昭和という時代を懐かしむつもりは無い。
ただ、昭和を生きてきて、その影響を受けたことは事実である。
わたしは、齢をかさねるごとに、自分が通り抜けてきた時代を振り返ってみる。
青春時代、壮年時代、どの一日を切り取ってみても、いま老年期を生きる自分と
どこかでつながっている。
その意味で、自分という存在は、時代の鏡である。
だが、時代は自分だけの鏡では無い。
<おれ>という主人公を鏡にして、昭和を通り過ぎた多くの市井の人びとをも描きたい。そこに<時代>さえあれば、虚実織り交ぜた人間模様が主人公の周りで動き出すはずだ。
懐かしむだけの時代は、古くなるが、そこに生きる人びとのいる時代は、いつまでも新しい。
そのことを信じて、この物語を始めたい。
(続く)
窪庭さんの生きた時代を視野に入れた、あるいは時代を土台に据えた大きな物語が、いよいよスタートですね。
楽しみにしています。