PP2A activates brassinosteroid-responsive gene expression and plant growth by dephosphorylating BZR1
Tang et al. Nature Cell Biology (2011) 13:124-131.
doi:10.1038/ncb2151
ブラシノステロイド(BR)シグナル伝達において、brassinazole-resistant(BZR)ファミリー転写因子のリン酸化/脱リン酸化は重要な役割を演じている。BRがない状態ではBZR1やそのホモログのBZR2/BES1はGSK3/SHAGGY様タンパク質キナーゼのbrassinosteroid-insensitive 2(BIN2)によってリン酸化されてDNA結合活性を失い、14-3-3タンパク質によって細胞質に保持される。細胞膜に局在する受容体キナーゼのbrassinosteroid-insensitive 1(BRI1)がBRを受容すると、BRI1の細胞内キナーゼドメインと相互作用を示していたBRI1-結合タンパク質BKI1が解離し、補助受容体キナーゼのBRI1-associated receptor kinase 1(BAK1)がBRI1とヘテロ二量体を形成して相互リン酸化によってBRI1が活性化される。BRI1はbrassinosteroid-signaling kinase 1(BSK1)をリン酸化し、リン酸化されたBSK1はタンパク質フォスファターゼBRI1 suppressor 1(BUS1)を活性化し、BUS1はBIN2を脱リン酸化して不活性化する。このことによってBZR1/2のリン酸化が抑制されるが、BZR1/2を脱リン酸化するフォスファターゼは明らかとなっていない。中国 河北師範大学のSun らと米国 カーネギー研究所のWang らは、BZR1と親和性を有するタンパク質の精製・同定を行ない、タンパク質フォスファターゼ2A(PP2A)の幾つかのサブユニットを見出した。これらのうち、B'サブユニットサブファミリーに属するタンパク質がBZR1と直接相互作用を示すことを酵母two-hybridアッセイにより確認した。BZR1との結合強度の違いからPP2A B'サブユニットは3つのグループに分類され、PP2A B'αがリン酸化されたBZR1と最も強く結合することがわかった。BZR1とPP2A B'との結合は生体内でも起こることがBiFCアッセイにより確認され、この結合はBZR1とPP2Aホロ酵素との相互作用を促進することがわかった。PP2A B'αもしくはPP2A B'βを過剰発現させた形質転換シロイヌナズナはBR生合成阻害剤ブラシナゾール(BRZ)に対する感受性が低下しており、bzr1-1D 機能獲得変異体と同様にBRZ存在下で胚軸の伸長が見られた。また、bri1 変異体でPP2A B'αやPP2A B'βを過剰発現させることで、わい化した表現型が部分的に回復し、BZR1が発現抑制しているconstitutive photomorphogenic dwarf (CPD )の発現量が減少した。過剰発現個体ではBZR1タンパク質量が脱リン酸化型、リン酸化型の両者とも増加しており、PP2A B'との結合はBZR1を分解から保護していることが示唆される。機能獲得bin2-1 変異体でのPP2A B'βの過剰発現は、脱リン酸化型BZR1の量を野生型と同等のレベルにした。よって、PP2AはBRシグナル伝達経路においてBIN2の下流もしくは並行してBZR1に対して作用していると考えられる。BZR1にはタンパク質分解に関与しているPESTドメインが含まれており、このドメインを欠いたBZR1(ΔPEST)はPP2Aと相互作用を示さず、脱リン酸化されにくくなった。PESTドメインを欠いたBZR1を過剰発現させた形質転換シロイヌナズナは、わい化して葉色が濃くなり、BR欠損変異体のような表現型を示した。よってリン酸化型BZR1はBR応答に対して阻害効果を示すと考えられる。bzr1-1D 変異体はPESTドメインのProがLeuに置換しており、この変異はPP2Aとの結合と脱リン酸化を強める作用があることがわかった。BZR1にはBIN2によってリン酸化されうる部位が25箇所あり、そのうちのSer173のリン酸化は14-3-3タンパク質との結合に関与している。PP2Aはこの部位を含めてBIN2によってリン酸化されうる殆どすべての部位を脱リン酸化すると考えられる。PP2A B'αやB'βは細胞質に局在しており、このことはリン酸化型BZR1が細胞質に保持されていることと一致している。以上の結果から、PP2AはBIN2によってリン酸化されたBZR1を脱リン酸化して活性化し、BRシグナル伝達経路においてBIN2と拮抗して作用していることが示唆される。
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