私の日記の中で
「大人のディズニーランド」という言葉や
「大人の社会科見学」という言葉を
度々使わせていただいてきたが、
今日はその「大人の社会科見学」の最新号だ。
写真点数や文字面も
相当な分量になりそうなので
何回にか分けてご報告したい。
昨日、浅草に程近い蔵前に営業に行く機会があり
14時の商談を終えて時間外れの暖簾を求めて
この界隈を散策させていただいた。
土地も土地だしせっかくだからと
浅草方面に歩を進めていたのだが、
遠くの方から踏みしめるたんびに
大きくなって近づいてくるどぜうの文字を
見つけることができた。
駒形どぜう。
旨い旨いと聞いていた昔の庶民料理屋はここにあったのか・・・
ちょうど先週も
駒形どぜうであんだけおかわりをする奴は
いないだろうという世話噺を耳にしていたタイミングのよさ。
連休中にツアーでも組むかと話していた仲間うちの話が
一気に現実のものになってしまったのだ。
こちらのお店の場所なのだが
一番近いのは都営浅草線の浅草駅だ。
駅を降りて江戸通りを右手で
蔵前方面に進めば誰でもこの暖簾と向き合えるだろう。
暖簾がかかっているのを確認して
ワクワクしながら潜ってみると・・・
うぉっ。道場だ。
上座には神棚が鎮座し、
広々とした茣蓙の敷かれたスペースには
一枚板が等間隔に渡されていた。
靴を預けて奥の方へ陣を取り、
初めて見る芳ばしい光景に
興奮を隠せずにはいられなかった。
ちなみにこちらのお店。
聞いてびっくりの4層式だ。
1階はご覧の入れ込み座敷。
2階が大広間と小部屋
3階の小部屋は掘こたつ式のテーブル。
地下は椅子席とあぐらをかけない方がいても
安心してどじょうを食べることができるのだ。
板の間には仲居さんが控え
目線の先には刻まれてきた歴史の面影が並ぶ。
それもそのはず。
こちらのお店の創業は1801年。
徳川11代将軍の家斉公の時代なのだ。
創業200余年。
凄すぎる。
家屋の方は関東大震災や第二次世界大戦で
全焼という憂いにあいながらも
昔の面影をしっかりと受け継いで建てられたもの。
入場料を払っても見とれてしまうような
歴史を肌で感じることができる建物だ。
入り口に「江戸文化道場」の文字があったが、
これは隔月に一度、江戸の食文化や芸能などを
専門家が手解きしてくれるイベントで、
どじょうを喰いながら楽しく江戸の文化が
学べるという訳だ。
次回の演目は知らなんだ、
6月2日(月)に行われるそうなので
気になる方はこちらを狙って来訪されると
より社会科見学にも厚みがでるのだろう。
ただし、会費は年6回分で
18,000(食事付)とあるので
巻末の電話で確認するのがまずは良い。
客が入ると
たっぷりの葱が入れられた木枡が準備され、
こいつには七味と山椒も入っている。
どじょうは元々
「どぢやう」や「どじやう」と書くのが正しい表記だそうだが、
そいつを「どぜう」の3文字にしたのは1806年(文化3年)に
江戸の大火で店が類焼した際に、四文字では縁起が悪いと
奇数文字の「どぜう」に改めたのが始まりだそうだ。
江戸末期になるとこの店の「どぜう」という文字が
お店の繁盛にあやかりたいという他の店の模倣により
「どぜう」という言葉が広がったのだ。
完全にお店の請負だが
社会科見学にはこういったウンチクも必要。
たっぷりと書かせていただく。
こいつは靴の預かり札だ。
いつのものか聞けば良かったが
こいつにも歴史がありそうだ。
自分の祖先が手にしていたらなどと考えるだけで
お腹のぐうの音に拍車がかかるのも
こういった歴史のあるお店の良いところだろう。
品書きを手元に引き寄せ熟読する。
主なメニューは
どじょう鍋 ¥1,650
柳川鍋 ¥1,450
どじょうの唐揚げ ¥750
鯉のあらい ¥800
味噌田楽 ¥350
鶏つくね焼き ¥850
どじょうの茶漬け ¥800
くじらも置いており
刺身 ¥1,600
くじら鍋 ¥1,500
さらしくじら ¥1,150
くじらベーコン ¥980
昼は16時までサービス定食も用意されている。
どじょう鍋定食 ¥2,450
(どじょう鍋、田楽、どじょう汁、新香、ごはん)
柳川定食 ¥2,300(上記が柳川鍋なもの)
ビールは私の好きな
