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論文)BBXファミリータンパク質による光形態形成制御

2018-04-27 21:29:41 | 読んだ論文備忘録

Two B-Box Proteins Regulate Photomorphogenesis by Oppositely Modulating HY5 through their Diverse C-Terminal Domains
Job et al. Plant Physiology (2018) 176:2963-2976.

doi:10.1104/pp.17.00856

BBXファミリータンパク質は、N末端側領域に1つまたは2つのB-boxモチーフを有したZnフィンガータンパク質で、シロイヌナズナには32種存在し、5つの構造グループに分けられている。これらのうち構造グループIVに属する6つ(BBX20-BBX25)は、ELONGATED HYPOCOTYL 5(HY5)と相互作用し、BBX20-BBX23は光形態形成の正の制御因子として、BBX24、BBX25は負の制御因子として機能することが知られている。しかしながら、同じグループのBBXタンパク質が相反する機能を示す機構については解明されていない。ドイツ ベルリン自由大学Johansson らは、光形態形成の正の制御因子として機能して胚軸伸長を阻害しアントシアニン蓄積を促進するBBX21と、光形態形成の負の制御因子として機能するBBX24、BBX25との遺伝的な関係を変異体を用いて調査した。bbx24-2bbx25-1 二重変異体は胚軸が短くなりアントシアニンが蓄積、bbx21-1 変異体はそれとは逆の表現型を示すが、bbx24-2bbx25-1bbx21-1 三重変異体は中間の表現型を示した。このことから、2つのグループのBBXタンパク質はお互いに独立して作用することが示唆される。アントシアニン生合成酵素遺伝子のCHALCONE SYNTHASECHS )とFLAVANONE-3-HYDROXYLASEF3H )の光照射による発現誘導についてもアントシアニン蓄積と同様の傾向を示し、bbx24-2bbx25-1 二重変異体では発現が促進され、bbx21-1 変異体では発現が阻害され、bbx24-2bbx25-1bbx21-1 三重変異体では野生型と同程度の発現量であった。hy5-215 変異体ではCHSF3H の発現誘導が著しく妨げられるが、bbx24-2bbx25-1hy5-215 変異体とbbx21-1hy5-215 変異体での発現量はhy5-215 変異体と同程度であった。このことから、BBX21とBBX24/25は独立して機能しているが、どちらもHY5を必要とすることが示唆される。BBX24とBBX21のアミノ酸配列を比較すると、2つのB-boxを含んでいるN末端側領域の類似性は高いが、2番目のB-box以降のC末端側領域の類似性は低くなっていた。そこで、お互いのC末端側領域を交換したキメラタンパク質BB24C21、BB21C24を発現させた系統を用いて解析を行なった。BBX21 を過剰発現させた系統は成長遅延を起こし、野生型と比較してロゼット葉が小さく、開花成熟した個体の草丈も低くなった。BB24C21 を過剰発現させた系統は成長が遅く、花成遅延し、全体的に矮化してBBX21 過剰発現系統と類似した表現型を示した。よって、BBX21のC末端側領域は植物体の成長制御にとって重要であり、この領域がBBX21とBBX24の相反する作用を決定していることが推測される。BB24C21 過剰発現系統、BBX21 過剰発現系統は光に対する感受性が高く、胚軸が野生型よりも短くなった。一方、BBX24 過剰発現系統とBB21C24 過剰発現系統は強光条件で胚軸が野生型よりも長くなった。よって、BBX24とBBX21のC末端側領域は光形態形成の際の両者の相反する機能を決定していることが示唆される。BBX24 過剰発現系統はアントシアニン蓄積量が減少し、BBX21 過剰発現系統は増加するが、BB24C21 過剰発現系統はアントシアニン蓄積が増加し、BB21C24 過剰発現系統は減少した。また、アントシアニン生合成経路の遺伝子群の発現もBBX24BB21C24 過剰発現系統で減少し、BBX21BB24C21 過剰発現系統で増加していた。したがって、BBX24とBBX21によるアントシアニン生合成遺伝子の転写制御もC末端側領域が重要であることが示唆される。最近になって、BBX21がHY5 遺伝子のプロモーター領域に直接結合してHY5 の転写を促進することが報告された。BBX21 もしくはHY5 を過剰発現させた系統は胚軸伸長が抑制されるが、BBX21HY5 の両方を過剰発現させた系統は胚軸がさらに短くなり、BBX21とHY5が相加的に作用した。また、BBX21 過剰発現系統はCHSF3H の発現が強く誘導され、HY5 過剰発現系統では殆ど誘導は見られないが、両者を過剰発現させた系統では単独で発現させた系統よりも発現量が増加した。これらの結果から、BBX21はHY5 の転写調節以外にも、転写後の機構としてHY5の作用を制御していることが示唆される。BBX24 過剰発現系統はHY5 転写産物量の変化が見られないことから、BBX24はHY5 の転写には関与していると考えられる。HY5はCHS 遺伝子プロモーター領域のG-boxモチーフ(CACGTG)に結合するが、この結合はBBX24によって抑制された。BBX24にはDNA結合能力がないことから、BBX24はHY5とヘテロ二量体を形成することでHY5のターゲット配列への結合を妨げていると考えられる。以上の結果から、BBX24とBBX21による光形態形成に対する相反する作用は、それらのC末端側領域によって引き起こされており、両者はHY5を転写後制御することで光に対する応答を調節していると考えられる。

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