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植物観察、読んだ論文に関しての備忘録
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論文)フィトクロム相互作用因子(PIF)4によるオーキシン生合成の活性化

2012-05-08 19:21:26 | 読んだ論文備忘録

PIF4-Mediated Activation of YUCCA8 Expression Integrates Temperature into the Auxin Pathway in Regulating Arabidopsis Hypocotyl Growth
Sun et al.  PLoS Genet 8(3): e1002594.
doi:10.1371/journal.pgen.1002594

シロイヌナズナを高温(29℃)に曝すと、急速な胚軸の伸長、葉の下偏成長、花成促進といった変化を示す。高温によって誘導される胚軸伸長の際に内生の遊離インドール酢酸(IAA)量が増加すること、この形態変化にはbHLH型転写因子のフィトクロム相互作用因子(PIF)4が関与していることが判っているが、PIF4と内生IAA量変化との関係は明らかとなっていない。中国科学院 遺伝学発生生物学研究所Li らは、シロイヌナズナ芽生えを高温に曝すとPIF4 発現量の増加と共にIAA生合成酵素をコードするYUCCA8YUC8 )の発現量も増加することを見出した。発現量変化を詳細に観察すると、YUC8 の発現量はPIF4 の発現量増加にやや遅れて増加していた。また、YUC8 以外に調査したYUCCA ファミリー遺伝子ではそのような変化は見られなかった。pif4 変異体芽生えの定常状態のYUC8 発現量は野生型よりも低く、高温処理による発現量増加は見られなかった。また、pif4 変異体では高温処理による遊離IAA量の増加も観察されなかった。よって、PIF4YUC8 は高温による胚軸伸長促進をもたらすIAA生合成に関与していると考えられる。PIF435S プロモーター制御下で恒常的にもしくは薬剤誘導プロモーター制御下で発現させた形質転換体は胚軸が長くなり、YUC8 の発現量、遊離IAA量も増加していた。よって、PIF4 の過剰発現はYUC8 の発現量を増加させ、内生IAA量の増加をもたらしている。PIF4タンパク質はターゲット遺伝子のG-boxモチーフ(CACGTG)に結合することが知られている。YUCCA ファミリー遺伝子のプロモーター領域を見ると、YUC8 遺伝子のプロモーター領域には2つのG-boxモチーフがあり、高温による発現量変化が殆ど見られないYUC5YUC9YUC10 遺伝子のプロモーター領域にもG-boxモチーフがあった。これらYUCCA ファミリー遺伝子のプロモーターにPIF4タンパク質が結合するかを調査したところ、YUC8 のG-boxモチーフを含むプロモーター領域にのみPIF4タンパク質が結合することがわかった。したがって、PIF4タンパク質は直接YUC8 遺伝子のプロモーター領域に結合して発現制御をしていると考えられる。YUC8 遺伝子プロモーター制御下でルシフェラーゼを発現するコンストラクトと35S プロモーター制御下でPIF4 を発現するコンストラクトをN. benthamiana の葉で同時に一過的に発現させるとルシフェラーゼの強い発光が見られ、G-boxを欠損させたYUC8 プロモーターではPIF4 同時発現の効果が見られなくなることから、PIF4は生体内においてYUC8 の発現を活性化していると考えられる。T-DNA挿入yuc8 変異体では高温処理による胚軸伸長が見られず、PIF4 過剰発現による胚軸伸長も起こらないことから、YUC8PIF4 の下流において作用していることが示唆される。高温による胚軸伸長をもたらすオーキシンシグナル経路の探索を各種変異体でPIF4 を過剰発現させることで行なったところ、SHY2/IAA4タンパク質の安定化変異体shy2-2 ではPIF4 過剰発現による胚軸伸長が抑制されることがわかった。したがって、オーキシンシグナル伝達の抑制因子であるSHY2/IAA4が高温による胚軸伸長に関与していると考えられる。

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