サッポロやキリンではなくアサヒが¥600。
どじょうの洗いで酒を使っているので
京、伏見のふり袖なる日本酒¥620や
三社祭りのお酒などを注文するのも良いかもしれない。
自他ともに認める卵好きとしては
どじょうを割り下と葱で喰らうどじょう鍋よりも
牛蒡と卵で喰らう柳川の方が良いかとも思ったのだが、
卵の甘さがどじょうを純粋に楽しむのには邪魔だろうと
どじょう鍋定食とくじらベーコン、それから○○○を
注文させていただいた。
最初にやってきたのはくじらベーコンだ。
くじらベーコンは着色されていないものを
食べたことがないのだが、その理由をご存知な方はご一報を。
パクリとやると・・・
脂の具合は皮の下の脂だろうか・・・
くじらのクセが嫌いな方でも
このサクッと滲み出る脂の具合を楽しむ
ベーコンになれば負荷もなく食べることができるだろう。
まずまずのお味に
どじょうへの期待感がさらに募った・・・
続いて定食に付く田楽だ。
この店の味噌はこれまた1688年創業という
深川のちくま味噌と私でも知っていた1830年創業の
京の本田味噌を使用しているそうだが、
200年の歴史の技に300年、
100年という古来の味を重ねるのだから
匂いを嗅ぐだけで相当な経験になるだろう。
こんにゃくと豆腐の2品が出されるのだが
豆腐田楽は食べて損はない。
重しで水気の切られた
豆の味が凝縮された豆腐と
上品な甘味噌のコラボレーション。
おかわり。と叫びたくなってしまった。
いよいよどじょう鍋がやってきた。
ごくっ・・・
下処理はすっかり済んだ状態でやってきて
そのままでもすぐに食べれる状態なのだが、
好みの量の葱をふりかけ、葱がしんなりしたところで
取り皿に取り分け山椒や七味などの薬味と共にいただく。
元々どじょうにはカルシウム、鉄、マグネシウム、銅、亜鉛、
リン、たんぱく質、ビタミンA、B2、D、Eなどが
豊富に含まれているのだがどじょう鍋はよく考えられている。
と言うのも、どじょうの泥臭さを酒で洗って緩和して、
どじょうには足りないビタミンCを葱で補いながら
さらに葱の効能である魚の臭みを取る効果で
食べやすくしているからだ。
つまり、どじょう鍋はバランスの取れた
スーパー滋養食なのだ。
いい炭だ。
ここまでの風情で
練炭なんかだと一気に興が醒めてしまうのだが
常温の割り下と葱とどじょうを一気に芯まで
馴染ませてくれた。
私の世代である30代は
どじょうの存在は知ってはいるが
積極的に食してきた世代ではない。
おそらくは現55歳以上の方々が
田んぼで取れたどじょうを
ああした、こうしたというお話を
一番してくださるのだろうが、
どじょうの住める田んぼも少なくなり
昔の庶民食がいまや養殖どじょうをありがたがる
高級食材へと移り変わってしまうのだから
近代化によって失ったものを目にするたんびに
失ったものの方が大きくないかと考えてしまうのだ。
葱のハリが失われ口に運ぶ時がやってきた・・・
旨い。
そしてこのねっとりとしたタンパク質が
栄養に満ち溢れているであろうことを感じさせる。
しつこくない小骨達が
うっすらとチクリ、チクリと刺激はしてくれるが
カルシウム。カルシウムと喜んでいただく。
どじょうに臭みはそれほどない。
どうしても気になる方は山椒を使うと良いのだが、
私は素朴なのに複雑で濃厚などじょうの味を噛み締めるためには
何も付けないか七味を一振り位が丁度良い。
人間の弱さが耳元で囁いた。
「どじょうのおかわりと純米酒はいかがでしょうか・・・?」
危ない危ない。
何度もほっぺをひっぱだき、
後ろ髪を引かれる思いでどじょうのおかわりを
1杯だけやらせていただいた。
きれいに平らげた鍋の底には割り下が・・・
残った葱を割り下で一煮立ちさせ、
七味を振りかけてつまみとしていただいた。
〆にはごはん、新香にどじょう汁。
ごはんは1人1人におひつで運ばれ、
艶やかなしっかりとした炊き加減、
米自体も宮城県登米市南方町産の自慢のひとめぼれ。
甘くて美味しい米を
良い仕事ぶりで食べさせてくれた。
仲居の気の配り方も
若い衆といえども年配中心の客層に揉まれた分
手錬が多いように感じた。
2つだけ残念な点は
たくあんの黄色い着色と箸置き。
今の時代色の悪い茶色い
