ゆっくり読書

読んだ本の感想を中心に、日々、思ったことをつれづれに記します。

読書3冊

2010-05-27 15:23:28 | Weblog
最近サボリ気味の読書。この2日間で3冊読み終わった。

1冊目『文明の十字路=中央アジアの歴史』
岩村忍著、講談社学術文庫

ウズベキスタン旅行から帰ってきたあと、
中央アジアの歴史をもう一度おさらいしたいと思って読み始めた本。

いろんな民族が入り交じる土地の歴史は、本当におもしろい。
もちろん政治や宗教に一貫性はない。
でも、いろいろな人が命をつなぎ、生活をしている。
「自分は何人か」と定義するものさしは、たぶん日本人とぜんぜん違う。

中央アジアの人たちは、いったい自国の歴史をどのように教えているのだろう。
歴史教科書を見てみたいと思った。

ギリシャ、ペルシャ、中国、インド、ロシア・・・、そして遊牧民と都市定住者。
さまざまな切り口がある中央アジアの歴史を、
この本はとてもコンパクトにまとめてくれている。
ただ、1977年刊行のものを文庫化したものだったので、
ソビエト崩壊後の歴史までは言及されておらず、
この30年の歴史の変動を見ると、その点は惜しい。

2冊目『差別と日本人』
辛淑玉・野中広務著、角川oneテーマ21 A 100

仕事仲間だったけど、いまはすっかり飲み仲間になっている人から借りた本。
いい本を借りた。

自分を他人より優れていると思うことは、ものすごい快楽なのだな、と、
最近よく思っていたところだったので、とても身にしみる内容だった。
この本で語られることは、
私の実体験とは比べものにならないくらい広範なことだけど、
1人ひとりの心にひそむ差別への欲求は根っこが同じだと思う。

私が同和問題を初めて知ったのは、小学生のときにした母との会話でだった。
学校での仲間はずれの話をしたときに、
母が「その子はおうちの事情で仲間はずれにされてるの?」と尋ねてきた。

母は関西出身だったので、小さくてまだ分別がない頃、
周囲の人と一緒になって、指で「四」としながら同級生を差別した経験をもっていた。
そして、あとからいわれのない差別だったと知った母は、ずっと後悔をしていた。
だから、私に尋ねてきたのだ。

その後、同和問題や在日の方への差別について、母とは何度も話すようになった。
おかげでニュースで取り上げられているときは、なんとなく目をとめるようになったので、
この本で語られていることのほとんどは、概略を知っていたけど、
当事者の口から語られると、また違う重さがあるし、
それが国政と関連していると思うとなおさらだ。

制度が変わっても、1人ひとりの心が変わらなければ、
結局はなにもよくなっていかないし、
そもそも差別によって得られる優越感は、心の目を曇らせる。
そういう私にも、たくさんたくさん偏見がある。

3冊目『死ねばいいのに』
京極夏彦著、講談社

すごいタイトルだなあ。
この作品も、人の心理をよくよく描いた面白い内容だった。
自己正当化や保身からうまれる後付けのストーリーは、
本人には死活問題だけど、周囲の人から見ると滑稽だ。

単に肥大化して収集がつかなくなった自意識に振り回されているだけだけど、
もちろん当人はそうと気づくことができない。
できないから自意識なんだろう。

それにしても、会話の展開を書くのが本当にうまい。
どれだけ人間観察をする目が優れているのかと感心する。

先日、友人に京極さんの文章が面白くて好きだと言ったら、
「私は読んだことがありませんが、かなりクセのある文章を書かれる方だという話は
聞いたことがあります」と言われた。
こういう噛み合ない会話も、
裏を補完していくと、きっと面白いストーリーになるんだろうな。

ただ、それでもその人とこの会話を続けていく体力も気力も、
私にはないから発展しない。


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