金木犀、薔薇、白木蓮

本と映画、ときどきドラマ。
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10:永井路子 『寂光院残照』

2021-01-20 21:08:17 | 21 本の感想
永井路子 『寂光院残照』 (集英社文庫)
★★★★☆

さがしていた短編は、この本にあった!
「頼朝の死」がそれ。
ほかの話はまったく記憶がないから、
これだけ覚えているのは、
当時、目次だけ見て拾い読みしたのかな?
永井路子先生の中では、各史料に登場する人物たちが
立体的に生き生きと存在していて、
時代を作っているのだなあ。

「右京局小夜がたり」
実朝の妻の乳母が語る、実朝の周辺。
政子と阿波局の像は『円環』と同じ。
そしてここでも抜け目のない定家。

「土佐坊昌俊」
鎌倉からの刺客として義経を襲った土佐坊昌俊が主人公。
義経ものを読んでいたときはただの悪役でしかなかったけど、
言われてみれば、「義経を襲った刺客」としてしか
名が残っていない彼。
この役を引き受けることになった事情に
スポットライトをあてている。

「寂光院残照」
阿波内侍の視点で語られる、大原御幸と建礼門院徳子。
徳子って平家サイドの物語でも
キャラ立ってないのが多いんだけど、
このお話では「無関心と無感覚」の人。

「ばくちしてこそ歩くなれ」
一条能保の子・尊長の人生を親しかった僧の視点で描く。
尊長という人物のことを知らなかったからというのも
あるけれど、これがいちばん興味深く面白かった。
承久の乱、鎌倉と親しかった一条家や坊門家も
上皇側についてるんだよな。
義時の毒殺説のソースって明月記なのか。

「頼朝の死」
頼朝の死に絡んで流れる噂。
「邪魔なやつらは滅ぼす」とばかりに御家人たちが
次々と北条に滅ぼされていた中、
大江広元が天寿をまっとうしたのは
こういう人だったからかもね……。
北条家の兄弟姉妹、気の休まらん人生だな。

「后ふたたび」
乞食と婢女の視点で、
藤原頼長の養女として入内し、近衛・二条両帝の
后となった多子、そして頼長を描いた作品。
話はまったく覚えていないけど、
「菜津奈」って名前は覚えてた。

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9:秋田みやび『ぼんくら陰陽師の鬼嫁』

2021-01-20 20:51:51 | 21 本の感想
★★★☆☆3.5

【Amazonの内容紹介】

やむなき事情で住処をなくした野崎芹は、
生活のために通りすがりの陰陽師(!?)北御門皇臥と
契約結婚をした。
ところが皇臥はかわいい亀や虎の式神を連れているものの、
不思議な力は皆無のぼんくら陰陽師で……!?

********************************

好みからは微妙に外れていてハマれなかったのだけど、
これはうまい。
「陰陽師」「契約結婚」と売れ線の掛け合わせだが、
陰陽師がふんわりサイキックじゃなくて、
ちゃんと陰陽思想を踏まえた事件と謎解き。
山場も作ってあるし、実はふたりは過去に……と
いうのもベタだけどよい。

ライト文芸に動物やら幼児やらが多い気がするんだけど、
好きな人が多いんだろうか。
わたしは文字でそれらが出てきてもちっとも萌えないし、
ストーリー上の必要性が感じられないと
むしろ邪魔だと思ってしまう。

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