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論文)根の表皮からのブラシノステロイドシグナルが分裂組織のサイズを制御している

2011-03-17 19:13:39 | 読んだ論文備忘録

Brassinosteroid perception in the epidermis controls root meristem size
Hacham et al.  Development (2011)138:839-848.
doi: 10.1242/dev.061804


イスラエル工科大学Savaldi-Goldstein らは、シロイヌナズナBR受容体キナーゼ変異体bri1 と野生型の芽生えの根の伸長を比較し、bri1 変異体の根は根端から500μmのところから伸長が停止し、成熟した皮層細胞の長さは野生型の半分、分裂組織の長さも短く、細胞数も少なくなっており、結果的に根の長さは野生型の1/3程度になっていることを見出した。よって、BRは根の分裂組織細胞の数と伸長に対して影響を及ぼしている。bri1 変異体では細胞周期のマーカーであるCYCB1;1 、細胞質分裂のマーカーであるKNOLLE の発現量が野生型の半分にまで低下しており、BRは正常な細胞周期活性にとって必要であることが示唆される。BR生合成阻害剤ブラシナゾール(BRZ)処理をした際に根端分裂組織幹細胞近傍のパターン形成に関与する遺伝子の発現を見たところ、PLT1WOX5 の発現が僅かに弱くなり、AGL42 の発現が大きく低下していた。bri1 変異体の根端側の分裂組織は細胞数や組織の長さの減少は野生型と比べて僅かであったが、基部側の分裂組織は長さも細胞数も野生型よりも大きく減少していた。このような分裂組織基部での細胞数減少はBR生合成変異体cpd でも観察された。よって、BRは細胞周期と細胞伸長を促進することで分裂組織領域全体の正常な発達をもたらしているものと考えられる。ブラシノライド(BL)もしくはBRZ処理をした根の分裂組織やbri1 変異体の分裂組織でのPIN1PIN3PIN7 の発現量に変化が見られないことから、BRを介した根分裂組織の大きさの制御はオーキシンによる細胞分裂促進やサイトカイニンによる分化といった機構とは別のかたちで引き起こされているものと考えられる。bri1 変異体において様々な組織特異的プロモーターによりBRI1 を発現させて形態を観察したところ、表皮特異的に発現するGL2 プロモーターによりBRI1 を発現させた場合に根の成長が野生型と同等になった。よって、表皮でBRシグナルを受容することで根の伸長と分裂組織の大きさを十分に制御することができる。静止中心(QC)および中心柱で特異的に発現するAGL42 はBRZ処理した根やbri1 変異体では発現量が低下しているが、GL2 プロモーターでBRI1 を発現させたbri1 変異体では高い発現が見られた。よって、表皮で発現したBRI1は内部の細胞層での遺伝子発現を制御している。このBRシグナルの内部細胞層への移行は、BRI1の下流に位置する転写因子のBES1やBZR1とは異なる因子によって伝達されていると考えられる。

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