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論文)AP2/ERF転写因子による根の再生

2020-02-09 08:53:01 | 読んだ論文備忘録

AP2/ERF Transcription Factors Integrate Age and Wound Signals for Root Regeneration
Ye et al.  Plant Cell (2020) 32:226-241.

doi:10.1105/tpc.19.00378

マイクロRNA156(miR156)がターゲットとしているSQUAMOSA PROMOTER BINDING PROTEIN-LIKE(SPL)転写因子は、シュート再生を抑制することが知られている。miR156は根の再生にも関与していることが報告されているが、詳細な機構は明らかとされていない。中国科学院上海生命科学研究院植物生理生態研究所Wang らは、シロイヌナズナ切り葉からの根の再生において、植物体の齡が進むにつれて発根能力が低下し、miR156量も低下することを見出した。MIM156 を過剰発現させてmiR156の機能を抑制すると発根は抑制され、逆にmiR156を過剰発現させると発根が促進された。miR156のターゲットとなるSPL 遺伝子のうち、SPL2SPL10SPL11 の機能喪失二重、三重変異体は発根が促進され、miR156耐性型のSPL10rSPL10 )を発現させた形質転換体は発根が抑制された。よって、SPL2/10/11 は根の再生に関与していると考えられる。spl2 spl10 spl11 三重変異体の葉はIAAの蓄積量が多く、rSPL10 発現個体はIAA蓄積量が少なく、IAA生合成関連遺伝子の発現量が低下していた。また、rSPL10 発現個体にIAAを添加すると発根量が増加した。したがって、SPL2/10/11はオーキシンを介して発根能力を制御していると考えられる。RNA-seq解析、ChIP-seq解析の結果、SPL10は傷害応答に際して3000以上の植物ホルモンや植物生理に関与する遺伝子の発現に影響しており、233遺伝子は傷害によって誘導されSPL10によって抑制されていた。このうち28遺伝子は転写因子をコードしており、それらは12種類の転写因子ファミリーに分類された。SPL10が直接のターゲットとしている8つのAP2/ERF 転写因子遺伝子のうち、ABSCISIC ACID REPRESSOR1ABR1 )とERF109 は、変異体の解析から発根に関与していることが確認された。以上の結果から、植物の齡や傷害に応答した根の再生にはAP2/ERF転写因子が関与していると考えられる。

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