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浮世博史『もう一つ上の日本史、近代~現代篇』(92) 百田氏の誤り:①『真相』以前に国民は知っていた!②「軍部」への嫌悪!③「政府」に《騙されていた》!④GHQのCIEが制作!

2021-08-31 14:14:35 | 日記
※浮世博史(ウキヨヒロシ)「もう一つ上の日本史、『日本国紀』読書ノート、近代~現代篇」(2020年)「敗戦と戦争」の章(315-384頁)  

(92)百田氏の誤り①:ラジオ放送(NHK)『真相はこうだ』(以下『真相』)が《始まる以前》から国民はすでに日本軍の残虐行為や、戦争中のプロパガンダの嘘を知らされていた! (357 -358頁) 
K  既に述べたようにWGIPの施策のうちラジオ放送(NHK)については、『真相はこうだ』1945/12/9-1946/2/10、『真相はこうだ質問箱』1946/1/18-2/8、『真相箱』1946/2/17-11/29が放送された。(355頁)
K-2 ラジオ放送『真相はこうだ』について、百田尚樹『日本国紀』は次のように述べる。「この番組は大東亜戦争中の政府や軍の腐敗・非道を暴くドキュメンタリーをドラマ風に描いたものだった。国民は初めて知らされる『真相』に驚くと同時に政府や軍部を激しく憎んだ。しかしこの番組は実はGHQがすべて台本を書いており(そのことは国民には知らされていなかった)、放送される内容も占領政策に都合のいいもので、真実でないものも多かった。すべては日本人を『国民』対『軍部』という対立構図の中に組み入れるための仕掛けだったのだ。また『太平洋戦争は中国をはじめとするアジアに対する侵略戦争であった』ということを徹底的に刷り込むためのものでもあった。」(百田424頁)
K-2-2 百田氏の誤り①:百田氏は「国民は初めて知らされる『真相』に驚く」と言うが、これは誤りだ。ラジオ放送『真相はこうだ』(1945/12/9~)が始まるまでに、終戦から4か月近く経っていた。国民はすでに政府と新聞によって日本軍の残虐行為や、戦争中のプロパガンダの嘘を知らされていた。

(92)-2 百田氏の誤り②:『真相』によって「初めて」、「軍部」に対する《嫌悪と批判》が示されるようになったわけでない!(359頁)
K-2-3  百田氏の誤り②:ラジオ放送『真相はこうだ』(1945/12/9~)によって「初めて」、「軍部」に対する嫌悪と批判が示されるようになったわけでない。終戦直後から(a)軍事物資を持ち出して郷里に帰る軍人たち(※《兵》ではなく《職業軍人》)を国民は見ている。「警視庁警備課」がまとめた「街の声」(1945/9/1/15)にそのような多くの指摘がある。(b)陸軍省など軍部の関連省庁で書類が燃やされる隠蔽工作を、多くの市民が目撃している。(359頁)

(92)-3 百田氏の誤り③:『真相』によって「初めて」、「政府」に《騙されていた》と国民が知ったわけでない!(359頁)
K-2-4  百田氏の誤り③:政府に《騙されていた》と、『真相はこうだ』(1945/12/9~)によって国民が「初めて」知ったわけでない。国民自身が、とっくに知っていた。すなわち、(ア)終戦直前まで「本土決戦」を叫び「一億総玉砕」を唱えていた政府が、突然手のひらを返し、「終戦の詔勅」を発するに至ったこと。国民は《騙されていた》!(イ)「特殊爆弾」を使用するも「被害軽微」との政府の発表が嘘で、原子爆弾の被害は甚大・残虐であったこと。国民は《騙されていた》!(ウ) 東久邇宮(ヒガシクニノミヤ)首相の「声明」発表により、国民はこれまで隠されてきた軍の敗退、軍事力の払底が知らされたこと。国民は《騙されていた》と知った!《参考》東久邇内閣「戦争集結ニ至ル経緯竝ニ施政方針演説」(1945/9/5)、後述。 (エ)そして何よりも《復員兵たち》が自分たちの惨状、戦地での体験(Ex. 侵略戦争であったこと、日本軍の残虐行為)を語り始めていた。(359頁)

