君とともに生き、君とともに逝くのならば、僕は君の為に生きよう。

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『君がいる幸せ』 限りある永遠(limitato etemita)編 二章一話

2015-03-13 19:13:58 | 『君がいる幸せ』 limitato etemita編二章
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。
 <用語>
惑星ノア 人類の首都星
惑星メサイア ミュウの星 ノアに近い位置にある
軍事基地ペセトラ 人類の軍事拠点 戦後十二人の代表で議会制になる
<人物>
ジョミー ノア前副首相 ジュピターという宇宙の軍を動かせる権限を持っていた
キース・アニアン ノアの首相 人類の評議会議長を兼任していたが…
セルジュ 軍事惑星ペセトラの評議会議長代理(現在、軍部で最高位)

   『君がいる幸せ』 限りある永遠(limitato etemita)編 二章一話

  惑星ノア・商業都市コスタ(惑星ニュクスの事件から三か月)

「こんなに遠くまでありがとうございます」
「久しぶりですね」
 民間機を乗り継いでやってきたジョミーはセルジュの部下に案内され、セルジュの待つ部屋へと入った。
「お一人で大丈夫でしたか?」
「ええ、もう動けます。寝過ぎでなまってるだけですから、リハビリです」
 出迎えたセルジュは軍服ではなく、簡素なシャツとパンツにジャケットを羽織っていた。ジョミーもミュウの服ではなくて同じような姿だった。
「メサイアまで行けなくて、すみません」
「何故、極秘なんです?もしかして悪巧みですか?」
 とジョミーが笑って言った。
 セルジュがちょっと困惑する。
「冗談です。このタイミングで目覚めたのですから、会わなければならないという事だと思います」
 ジョミーはそう答えた。
 二人は再会を祝してセルジュが用意していたお酒で祝杯をあげた。カチンとグラスが鳴る。二人は三か月前、あのニュクスでの戦闘中のモニター越し以来だった。
「実際、こうして会うのは、一年振りになりますか?」
「キースの事を話した時ですね」
「そうでしたね…。もうずっと前の気がします…」
 セルジュがお酒の入ったグラスを回しながら答えた。
 今日の彼はピッチが早かった。
「セルジュ。何か困った事でも起きたのですか?今、トォニィはペセトラに行っていますよね?」」
 惑星ニュクスの事件で軍部を一人で掌握する事に問題があるという流れになり、あちこちで軍事勢力の解隊が起きた。それを押し進めたのは、トォニィとセルジュだった。トォニィは一刻も早く全軍を解隊するよう強行していた。この事に不満が出てきているのは誰の目にも明らかだった。そんな時期に軍の最高責任者となっているセルジュがペセトラを留守にしてここに来ている。
 セルジュはかなり酒が強い。酔っているところを見た事が無かった。その彼が今日は酔っているように見えた。
「いいえ。別に今は何も…。トォニィも…。今日はあなたに個人的な願いがあって…」
「願いですか?」
「はい」
「僕に出来る事ならと答えたいところだけど、あいにくと、今の僕には出来る事があまりありませんよ…僕はキースの事を知りつつ見逃したのを許されていませんし…」
 そこまで言ってジョミーは言うのを止めた。セルジュの様子がやはり普通ではない。
「……」
「セルジュ?」
「いえ、あー、そういえば、シドがあなたの所から離れたと聞きましたが…」
「シドは、トォニィが『シャングリラ』を使うので、彼はキャプテンですから」
「そうですか。では今は一人で?」
「ええ。『セイクリッド』は僕だけでも問題なく動かせます」
「あの、ジョミー。今、僕の所にヴィーが居ます。彼を使って下さい。彼自身がそれを望んでいます」
「ヴィーがペセトラに?」
「ノアの兵士は総入れ替えされましたからね」
「そう…ヴィーが、彼は今…」
 ジョミーはニュクスでのヴィーを思い出していた。ヴィーはキースの命でミュウに近づき情報を流していた。だが、実際キースが動き出すと、捨て駒にされる事に気付き、ジョミーに協力した。
 彼は自分の部隊を助けたい一心だった。ミュウと兵士の間で揺れ動いたヴィー。
 そして、ジョミーの脳裏には戦艦プロメテウスが燃え落ちる姿が浮かんでいた。ミュウ部隊の仲間たちの死を目の当たりにしたヴィー。その悲しみと嘆きを思い出していた。
 あれは夢。大丈夫。そうならなかった。
「ミュウの部隊は解体されて、ヴィーは僕の所で謹慎処分中です。復帰しても今までのようにはいかないでしょう」
「それで、僕の所に?」
「彼はミュウですからね…」
 セルジュは寂しげに笑った。
「まあ…確かにトォニィの所にって訳にはいかないけど…」
「彼が苦手ですか?」
「ああ、いや、彼がどうのとかじゃないんだ。ヴィーはミュウの部隊をとても大切にしていたから…ちょっと。辛かっただろうと思ってね」
「ミュウ部隊の再編成はあると思いますが、ヴィーは戻れないでしょうね」
