永井路子『この世をば(下)』
★★★★☆
【Amazonの内容紹介】
直木賞作家・永井路子氏の作品が遂に電子化!
姉・詮子、妻・倫子などの助けもありながら、
姉・詮子、妻・倫子などの助けもありながら、
道長は三十歳にして遂にトップの座につく。
ライバルと目されていた兄・道隆の長男伊周の失脚もあり、
ライバルと目されていた兄・道隆の長男伊周の失脚もあり、
道長は生来の平衡感覚で宮廷政治を仕切り、
「一家立三后」と栄華を極める……。
表面的な華やかさに誤解されがちな人間・藤原道長の
表面的な華やかさに誤解されがちな人間・藤原道長の
素顔を見事に浮かび上がらせた名作。
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平安朝の貴族たちが、
「病気や死は怨霊/恨みのせい!」
という発想だったのは知っていたけれど、
身内の命を救うために、
「自分が追い落とした政敵を復帰させて!」
って帝に本当に懇願しちゃうの、今の感覚だと相当面白いな。
そうして復帰させた伊周を、また呪詛の疑いをかけて追い込むの、
いい加減にしろって思うが……。
相手が中宮だろうと天皇だとうと関係なく、
邪魔な人物の大切な日に、自分のイベントをぶつけて
自分のほうに廷臣たちを集めてしまい、
相手のプライドをへし折る。
本当に奢った権力者の振るまいといった感じ。
この作品では「権力という名の魔鳥」で説明をつけていたけれど、
目も悪く、耳も聞こえなくなりつつあった三条帝を
追い込むの、今の感覚だと人道的にかなり問題ありだよ。
息子の顕信が突然出家すると言いだし、
母親である明子に対して
「もうちょっとしっかりしてくれないと!」
とぷんすかしていた道長が、泣いている明子を見たとたん、
「俺が悪かった!」
になるの、おかしかったけど、だからってこの後、
高松系の子どもたちを引き上げたりしないんだよな~。
後ろ盾である父親が失脚すると、
たとえ権力者の妻になっても、妻自身もその子も不遇……。
ここのところ、『望みしは何ぞ』でどう書かれているのか
読むのが楽しみ。