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論文)Aux/IAAタンパク質のオーキシン応答因子以外のターゲット

2010-12-26 17:57:24 | 読んだ論文備忘録

Repression by an auxin/indole acetic acid protein connects auxin signaling with heat shock factormediated seed longevity
Carranco et al.  PNAS (2010) 107:21908-21913.
doi:10.1073/pnas.1014856107


スペイン科学調査最高評議会 天然資源・農業生物学研究所のJordano らは、ヒマワリの種子で発現し胚発生過程に関与している熱ショック転写因子(HSF)HaHSFA9と相互作用をするタンパク質を酵母two-hybrid法によりスクリーニングし、Aux/IAAタンパク質をコードするcDNAを単離した。このタンパク質はシロイヌナズナに29個あるAux/IAAのうちのAtIAA27との類似性が高いことからHaIAA27と命名した。HaIAA27とHaHSFA9との相互作用は、HaHSFA9がHSF同士がオリゴマーを形成する際に使われるドメイン(OD)と、HaIAA27はAux/IAAはオーキシン応答因子(ARF)と相互作用をする際に使われるドメインIIIおよびIVとの間で形成されることが判った。HaIAA27のドメインIIをアミノ酸置換して安定化させたタンパク質を用いて、ヒマワリ胚においてHaIAA27とHaHSFA9が相互作用を示すことがBiFC法によって確認された。よって、Aux/IAA(HaIAA27)タンパク質は生体内においてARF以外のタンパク質(HaHSFA9)とも相互作用をすることが示唆される。HaIAA27はヒマワリ未熟胚においてHaHSFA9の作用を抑制しており、内生オーキシン量が増加するとHaIAA27が分解されて抑制が除去される。HaIAA27を種子特異的プロモーターDS10 で発現させた形質転換タバコを作出して表現型を解析したところ、野生型のHaIAA27を発現させた場合には異常は見られなかったが、ドメインIIをアミノ酸置換したHaIAA27を発現させたタバコでは、種子中の低分子量熱ショックタンパク質(sHSPs)蓄積量が減少し、芽生え胚軸と主根が太短くなった。ドメインIとIIを欠失させARFとの相互作用に関与するドメインのみを有するタンパク質を発現させた場合は、種子中のsHSPsの蓄積はドメインIIをアミノ酸置換したHaIAA27を発現させたものと同程度に減少したが、芽生えの形態変化の程度は軽微であった。したがって、HaIAA27による熱ショック転写因子の抑制は、Aux/IAAタンパク質によるオーキシン応答因子の抑制とは異なることが示唆される。

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