ホセ・クーラはスペインの首都マドリード在住です。マドリードでは、3月半ばから外出制限が課されているため、クーラも自宅で過ごすことを余儀なくされています。最近のニュースでは、深刻だったスペインの感染拡大も山場を超えつつあるのでしょうか、通勤などへの規制が少しずつ緩和され始めているようです。まだまだ安心はできませんが、厳しい制限に耐えて事態の収束の希望も見え始めたことは、本当に良かったと思います。
そういう最中に、ハンガリーのラジオ局から、自宅で電話インタビューを受けたようです。その内容がネットの記事で紹介されていました。例によって不十分な訳ですが、ざっくりとご紹介したいと思います。
またクーラがFBに掲載した写真や、音楽などもリンクを紹介しています。トップの写真はそのうちの1枚、手作りマスクを披露した写真です。布地はスカーフでしょうか?花柄が可愛いです。
≪私たちも家にいる必要があるーーホセ・クーラ ラジオで語る≫
アルゼンチンのオペラ歌手、作曲家、指揮者、俳優であるホセ・クーラは、月曜日の朝にラジオ番組「おはようハンガリー!」 に出演した。番組で、彼は、コロナウイルスによって引き起こされた状況のなか、日々、自宅でどのように過ごしているか語った。
ホセ・クーラは、防疫のための自宅待機で、彼自身の今後のプランを計画および実践している。緊急事態のため彼は自宅にこもっているが、小さな庭があるので、幸い、散歩や深呼吸のために外に出ることができるという。
「私たちは家にいなければならない。外出できない。ただドアを開けてそこから出ることもできない。それはもちろん、一種の投獄を連想させるものだ。しかし、今回はこの時間を、作曲家として、たくさんの音楽を書いたり、新しいオーケストレーションに取り組んだりして活用することができて、ある意味、幸運であるとも言える。私はちょうど初めてのギター協奏曲を完成させたところだ。これは長年、やりたかったことだ」 彼は言った。
彼は作曲活動を、新型ウイルス禍の状況に関連付けてはいない。もしそうすれば、非常に悲観的な音楽が生まれるだろう、と彼は言う。彼は、自分たち自身の心の底からの、より美しく魅力的な音楽を書くべきであり、すでに悪い状況にあるなかで、さらに悲観的なものを置くことは避けるべきだと考えている。
「非常に多くの異なる積み重なった要素があるため、この状況は本当に非常に特別だ。ウイルス感染の広がり自体、また多くの人が亡くなっていること自体が災害だ。そしてそれだけではなく、この状況につながった原因と、どのようして我々は、将来が再び起こることを回避できるかが大事だ。それが、この感染流行が終わったときに私たちが向き合わなければならない最も重要な問題だと思う。なぜ起きたか、その理由を見つけること、それが再び起こらないように」と語った。
クーラは1月に、ブダペストのハンガリー放送交響楽団と新作のオペラを演奏した。4月には、ミューパでレオンカヴァッロの2幕のオペラ「道化師」を歌う予定だった(感染予防のため公演キャンセル)。彼はハンガリー放送芸術協会のゲストアーティストでもある。
彼に、オンラインでの出演計画や、自宅のリビングルームからのコンサートのやるのかと聞いてみたが、彼はまだそれについては何も考えていない。たぶんイエス、それともノー?
「自宅のリビングルームから演奏するかどうか、わからない。最近インターネットにはたくさんのものがあり、それらはかなり複雑で混乱している。すでに私もインターネットを使用して面白いことを試している。パンを焼いている様子を撮影してみたが、それはリビングルームで歌うよりも聴衆にとっては楽しいのでは?」と彼は付け加えた。
●自宅で過ごす人々に、アルゼンチン歌曲を
自宅のリビングから放送する予定はまだないようですが、ハンガリーで2013年にアルゼンチン音楽のリサイタルを行った際の動画を5曲公開してくれました。
ピアノ伴奏で美しく哀愁ただようアルゼンチンの歌曲です。クーラ作曲の作品もあります。
●クーラのFBより
トップの画像と同じものです。
”もうマドリードにマスクはない。解決策は2つーー食品の買物をやめるか、自作マスクを着けるか。しかし家に白い布がない場合は?まあ、あまり上品とはいえないが、とてもクール! でしょ?”
”焼きたてのパン、明日の朝食用に準備ができた”
●インスタより
”この悪夢の終わりまで髭を剃らない...…サンタクロースの準備中!”
ここで紹介した以外にも、クーラは、自宅で過ごさざるをえない人々を励ますために、昨年のオマーン王立歌劇場マスカットで指揮したベートーヴェン第9交響曲の録画や、クーラ作曲のオラトリオの抜粋など、貴重な映像、録画を公開しています。
また近いうちにクーラ脚本・作曲のオペラ「モンテズマと赤毛の司祭」の動画も公開することを予定しているそうです。
本来ならば、レーベルからリリースすれば収入にもなる貴重な作品です。大手のエージェントやレコードレーベルに所属せず、自営でひとりの独立したアーティストとして独自の活動スタイルをつらぬいてきました。自分の費用をかけて録画してきたはずのものも、これまで簡単にリリースしようとせず、今みんなが苦しんでいる時に、機会が来たといって無料で公開するクーラ。商業主義の商品にはならない、この信念をいつも貫く人です。経済的利益より、芸術的、人間的、倫理的価値に重きをおく人なのだとあらためて思います。
そしてこの新型ウイルスの世界的流行という困難を乗り越え、クーラが強調したように、私たちの社会、世界が、パンデミックで明らかになった問題点、再び繰り返さないための課題を、どう分析し、見通し、改革することができるか、本当に大切なことだと思います。未来にむけての巨大な挑戦です。