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論文)ブラシノステロイドとアブシジン酸による気孔の閉鎖

2018-11-15 05:36:41 | 読んだ論文備忘録

OST1 Activation by the Brassinosteroid-Regulated Kinase CDG1-LIKE1 in Stomatal Closure
Kim et al. Plant Cell (2018) 30:1848-1863.

doi:10.1105/tpc.18.00239

シロイヌナズナCONSTITUTIVE DIFFERENTIAL GROWTH1(CDG1)とそのホモログのCDG1-LIKE1(CDL1)は、受容体様タンパク質・キナーゼのRLCKVII サブファミリーに属するブラシノステロイド(BR)シグナル伝達の正の制御因子である。しかしながら、CDG1とCDL1は発現する組織や、核タンパク質フォスファターゼBRI1 SUPPRESSOR1(BSU1)との結合親和性が異なっている。韓国 漢陽大学校のKim らは、CDL1 が孔辺細胞で高い発現を示すことを見出し、CDL1キナーゼは気孔の運動に関与しているのではないかと考えて詳細な解析を行なった。cdl1 ノックアウト変異体は、気孔の開閉においてアブシジン酸(ABA)感受性が低下しており、ABAが促進する孔辺細胞での活性酸素種(ROS)の生産が低下し、気孔の閉鎖が損なわれているために水分損失が多く、葉の表面温度が低くなっていた。したがって、CDL1は孔辺細胞でのABAに対する生理応答を制御していることが示唆される。気孔の運動に対するBRの作用を見たところ、BRは気孔の閉鎖を促進し、孔辺細胞でのROS生産を増加させ、水分損失速度を低下させることがわかった。一方、BRのこのような効果はcdl1 変異体では見られなかった。ABAが誘導する気孔の閉鎖は、BRを同時に添加すると促進された。したがって、BRは気孔の閉鎖制御においてABAと相乗的に作用することが示唆される。cdl1 変異体はABAとBRの両方に対して非感受性であった。cdl1 変異体以外にも、BR受容変異体であるbri1 変異体やbak1 変異体もABAによる気孔閉鎖に対する感受性が低下していた。BR欠損変異体は正常にABAに応答して気孔が閉じることから、ABAは内生BR量に関係なく直接BRシグナル伝達系を活性化しているものと思われる。ABAによって誘導される気孔の閉鎖を正に制御しているSNF1-関連タンパク質キナーゼのOPEN STOMATA1(OST1)の変異体ost1 は、ABAと同様にBRに対しても完全に非感受性であり、BRによる気孔閉鎖もOST1に依存していることが示唆される。OST1 を過剰発現させた形質転換体は、気孔閉鎖においてABAとBRの両方に対して感受性が高くなっていた。cdl1 変異体のABA非感受性はOST1 を過剰発現させることで抑えられ、OST1 過剰発現個体と同等になったが、OST1 を過剰発現させたcdl1 変異体のBRに対する感受性はOST1 過剰発現個体よりも低くなっていた。よって、CDL1はOST1よりも上流で作用していると考えられる。OTS1はCDL1と相互作用をし、両者の結合はBRやABA処理によって強まることがわかった。また、CDL1はOST1のSer-7ををリン酸化し、このリン酸化によってOST1が活性化されることが気孔閉鎖に必要であることがわかった。BR処理はOST1の活性を大きく高めるが、cdl1 変異体ではBRによるOST1の活性増加が見られなかった。また、cdl1 変異体ではABAによるOST1の活性化が低下した。したがって、ABAによるOST1の活性化にはCDL1が必要である。BRによるCDL1の活性化にOST1は関与しておらず、ost1 変異体のBR非感受性はCDL1 を過剰発現させても抑制されなかった。一方、ost1 変異体ではABAによるCDL1の活性化が見られず、CDL1の過剰発現はost1 変異体のABA非感受性を回復させなかった。これらの結果から、ABAはOST1によるトランスリン酸化を介してCDL1を活性化していることが示唆される。以上の結果から、BRによって活性化されるCDL1キナーゼとABAシグナル伝達因子のOST1キナーゼのクロストークを介してBRとABAは気孔の閉鎖を相乗的に制御していることが示唆される。

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