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『君がいる幸せ』 二章「湖底の城」三話(Sumeru)

2011-08-09 02:50:30 | 『君がいる幸せ』(本編)二章「湖底の城」
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です

 <用語>
木星軌道上の衛星都市メティスのビルレスト 2人が住む建物
ジュピター キース警護時のジョミーのコードネーム(シャトル所有)
惑星メサイア ミュウが向かった新しい移住惑星
育英都市スメール フィシスとカナリア達が住む都市


  『君がいる幸せ』

  二章「湖底の城」

  一話(Sumeru)現在
 キースは考えていた。
 ジョミーがカナリアを殺していったい「何が」あるいは「誰が」得をする?
 信頼を得はじめていたジョミーはこれで人類から追われる身となる。
 カナリアはその死をもって世間にその存在を知らしめる。
 この二つで何が得をする?
 人類?
 カナリア?
 それとも、ミュウか?
 ミュウだとすれば、ジョミーを排除する事でまた戦時下に戻す事が出来る。
 今度こそ「力」で制圧ができる。
 けれど、メサイアに旅立った今、それを彼等が望んでいるとは思えない。
 キースはカナリア殺害の事を短い間しか止めておけなかった事を不審に思っていた。
 …内部に手引きした者がいる。
 損得で図れる事象では無いのかもしれない。
 ジョミーが向かった育英都市スメールで何か起きた事は、セルジュを通して聞いた。
「全く、あいつに手を出すバカがいるのか?」
 ミュウを敵にまわすと思ったら出来ないはず、だが、ジョミーを敵にしなかったら最強という事になる。恐ろしく簡単な図式が見える。
 強大な力がありながらそれを揮おうとしないのは、意味がわからないと言うの者も多いからな…。
 異星にミュウが飛び立った今だからか?
 ジョミーに隙がありすぎる。
 優しすぎる。いや…甘すぎるのか?
「うかつに手を出すなと言ったのに…」
 キースは部下に内情を探るように言い、セルジュに太陽系をまかせてひとまずスメールに飛んだ。
 スメールは首都星ノアに近いが、その昔、反抗勢力が隠れていた地域だった。
 この手の情報に詳しいスウェナと会う事となった。
 あの大戦以来会っていないが、彼女が持つ情報網は信用が出来た。
 以前、ジョミーと同じようにカナリアの事を世間に知らせて救いたいと言っていたスウェナ。
 カナリア側にも信頼されている彼女なら、何かを知っているかもしれない。


  スメール空港
 スウェナと会ったキースは単刀直入に切り出した。
「スウェナ、正式に私の元で働かないか?君の持つ情報は両刃の刃になる事を自覚した方がいい」
「キース、あなたに協力するのはあの大戦での一度だけって約束だったはずよ」
「感謝している。だが、色々と目をつぶっているが、それでは不足なのか?」
「いいえ、キース。私は謝ってほしいだけよ。あの戦いであなたが見殺しにしようとした。私の娘に」
「わかった」
「え?」
「あの時の事は申し訳ないと思っている。許して欲しい」
 とキースは頭を下げた。
 思いがけないキースの行動に謝れと言ったスウェナが慌てる。
「キース。あなた本当に変わったわね…」
「頼みたい事がある。スウェナ。カナリアの事も、ミュウの事も、あるがままを伝えていいものではない。何でも暴けばいい訳じゃない。秘密にしておいた方が良い事は存在する」
「キース、それはジョミーの事ね?」
「そうだ。カナリアと交渉がしたい。今、何者かが、ジョミーのその力を(能力的にも影響力的にも)利用しようとしている。その前に手を打ちたい」
「要するに私がジョミーの事をカナリアに教えてしまったから、カナリアが彼に目をつけて問題を起こしたって事でしょう?あなたがスメールに来るなんて考えられなかったから調べてあるわ。多分、連絡もつけれるはずよ」
「スウェナ」
「あなたと違って、ジョミーには助けてもらった恩があるもの」
 と皮肉を言ってみるスウェナ。
「ジョミーの初恋の相手は君だったんだ」
 と返された。
 キースは本当に変わってきていると驚くスウェナだった。
 カナリアとの連絡をするスウェナ。だが、それは繋がらなかった。
 その時、空港内のモニターが一瞬乱れた後に、まっすぐにこちらを見つめるジョミーが映った。
「僕はミュウの長 ジョミー・マーキス・シン」
 よく通る声がロビー全体に広がってゆく。
 遅かったか…と、キースが唸った。



   続く






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