。

「相談したいから、ちょっと待ってて」と

 高原はわざわざ僕の居る町までやってきてPTを組んだ。
 僕達は大きな町の芝生の辺りで1時間程話をした。

「この前さ。シアに頼まれて3人でダンジョンに行ったけど、その時さ。つぼみが怒り出しちゃって…」

「シアに怒ってた?」

「いや、俺に。チャットとメールであの子とは遊ばないで。って言って来た」

「ふむ…」

「前にも、他のPCと遊ぶといちいち怒ってさ」


「……」

「俺は、他のと遊んじゃいけないのかな?」

「それは、遊んで良いと思うよ」

「だよね。ちょっと焼きもち焼き過ぎだよね」

「まあ、そこは、問題あるけどさ、それだけ高原を好きって事でしょ?」

「そうなんだろうけどねぇ…。ちょっとしゃべっただけで怒るから」

「度が過ぎるようなら、僕から注意してみる」

「ありがとう。それで聞いてくれるといいけど…」

「彼女は寂しがり屋だから、優しくしてあげて」

「うん。そこはわかってる」

「よかった」

「わかっているけど…」


「でもさ、これからは、シアは誘わない方がいいかもね」

「だなぁ…」

「暫くは、僕が来るから、シアの事を気にしなくていい」

「よろしく頼む」

「つぼみは、シアの中が女だと疑っているから、仕方ないよ」

「そうなのか?」

「男だと思うんだけどね、僕は」

「俺も男だと思う」


 と、こんな会話を街中でして、僕はご飯落ちをした。




 その日、夜中にまたインすると、すぐにシアから

「話したい事があるのですが」
 と言われた。

 話は高原のと同じだった。

「高原とつぼみが喧嘩をしてしまったのは自分の所為じゃないか?」
 と心配をしていた。
 それは、君が女性じゃないかとつぼみが疑っているからだよ。と伝えた。

「え?マジ?男ですけど」
 とシアが言った。

 これで、解決。



 と思ったけど、まだ続いていた。。




 男だとわかっても、つぼみは一緒に遊ぼうとしなかった。
 
 フレンドの関係も一方的に切るほどだった。


 それで、シアが落ち込んでしまって、なだめるのに苦労した話は、省いて、ここは。


 先に進めよう。



 高原が言っていたのは、どのフレでも焼きもちを焼くので、と言う事だったから、どのPCでもダメだったのだ。

 とにかく、高原と話す相手はすべて排除だったのである。



 この時点で、二人が付き合い出して、半年くらい経っただろうか。


 この頃には二人はリアルで会っていた。
 まさみ(つぼみ)の部屋のパソで高原がログインする時もあったようだ。




 そして、 

 ひとまず、このシアのフレンド切りの話が片付いた頃。


 僕はつぼみに喧嘩を売られたのだ。


 
 その日は、つぼみの雰囲気が違っていた。
 
 僕をメール呼び出しておいて、会話が高原との事ばかりだった。



 パソから何か嫌な感じがする。


 ゲーム画面から液晶を超えて伝わってくる…、

 恐ろしかった。


 ホラー映画でまだ何も映し出していないのに感じる不気味さと似ていた。




 それで、身の危険を、感じたなら、すぐにその場を逃げれば良かった。




 僕はまだ信じたかった。



 彼女もそう、信じたかったのかもしれない。







 僕は落ちた。




                  つづく






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