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論文)アンチセンス鎖3'末端プロセシングとFLOWERING LOCUS C のサイレンシング

2010-01-13 22:45:25 | 読んだ論文備忘録

Targeted 3' Processing of Antisense Transcripts Triggers Arabidopsis FLC Chromatin Silencing
Liu et al.  Science (2010) 327:94-97.
DOI: 10.1126/science.1180278

シロイヌナズナの花成は、花成抑制因子であるFLOWERING LOCUS CFLC )の発現抑制によって誘導されるが、その抑制に関与する因子としてRNA結合タンパク質のFCAとFPA、切断・ポリアデニル化特異的因子(CPSF)RNA3'末端プロセシング複合体のメンバーであるFY、ジメチル化されたヒストンH3リジン4(H3K4me2)の脱メチル化を触媒するデメチラーゼのFLDが知られている。英国 ジョン・イネスセンターのDean らのグループは、FCA経路によるFLC 発現抑制に関与する因子を単離することを目的に、FCA を35Sプロモーターで過剰発現させたシロイヌナズナ種子をEMS処理して作出した突然変異体の中からFLC の発現抑制が失われた変異体suppressor of FCA sof )の単離を行なっており、今回新たにsof2sof19 についてマッピングを行なった。sof2sof19 は、それぞれRNA3'末端プロセシング複合体である切断促進因子(CstF)の3つのコンポーネントのうちの2つ、CstF77(At1g17760)とCstF64(At1g71800)をコードする遺伝子に変異の入ったものであった。cstf64 変異体、cstf77 変異体ではFLC 遺伝子のRNAポリメラーゼⅡ結合量が多く、転写の活性化に関与しているヒストンH3K4のトリメチル化量が多いことからFLC の新生転写産物量が増加していた。CstF複合体はmRNAの3'末端の形成に必要なのだが、これらの変異体ではFLC mRNAの3'末端のプロセシングは影響を受けていなかった。よって、CstF64、CstF77、FCA、FYのターゲットとなっているものはFLC 遺伝子座に由来する他の転写産物である可能性がある。著者らは先に、FLC の3'領域から転写される2種類の非コードアンチセンス転写産物が存在することを見出しており、この転写産物の3'末端プロセシングがcstf64 変異体、cstf77 変異体では減少していることがわかった。また、FCAとFPAは独立した機能を持っているが、どちらもFLC の3'領域から転写される短いほうの非コードアンチセンス転写産物の3'末端プロセシングに関与していることが確認された。したがって、FCAはFLC アンチセンス転写産物の3'末端プロセシングを誘導し、これがFLDによるFLC 遺伝子座のH3K4me2脱メチル化を引き起こしてFLC の発現抑制をしているものと考えられる。

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