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論文)ジベレリンにより発現誘導されるシステインリッチタンパク質の生理作用

2010-12-24 19:36:44 | 読んだ論文備忘録

The Arabidopsis cysteine-rich protein GASA4 promotes GA responses and exhibits redox activity in bacteria and in planta
Rubinovich and Weiss  The Plant Journal (2010) 64:1018-1027.
doi: 10.1111/j.1365-313X.2010.04390.x

ジベレリン(GA)は、生合成、シグナル伝達、生理作用について多くの知見が得られているが、シグナル伝達から生理作用に至る過程に関与する因子についての情報は少ない。トマトから見出されたGA-stimulated transcript 1GAST1 )は、そのような因子の1つであり、多くの植物にホモログが存在し、GAにより発現が誘導される。GAST1 はC末端にシステインリッチドメインを持つ低分子量タンパク質をコードしており、シロイヌナズナにはGAST1 様遺伝子ファミリーが14個(GASA1-14 )存在している。イスラエル エルサレム・ヘブライ大学のWeiss らは、シロイヌナズナGAST1 様遺伝子のうちGASA4 を恒常的に発現させた形質転換体を作出し、その機能解析を行なった。GASA4 過剰発現シロイヌナズナは形態的な変化は認められないが、短日条件下での花成が早くなった。また、GASA4 過剰発現個体の種子は、GA生合成阻害剤パクロブトラゾール存在下での発芽率が高くなっており、植物体のGA生合成酵素遺伝子の発現を見たところ、GA20OX の発現量が低下していた。GA生合成酵素遺伝子の発現はGAによって抑制されることから、GASA4 過剰発現個体はGA応答が促進されていると考えられる。3つのGASA 遺伝子(GASA4GASA5GASA6 )をターゲットとする人工マイクロRNAを発現させた形質転換シロイヌナズナは、形態や花成時期に変化は見られなかったが、パクロブトラゾール存在下での種子発芽率が野生型よりも高くなっていた。gasa5 機能喪失変異体シロイヌナズナはGA応答が促進されるという報告があることから、人工miRNA発現種子のGA合成阻害剤存在下での発芽促進は、GASA5 の発現抑制によるものと考えられる。GASA4 過剰発現個体は、葉に傷害を与えた際の過酸化水素の蓄積が抑制されており、GASA4は酸化還元活性があるものと思われる。さらに、GASA4 過剰発現個体は傷害による一酸化窒素(NO)の蓄積を抑制し、NOドナーであるニトロプルシドナトリウム(SNP)存在下での種子発芽阻害が低減された。GASA4による過酸化水素やSNPに対する耐性は、GASA4 を発現させた大腸菌においても観察され、GASA4のシステインリッチドメインを発現させた場合でもSNP耐性を示した。GASA4のシステインリッチドメインのCys残基4箇所をAlaに置換したものを過剰発現させたシロイヌナズナは、傷害による過酸化水素の生成が僅かしか抑制されず、GA20OX の発現低下も見られなかった。よって、GASA4の活性にはシステインリッチドメインが関与していると考えられる。以上の結果から、GASA4はGA応答を促進するタンパク質として、そして酸化還元調節因子として機能していると考えられる。

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