どうぶつ番外物語

手垢のつかないコトバと切り口で展開する短編小説、ポエム、コラム等を中心にブログ開設20年目を疾走中。

ポエム144 『大毛蓼が咲いている』

2016-12-18 13:50:50 | ポエム

 

     大毛蓼(オオケタデ)

    (城跡ほっつき歩記)より

 

 

空き地にはオオケタデの群れ

ヒタヒタと忍び寄る漁船が白昼を埋め尽くす

かつて覇権を目指した紅の旗が

じわじわと日本に迫る夏から秋への野外劇

 

猛威を振るったセイタカアワダチソウは

いつしか荒れ地から姿を消した

ススキをも席巻した北米渡来の植物だったが

都会ではもう見る影もない

 

戦後の歩みに耳をそばだてれば

悲喜こもごもの声が聴こえる

だが南と北の島では癒えない傷がテラテラ光る

壊す容易さと修復の速度のアンダンテ

 

誰が言ったか歴史とは戦の累々たる記録とか

セイタカアワダチソウが去ったあとには

押し寄せるオオケタデへの怯え

昔遊びの「赤まんま」は潜在する飢えの連想か

 

ままごとが好きな女の子よ

見上げるほどの大毛蓼の陰で神隠しに遭うな

花影にひそむ童うたの恐怖は

無防備な心をただならぬ予感でふるわせる

 

目の前にひろがる穏やかな風景を見れば

何を血迷うか年寄りのたわごと・・・・と

だが団欒のコタツの上ではトランプ遊び

サイドボードには正体不明のマトリョーシカ

 

ああ 社よ寺よ

今夜は九条ねぎを入れたすき焼きでも食って

妄想に疲れた頭を休めます

産地に遠いゆえこれも妄想に終わりそうですが

  

 


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