人と、オペラと、芸術と ~ ホセ・クーラ情報を中心に by Ree2014

テノール・指揮者・作曲家・演出家として活動を広げるホセ・クーラの情報を収集中

(告知編)2018年 「ホセ・クーラの音楽的世界」―ハンガリーでコンサート / The Musical Universe of José Cura in Hungary

2018-02-13 | チャリティー活動




少し前に公表された、ホセ・クーラの新しいスケジュールの1つを紹介します。「ホセ・クーラの音楽的世界」と銘打たれた、クーラの作曲作品だけを一挙3作上演する(!)コンサートです。
作曲者のクーラ自身が、2曲は指揮をし、1曲はテノールパートを歌います。(指揮しながらは歌いません)
日時は、2018年3月29日、場所はハンガリー・ブダペストのバルトーク国立コンサートホールです。
クーラが長年にわたり支援を続けている障碍者の就労支援のなどを行っているSalva Vita財団の創立25周年を記念した、チャリティーコンサートのようです。


少年の頃から自発的に作曲を始めていたというクーラ。作曲の先生について学ぶとともに、大学でも指揮と作曲を専攻しました。その後も本格的に作曲家、指揮者をめざして勉強を続けていました。クーラ自身が、なぜ作曲するのかについて語った言葉を以前のブログで紹介しています。
→ 「ホセ・クーラ 作曲は、やむにやまれぬもの」


クーラは今年2018年の前半、2月にモナコで自ら舞台デザイン、演出、主演をするブリテンのピーター・グライムズ(2/20~28)の再演(昨年ボンで初演)に取り組み、その後、3月は中東オマーンでオペラ道化師に出演(3/15,17)、その直後にプラハに戻り指揮者としてドビュッシーとラヴェルを演奏(3/21,22)します。そして今回のコンサートが3月29日です。
舞台デザインと演出、歌手、指揮者、作曲家と、この短い2か月の間においても、多面的で多彩な活動に精力的に取り組む予定です。
→ クーラ2018年カレンダー






"The Musical Universe of José Cura"
29 March 2018, Thursday 7:30 pm — 10 pm
Béla Bartók National Concert Hall

José Cura: Modus
José Cura: Magnificat
José Cura: Ecce homo

Conductor: José Cura, Mario De Rose
José Cura= tenor
Zita Váradi= soprano
Krisztina Simon= mezzo-soprano
István Horváth= tenor
Marcell Bakonyi= bass

Hungarian Radio Symphony Orchestra
Choir and Children's Choir (choir masters: Zoltán Pad, László Matos)

「ホセ・クーラの音楽的世界」
2018年3月29日 午後7時30分~10時
バルトーク国立コンサートホール ハンガリー・ブダペスト

ホセ・クーラ作曲
「Modus(モデュス)」
「マニフィカト」
「この人を見よ」

指揮者: ホセ・クーラ、マリオ・デ・ローズ
テノール: ホセ・クーラ その他出演者
合唱団、子ども合唱団
ハンガリー放送交響楽団 








今回演奏されるクーラ作曲の3曲について、初演された時の公演の様子やクーラのインタビューから、抜粋して紹介したいと思います。


●「Modus(モデュス)」

この曲は、2017年10月のプラハ交響楽団のコンサートのために作曲された、クーラの新作です。
以下、クーラのインタビューや記事から。


――プラハ響FBより

中世のプラハにインスパイアされた私は、10分のトラックに、10世紀のキリエに由来する、コーラスとオーケストラのためのモデュスを取り入れた。10月にプラハ交響楽団(FOK)とのコンサートで初演する予定だ。


FOK(プラハ響)という家族のレジデント・アーティストとして、毎年、私は自分の作品から1曲を初演してきた ―― 音楽劇『もし私が死んだら』(2015/16シーズン)、オラトリオ『Ecce homo(この人を見よ)』(2016/17シーズン)。
しかし、(これまでクーラが書き溜めてきた未発表の)『レクイエム(フォークランド戦争の被害者のためのミサ曲)』や、『The Montezuma y el Fraile pelirrojo』,『赤毛の兄弟』などは、このコンサートのためには大きすぎた。

今年、これまでの伝統を壊さないために、私はプラハの中世の雰囲気に触発された短い作品を書くことに決めた。
そこで、私は良いインスピレーションを探し始めた。私は10世紀のキリエからそれを見つけた。

私は2016年のクリスマスまで、一種の「グレゴリオ聖歌」である「Modus(モドゥス)」に取り組んだ。
その曲は常に同じモチーフの周りを回っている。徐々に多くのレイヤーをミュージカルトップに追加しながら発展し、そして同様にシンプルに終わる。






●「Magnificat(マニフィカト)」

マニフィカト=「わが心、主を崇め」とは、キリスト教の聖歌で、ラテン語で、聖母マリアの祈りだそうです。
初演は2014年4月、イタリアのベリーニ劇場でした。クーラはいくつかのインタビューで、このマニフィカト作曲に込められた思いを語っています。