無添加たくあんは歯ざわりも見た目も悪いと
出しにくいのだろうが、
このお店ならば漬けてもいいんじゃないかなぁ。
たくあん位・・・
箸置きは竹でもなんでも良いから
神棚の前で凛と食べさせて欲しかった。
どじょう汁。
田楽で味噌を褒めすぎたが
この味噌汁こそ歴史の融合の産物だろう。
どろっとした味噌汁は
甘すぎず、辛すぎず、
どじょうの滋養的な旨みがアクセントになり
朝飯にこいつを1杯飲むだけで
十分な食事に早代わりしそうな出来栄え。
こいつが一番旨かった。
こちらのお店。
冒頭で大人の社会科見学と紹介した通り、
特に私世代以下の若年層サラリーマンこそ
是非行くべきだろう。
どじょうの味を食べたこともないまま
不味そう臭そうと毛嫌いする前に、
なくなりそうな食文化が
なくならない前に学んでおく。
正直、菖蒲湯やお盆の意味合い、
正月の門松やしめ縄、昔ながらの結納などなど。
やれと強要はしないまでも、
親の世代が死んでしまったらどれだけの家庭が
正しく理解したうえでやるやらないの判断ができるのか
心配になってしまうからだ。
私も恥ずかしながら
正月飾りは親の教えを乞うた身だが、
聞いても誰も判らない時代が
すぐそこまで来ているように感じているのだ。
説教臭いが自問自答。面目ない。
もうすぐ5月5日だ。
私の日記を読んで
初めて子供を菖蒲湯に入れたなんて話があれば
文化勲章の候補にでもなるのだろうが
どんな些細な親元に伝わる慣わしでも
タスキを繋ぐのは一つの役目。
これからも頑張って欲しいとエールを送りながら
ご馳走様でした。
駒形どぜう浅草本店
台東区駒形1-7-12
TEL03-3842-4001
※お問い合わせの際に
「銀座の甚平喰い倒れ日記」を見たというと
「甚平?いなせだねぇ」と言われるかもしれません。
11:00~21:00
大晦日・元日休業
どぜう定食 ¥2,450
くじらベーコン ¥980
甚平満足度 ★★★★▲
甚平満腹度 ★★★☆☆
~ ぽち、ポチ、ポチっとお願いします ~
・・・ あっ、ありがとうございます。・・・
それでは明日もお会いしませう
こんな本格的なの食べた事ないです~
結構、グロテスクですね~
鯨ベーコン美味そう~
ぽちっと!
昔~国技館が両国ではなくて蔵前にあった時分に
お相撲の帰りに祖父につれてやってきたこの店。
正座がへたくそな私は1階は苦手でしたが
どぜうは旨かった~という記憶は今も残っています
何度もほっぺをひっぱだき、
後ろ髪を引かれる思いでどじょうのおかわりを
二~三杯平気でしそうな私の胃袋が
怖いです。へへへ
これからもヨロピクたらふく旨いものをご存知な素敵なブログに乾杯
おはようございます。甚平です。
どじょう。見た目に躊躇せずに食べると
ズッ。ズッと旨さが腹に溜まり、
体がポッポッとしてきます。
私がメタボだからか・・・
おはようございます。甚平です。
蔵前国技館が閉めたのは
昭和59年の私が小学生の頃なのですが、
全くこいつに関する記憶がないのに驚きました。
若島津とか覚えているんですが
蔵前でなく両国という思い込みが・・・
お爺様。
子供ながらに
こんな素敵な体験をさせていたとは。
羨ましいかぎり。
私ももっと早く来ておくべきだった・・・
同じく30代。どぜう…確かに進んで食べるモノではなく
極タマに食べる程度。しかもイマイチな印象(涙)
しかし、ココで食べたものは違かった!
ホントに特筆すべき“どじょう汁”。 同感です。
チョット、行ってみたくなった自分がいます。
では、また。
おはようございます。甚平です。
駒形どぜう。
結構皆さん行かれているのに驚いております。
黄金週間やお盆の時期の東京遠征は
東京の人が出かけて行くので
何気に空いている場所も多くお奨めです。
あのドロッとした味噌汁。
再会してくださいね。
私は会社の納会(9月ですけど・・)を
こちらの渋谷店でやろうかと思っております。
建物を見るだけでも価値がありそうです。
江戸の粋を感じました。
こんばんは。甚平です。
諸事情により2週間ばかし死んでました。
このお店。
先日私の妹に会った際にも
行けと命じたのですが、
若者に行って欲しいお店でした。
お客さんの年齢層も芳ばしい高さ。
お店の雰囲気をお客もよくしているのでした。