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論文)葉の老化を促進するSAUR遺伝子

2013-03-11 21:47:28 | 読んだ論文備忘録

SAUR36, a SMALL AUXIN UP RNA Gene, Is Involved in the Promotion of Leaf Senescence in Arabidopsis
Hou et al.  Plant Physiology (2013) 161:1002-1009.
doi:10.1104/pp.112.212787

葉の老化は、遺伝的にプログラムされた過程であり、この間に多くの遺伝子は発現量が低下するが、発現量の増加する老化関連遺伝子(SAG)が見られ、これには、転写因子、シグナル伝達因子、プロテアーゼ等の異化酵素、糖やアミノ酸などのトランスポーターをコードする遺伝子が含まれている。米国 コーネル大学Gan らは、シロイヌナズナの葉の老化過程で発現するSAG201 について詳細な解析を行なった。SAG201 Small Auxin Up RNA 36SAUR36 )をコードしており、展開中の葉や成熟した葉での発現量は非常に低いが、葉の老化が進むにつれ発現量が増加する。SAUR36 遺伝子のプロモーター領域にはオーキシン応答エレメントがあり、葉をNAA処理することによって直ちにSAUR36 の発現量が増加した。SAUR36 遺伝子にT-DNAを挿入したノックアウト系統は、成長の初期過程は正常だが、葉の老化が野生型よりも遅れた。また、ノックアウト系統の葉は、細胞が野生型よりも大きいことから大型化した。よって、SAUR36 は細胞拡張を阻害していると思われる。葉の老化におけるSAUR36 の効果を見るために、グルココルチコイド転写誘導系を用いてSAUR36 を発現させて調査を行なった。その際、SAUR 遺伝子の3'非翻訳領域において保存されているDSTエレメントを含んでいるものと含んでいないものとを過剰発現させて効果を見た。その結果、DSTエレメントを含んでいない系統をDEX処理すると若い葉が黄化したが、DSTエレメントを含んでいる系統では野生型と同様にそのような変化は見られなかった。DSTエレメントを含んでいない系統ではSAUR36 転写産物が多量に蓄積していたが、DSTエレメントを含んだ系統ではそのような蓄積は見られなかった。したがって、SAUR36 の発現誘導は葉の老化を誘導する効果があり、DSTエレメントはSAUR36 転写産物の代謝回転を速める作用があると考えられる。

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