――2015年ドイツ誌でのインタビューより

1988年にマニフィカトを作曲した。私の妻は、2回流産した後、3回目に妊娠した自分自身に気づいた。今回は明らかに確実に思われた。
長男が生まれた時、私は25歳だった。マニフィカト誕生と同時だった。
その3年後に、私たちは幸運を求めて、ヨーロッパに移住した。そして私の歌手としてのキャリアが始まった。当時の楽曲は、27年間、ボックスに仕舞い込まれていた。
私が思うこのマニフィカトは、聖母マリアの歓喜の歌であるだけでなく、夢でいっぱいの若者、そして彼女にいま起こっていることに直面して抱いている怖れの歌でもある。
1988年、テキストにこういう思いを込めて音楽をつけた。プレミア(2014年4月)は非常にうまくいった。私に信頼を寄せてくれたベリーニ劇場(初演の場となったイタリアの劇場)には本当に感謝している。


――2016年3月チェコでのインタビュー

当時、私は25歳だった。妻は2回の流産を経て3度目の妊娠をした。法王が聖母マリア年を宣言した年だった。
歌は私たちが子どもを得た喜び、そして聖母マリア出現への喜びを表現した。しかしそれだけではない。
マリアがその事を知った時、彼女はまだティーンエージャーだった。そして彼女は恐らく、かなりのショックを受けただろう。
私のマニフィカトでは、マリアが砂漠に1人で座っているところから始まる。作品のメッセージが表示される。

1人でいる場合には、人は何もできない。もし我々が団結せず、戦争、テロリズム、経済的道徳的危機を別のものに置き換えようとしない限り、我々は勝利することはできない。
これがマニフィカトに託した、私のメッセージだ。





2016年2月にプラハ交響楽団のコンサートで演奏した際のリハーサル映像。
Jose Cura Magnificat rehearsal news video



子どもの合唱団とのリハーサル
José Cura "Magnificat" composer and conductor





●「この人を見よ( Ecce homo)」

初演は2017年3月のプラハ交響楽団のコンサート。指揮はクーラの友人のマリオ・デ・ローズ、クーラは歌手として、キリストの役を歌いました。


――2017年3月、プラハでのラジオインタビューより

●子どもの痛み、母の痛みを描いたEcce Homo

私がプラハ交響楽団(FOK)のレジデント・アーティストとして持っている関係では、その合意の中でとりわけ、私が作曲した作品を毎年1つ、デビューさせることを含んでいる。昨年は「マニフィカト(Magnificat)」、今年は「この人を見よ(Ecce Homo)」で、それはより大きく、より重要な仕事だ。
Magnificatは長さが12から13分、一方、Ecce Homoはオラトリオで、まだ初演されていないが、予想される期間は、約35分から40分となるだろう。

この作品は私の好奇心から生まれた。時には私の周りの人々と、これらについて議論したことがある。私の妻、近所の司祭と一緒に...。それは神との関係における「人間」的な要素だ。
キリストの生涯と彼の最後の数時間において、いつも私の心に触れてきたことの1つであり、最も注目してきたのは、キリストの人間的次元だ。・・・

私の「Ecce Hom」に新しさがあるとしたら、それは神学的ではなく、音楽的に2つのテーマを挿入したこと。つまり、一方では子どもの痛み、もう一方は母親の痛みであり、それらを同じ作品にまとめたことだ。


――クーラのFBより、ECCE HOMOについて

●1989年に作曲して以降、しまい込まれていた


この作品を、1989年に、ブエノスアイレス出身のテノールの同僚のために書いた。
作品は、彼と私によって公開されることはなかった。若い、夢見る2人には、その実現に必要な要素を集めることはできず、プロジェクトを現実に変える力はなかった。

それから何年も経ち、私の芸術的キャリアはさまざまな方向に向かった。
Ecce Homoは、他の多くの作品と同じように、引き出しの後ろにしまい込まれたままだった。

●30年を経て、作品は成熟した

2016年に、私はそれを再発見し、喜びと誇りをもって、それを実現することができた。
それまでのすべての年月は、単にホコリを集めるために費やしたのではない。作品は成熟した。良いワインと同じように。

間違いなく、過去30年間、私が、人間としてアーティストとして、成熟するためにやらなければならなかったことが、1989年には考えられなかった裁量権を得て、このオラトリオを改訂することを可能にした。







クーラ自身が作曲について、作品について語った動画を。作曲家として、頭や心のなかで曲を想像していると、その曲をはじめて実際に聞いた時には、ショック、よい意味での(時には悪いことも)ショックを受けるということや、マーラーのように、繰り返し繰り返し、曲の修正をしたくなることなど、語っているようです。
José Cura about Ecce homo



こちらはオラトリオ「この人を見よ」を構成する1曲「スターバト・マーテル」の初演(先にこの曲だけ初演された)の様子を伝えた動画
JOSE CURA Stabat mater



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今回のコンサートが行われるのは、ハンガリーの首都ブダペストのバルトーク国立コンサートホールです。
比較的最近建てられた新しいホールで、“芸術の宮殿”と呼ばれている現代的な建築物です。

この間、チェコやハンガリーなど東欧の国々で、クーラの作曲作品の演奏の機会が比較的多くなっています。
昨年クーラは、自ら台本を書いたオペラも作曲し終えたそうです。旧作の初演、上演機会が増えてきたばかりか、新作、オペラの創作などの作曲家として本格的な活動を再開したクーラ。クーラの初オペラ作品が、こうした国々の劇場などで早期に上演機会が得られることを願っています。クーラの脚本、作曲、そして舞台デザイン、演出、主演の作品をぜひ上演してほしいものです。

















*画像は劇場HPなどからお借りしました
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