小春奈日和

赤ちゃんは、人間は、どのように言葉を獲得するの?
わが家の3女春奈と言葉の成長日記です。

340 難波の安曇氏

2014年12月16日 00時49分55秒 | 大国主の誕生
大国主の誕生340 ―難波の安曇氏―


 しかし、何よりもここで考えたいのは難波における安曇氏の存在です。
 前回、阿波の名方郡に安曇氏の一族がいたことについて触れましたが、その『日本三代
実録』貞観六年八月八日の記事には、

 「阿波国名方郡の人安曇部正六位上安曇部粟麻呂、部の字を去りて宿禰を賜う。自ら言う、
安曇百足の苗裔なり」

と、あります。
 内容は前回にふれたように、名方郡の安曇部粟麻呂が宿禰の姓を賜わった、という記事で
すが、それに続いて、安曇部粟麻呂が安曇百足の子孫を称していたというこも記されています。
安曇百足は『播磨国風土記』揖保郡浦上の里の条に、

 「浦上と名づけられたのは、昔、安曇連百足らが、はじめ難波の浦上にいたものを、後に
この浦上に移って来た時に、元いた土地の名を付けたものである」

と、書かれています。
 そして、この記事によれば、安曇氏の本宗である安曇連が難波(なにわ)の地にいたことに
なるのです。
 難波は言うまでもなく現在の大阪市のことですが、この当時の大阪市は、上町台地をのぞいて
大阪湾の海の下にあり、それが徐々に陸地化していく時期にありました。
 『播磨国風土記』にある難波の浦上が現在のどの場所であるのかよくわかりませんが、大阪市
の東横堀川沿いの旧地名に安曇江があり、それと、かつて難波には安曇寺が存在しました。
 安曇寺の所在地についても諸説ありますが、そのひとつが高麗橋です。
 東横堀川も高麗橋も大阪城の西側にあり、つまり、この周辺が難波における安曇氏の拠点に
推定されることになります。

 ただし、『新撰姓氏録』では、摂津に安曇連と安曇宿禰の名は見えず、代わりに安曇犬飼連が
載っているので、難波にいたのは安曇氏ではなく安曇犬飼氏だった可能性もあります。
 安曇犬飼は、安曇連ゆかりの穂高神社にも関係していた氏族で、このことは、中世の文献に犬飼
の名が見えるからなのですが、安曇氏も綿津見系の氏族だから、安曇氏と安曇犬飼氏は同族ないし
非常に近い間柄だったとも推測できなくもありません。

 さて、生國魂神社は大阪市天王寺区にありますが、元は、現在大阪城のある場所に鎮座していま
した。大阪築城の際に、豊臣秀吉によって移転され現在に至るわけです。

 それと、倭氏と安曇氏で避けては通ることのできないのが墨江中津王(スミノエノナカツミコ)
の乱です。『日本書紀』では、「住吉仲皇子」と表記されています。
 この人物は16第仁徳天皇と葛城の曾都毘古(ソツビコ)の娘石之日売(イワノヒメ)との間に
生まれた御子で、同母兄に17第履中天皇、同母弟に18代反正天皇と19代允恭天皇がいます。
 スミノエノナカツ皇子の反乱とは、長兄の履中天皇の殺害を目論んで天皇のいる難波宮を襲った
事件です。
 もっとも、履中天皇は倭漢直の祖阿知直(あちのあたい)によって窮地を脱し、スミノエノナカツ
皇子は弟のミズハワケノミコト(後の反正天皇)に謀殺されて乱は終わります。

 スミノエノナカツ皇子の反乱は、『古事記』、『日本書紀』がともに伝えるところですが、ただ、
この乱に関して、『古事記』にはない場面が『日本書紀』に見られます。
 それは、安曇連浜子(あずみのむらじはまこ)と倭直吾子籠(やまとのあたいあごこ)の両名が
スミノエノナカツ皇子に味方したことが『日本書紀』には記されているのです。

 スミノエノナカツ皇子は、その名から難波のスミノエに関係していたものと思われます。
 大阪市には、住吉大社が鎮座する住吉区があり、その西隣は住之江区です。この当時の地形は現在
に比べてかなり海が迫っており、この周辺を指して住之江と言ったのです。

 今も少し触れましたが、この地には住吉大社が鎮座します。
 そして、住吉大社の境内には大海神社が鎮座するのです。
 大海神社は一般には「たいかい神社」と呼ばれているが、正式な名称は「おおわたつみ神社」と
されています。
 祭神は豊玉彦命と豊玉姫命なのですが、神社の名前から、豊玉彦命は綿津見神と考えらます。
 住吉大社の祭祀氏族は津守氏で、大海神社の祭祀氏族もまた津守氏とされていますが、津守氏は、
天火明命を始祖とする氏族です。
 綿津見命を祖とするのは安曇氏であり、安曇氏がいた阿波国名方郡には和多津美豊玉比売神社が
鎮座します。

 ただ、しかし、住之江に拠点を置きながら、津守氏がスミノエノナカツ皇子に味方したというような
記事は、『日本書紀』には何も記されていないのです。
 津守氏がスミノエノナカツ皇子に加担しなかった理由。それは何だったのでしょうか。

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