Brassinosteroids control male fertility by regulating the expression of key genes involved in Arabidopsis anther and pollen development
Ye et al. PNAS (2010) 107:6100-6105.
doi:10.1073/pnas.0912333107
葯や花粉の発達にはオーキシン、ジベレリン、エチレン、サイトカイニン、ジャスモン酸といった多くの植物ホルモンが関与していることが知られており、これらのホルモンの生合成もしくはシグナル伝達の変異体は花粉稔性が低下する。ブラシノステロイド(BR)も花粉稔性に関与しているが、その詳細な分子メカニズムは明らかとなっていない。中国 復旦大学のWang らは、シロイヌナズナのBR生合成(det2-1 、cpd )、受容(bri1-116 )、シグナル伝達(bin2-1 )変異体における花粉や葯を観察し、BR変異体では、花粉生存率はさほど低下していないが花粉粒数は大きく減少していること、花粉管の伸長は野生型と変わりがないこと、花粉壁エキシンの構造(柱状体、テクタム)に異常が見られ、葯裂開後の花粉放出が少ないこと、タペート細胞が肥大し空胞化していることを見出した。次に、タペ-ト組織や花粉の発達に関与している遺伝子の発現を調査したところ、それらの遺伝子の多く(SPL/NZZ 、DYT1 、TDF1 、AMS 、AtMYB103 、MS1 、MS2 )はBR変異体において発現量が野生型よりも低かった。また、BRシグナル伝達に関与している転写因子BES1 を過剰発現させた個体ではAMS 、AtMYB103 、MS1 の発現量が野生型よりも高くなっていることが確認された。さらにクロマチン免疫沈降(ChIP)試験により、BES1はSPL/NZZ 、TDF1 、AMS 、MS1 、MS2 遺伝子のプロモーター領域に結合することが確認された。以上の結果から、ブラシノステロイドは葯や花粉の発達を制御している鍵遺伝子の発現を直接制御することで花粉稔性に関与していると考えられる。
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