「…そうですか…」
 深く思い悩んでしまったジョミーを見て、セルジュは確信したように言った。
「ジョミー。あなたはあの時、何かをしましたね」
「あの時とは?」
「ニュクスでプロメテウスが降下をした後です」
「ううん…何も」
 ジョミーは首を振った。
「僕らは何か大きな悲しみを感じましたが、何も起きなかった。ミュウは皆、口をつぐんでしまった」
「誰も何も…していないよ」
「僕には言えないのですか…」
 セルジュが小さく呟く。
「……」
「やっぱり。あなたを入手するのが早いのかもしれませんね」
「?」
「ジョミー。あなたの噂を知っていますか?」
「僕の噂…ですか?」
「ええ。もう何年も前から言われている噂です。出始めは確か海賊事件の頃…」
「ああ、それなら、世界がどうのって言うのですね」
「そうです。ここ最近特に言われています。あなたを手に入れた者が世界を手にするというのです」
「僕は副首相ではなくなり。ジュピターをトォニィに返上したのに。まだそんな事が。立ち消えになると思っていました」
「誰かが意図的に流しているという事です」
「そうですか…それは良くないな…」
「どうしてです?」
 ジョミーは「セルジュはその出所を知っている?」と思ったがそれは聞かなかった。いや別にと曖昧に答えた。
「ジョミー。僕がここに来た理由…。ヴィーの事なら会っていう程でもないですよね?」
「ああまぁ、そうだけど…」
「何だと思います?」
 セルジュは手にしたグラスを眺めて、小さくため息をついた。
「僕の噂とここに来た事は関連があるというのかな?」
 その問いに、心を決めたようにセルジュは答えた。
「ジョミー。僕を抱いてくれませんか?」
「それは?…どうして?」
「僕は何もして来なかった。これがその報いなんです」
「報い?セルジュ。君は酔っているのか?」
「酔ってますが、酔えません」
「酔っているよ」
「大丈夫です」
「いや…。違う。君は」
「違う?何故ですか?」
「…君は間違えている」
「……」
「そんな用件なら、僕は失礼する」
 ジョミーは席を立って出て行こうとした。
「待って下さい!」
「僕に会って…君は何を確かめたかったんだ?」
「真実を…」
「それはさっきの問いですか?」
「……」
「ミュウと人間の感覚は少し違っている。でもそれは大きな違いじゃない。僕らに近い人間もその感覚を持つ。君は僕らとの時間が長いからね。もう薄々気が付いているだろう」
「ジョミー」
「僕からもお願いがある。交換条件を出してもいいかな?セルジュ。ヴィーの話を受けるよ。今の僕には一人でも多くの人間の協力が必要だから…。嬉しく思うよ。その代わりに、あの時の事、そして、これからの事を教えよう。そして、僕は君の協力も必要としている。それは多分君も同じだろう。僕らはとても良く似ているんだ」
「協力するかを聞いてから決めてもいいですか?」
「ああ、構わないよ」
「君たち人間があの時垣間見たプロメテウスが沈んだという事。あれは本当だ。僕が皆に見せたこれからの事。でもあれは起きなかった。皆、その予感と恐怖だけが残った。それで皆は休戦に応じた。あまりに鮮明な未来で、僕が時間を戻したとトォニィやミュウは感じたんだ。その事実で、キースは政界を追われ、トォニィがその後釜に入った」
「…未来は本当に?」
「未来も世界も誰も物でもないと言ったら君はどう思う?」
「それは、その通りだと思います」
「だからさ。あれは僕が視た未来であって、そうならない未来もあるという事だよ」
「ではどうすれば」
「どうすればいいのかは皆の思い次第」
「だけど、僕には見えません」
「見えなくても動く時だ。君はその力を手にしてしまったのだから」
「僕は、トォニィに聞きたい。キースに問いたい。ですが、それが出来ない。だから」
「だから、僕を呼んだ。僕はそれに応え目覚めた。けれど、君の問への答えは本人たちが持っている」
「あなたは待っているのですか?」
「待ちたいけれど、残念ながら僕には他にしなければならない事があってね」
「さっき、とても似ていると言いましたが、問いは同じでしょうか?」
「ああ、トォニィとキース。彼らを想うならば、同じだろう」
 
 一か月前にノアの首相と評議会議長になってからのトォニィは軍の縮小を推し進めていた。そのあまりの強行さにあちこちで問題が起きていた。そして、キースの状況に進展はなかったが、彼に会う事がセルジュですら困難になってきていた。


  



  続く



☆お待たせしました。二章開始です。
二話に分けようかと思いましたが、分けるには短いのでこのままです。
しかし、最近、めっきり華が無いですね。
(華=砂が吐けるようなBL展開)
書いていてもとても寂しいです。
ジョミーとキースが離れたのでシドやセルジュに攻めさせてみましたが、
この二人は役不足だったようです。
なので、次回はジョミーの弱点を突いてみます。(笑)

※姉は無事帰国。お騒がせしました。



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