NINJA connects the co-repressor TOPLESS to jasmonate signalling
Pauwels et al. Nature (2010) 464:788-791.
doi:10.1038/nature08854
ジャスモノイルイソロイシン(JA-Ile)がF-boxタンパク質CORONATINE INSENSITIVE 1(COI1)に受容されると、ジャスモン酸ZIMドメイン(JAZ)抑制因子タンパク質が26Sプロテアソーム系によって分解されてJA応答遺伝子の発現が活性化させる。JA-Ile非存在下ではJAZタンパク質は転写活性化因子MYC2と相互作用して遺伝子発現を抑制する。しかし、JAZタンパク質がMYC2による遺伝子発現を抑制する分子機構は明らかにされていない。ベルギー ゲント大学のGoossens らは、タンデムアフィニティ精製(TAP)法によりシロイヌナズナ培養細胞からJAZタンパク質と相互作用を示すタンパク質の精製を行なった。その結果、既知のタンパク質(JAZ12、MYC3、COI1)の他にNovel Interactor of JAZ(NINJA)と命名したタンパク質が得られた。NINJA (At4g28910)はABI-FIVE 結合タンパク質(AFP)ファミリーに属するタンパク質をコードしており、メチルジャスモン酸処理1時間以内に発現が誘導され、その後12時間は誘導状態が維持される。酵母ツーハイブリッド解析から、NINJAタンパク質はJAZ7、JAZ8以外のJAZタンパク質、およびTIFY(TIF[F/Y]XG)モチーフを含んでいるグループⅡTIFYタンパク質に属するZIMドメインタンパク質(PPD1、PPD2、TIFY8)と相互作用を示すことがわかった。また、NINJAタンパク質以外のAFPタンパク質(AFP2、AFP3)はJAZ1と相互作用を示さず、JAZタンパク質はNINJAタンパク質特異的に相互作用を示すことが示された。NINJAおよび他のAFPタンパク質にはA、B、C の3つの保存されたドメインがあり、CドメインがJAZタンパク質との相互作用に関与している。NINJAタンパク質は核に局在し、タンパク質の安定性においてJAの影響を受けない。NINJA 過剰発現シロイヌナズナはJA感受性が低下していたが、これはJAZタンパク質が26Sプロテアソームよる分解から保護されていることによるものではない。NINJA ノックダウン個体はJA応答の抑制が解除され、JA応答遺伝子の多くが過剰発現していた。よって、NINJAタンパク質はJAシグナルの負の制御因子として機能していると考えられる。次に、NINJAタンパク質をベイトとしてTAPを行なったところ、Groucho/Tup1型コリプレッサーTOPLESS(TPL)およびTPL関連タンパク質のTPR2、TRR3が得られた。さらに、MYC3やグループⅡTIFYタンパク質のJAZ12やPPD2もNINJAタンパク質と総合作用を示すことがわかった。TPLはAUX/IAAタンパク質のN末端にあるERFモチーフを介して相互作用をすることでオーキシンシグナルを抑制していることが知られている。NINJAタンパク質のN末端側AドメインにもERFモチーフが存在し、このモチーフがTPLとの相互作用に関与していることがわかった。よって、JA非存在下でMYC2はJAZタンパク質のJasドメインと結合し、JAZタンパク質はTIFYモチーフを介してNINJAタンパク質のCドメインと結合、そしてNINJAタンパク質はERFモチーフを介してTPLコリプレッサーと結合し、MYC2による遺伝子発現が抑制されると考えられる。NINJAタンパク質と相互作用を示すPPD1、PPD2、TIFY8はJAシグナル伝達との関連がないことから、NINJAタンパク質はJA応答遺伝子発現以外にも何らかの機能があるものと思われる。TPLタンパク質はAUX/IAAタンパク質やアブシジン酸シグナル伝達の負の制御因子であるAFPタンパク質とも相互作用を示すことから、総合的なコリプレッサーとして特定のアダプタータンパク質との相互作用を介して複数のシグナル伝達経路に影響を及ぼしていると考えられる。
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