(92)-4 百田氏の誤り④:ラジオ放送『真相はこうだ』をGHQのCIE(民間情報教育局)が制作していることは明示されていた!(361頁)
K-2-5 百田氏の誤り④:ラジオ放送『真相はこうだ』について百田氏は「この番組は実はGHQがすべて台本を書いており(そのことは国民には知らされていなかった)」と述べているが、これは全くの誤りor嘘だ。GHQのCIE(民間情報教育局)が制作していることは『真相はこうだ』で明示されていた。(361頁)

《参考》東久邇内閣(昭和20.8.17〜20.10.9):「戦争集結ニ至ル経緯竝ニ施政方針演説」(1945/9/5)
 稔彦、先に組閣の大命を拝し、国家非常の秋に方り重責を負うことになりました、真に恐懼感激に堪えませぬ
 茲に第八十八回帝国議会に臨み、諸君に相見え、今次終戦に至る経緯の概要を述べまして、現下困難なる時局に処する政府の所信を披瀝しますことは、私の最も厳粛なる責務であると考えます・・・・
 諸君、先に畏くも大詔を拝し、帝国は米英ソ支四国の共同宣言を受諾し、大東亜戦争は茲に非常の措置を以て其の局を結ぶこととなりました、征戦四年、顧みて萬感交〃至るを禁じ得ませぬ、併しながら既に大詔は下ったのであります、我々臣子と致しましては飽くまでも承詔必謹、大詔の御精神の御諭しを体し、大御心に副い奉り、聊かも之に外れることなく、挙国一家、整斎たる秩序の下に新たなる事態に処し、大道を誤ることなき努力に生きなければならないと思います・・・・
 征戦四年、忠勇なる陸海の精強は、冱寒を凌ぎ、炎熱を冒し、具さに辛苦を嘗めて勇戦敢闘し、官吏は寝食を忘れて其の職務に盡瘁し、銃後国民は協心戮力、一意戦力増強の職域に挺身し、挙国一体、皇国は其の総力を挙げて戦争目的の完遂に傾けて参りました、固より其の方法に於て過ちを犯し、適切を欠いたものも少くありませぬ、其の努力に於て悉く適当であったとは言い得ざる憾みもあります、併しながら凡ゆる困苦欠乏に耐えて参りました一億国民の此の敢闘の意力、此の盡忠の精神こそは、仮令戦いに敗れたりとは言え永く記憶せらるべき民族の底力であります
 然るにガダルカナル島よりの後退以来、戦勢は必ずしも好転せず、殊にマリアナ諸島の喪失以降、連合国軍の進攻は頓に其の速度を加うると共に、我が本土に対する空襲は次第に激化し、其の惨害は日を逐うて増大して来ました、既に海上輸送力の低下に依って相当の影響を受けて居りました軍需生産は、斯くの如き戦局の、一段の急迫と共に、本年の春頃よりは愈〃至難を加え、一方戦争の長期化に伴う民力の疲弊亦漸く顕著ならんとし、終戦前の状況に於きましては、近代戦の長期維持は逐次困難を加え、憂慮すべき状況になったのであります、茲に其の概要を述べますれば、即ち本年五月頃の状況に於きまして、汽船輸送力は、船舶喪失量の増大と、数次に亙る船腹の南方抽出等に依りまして、開戦当初の使用船腹の概ね四分の一程度を保持するに過ぎませぬでした、而も液体燃料の不足と、連合国軍の妨害激化等に依りまして、運航能率は著しく阻碍せられ、殊に沖縄戦の終末以来、連合国軍航空機の威力の増大に伴い大陸との交通すらも至難の状態となり、一方機帆船の輸送力も燃料不足と連合国軍の妨害に因って急激に減少し、新船の建造及び損傷船舶の補修亦意の如く進捗せず、海上輸送力の斯くの如き機能の低下は、戦力の維持に甚大なる影響を與うるに至りました
 鉄道輸送力の方面に於きましても、車両、施設等の疲弊に加えて、相次ぐ空襲に依り逐次に其の機能を低下し、動もすれば一貫性を失う傾向すらありまして、全体としての輸送力は本年中期以降に於きましては昨年度に比し、各般の努力に拘らず尚お二分の一以下に低減するを免れないものと予想せらるヽに至りました
 斯くの如き輸送力の激減に伴いまして、石炭其の他工業基礎原料資材の供給は著しく円滑を欠くのみならず、南方還送物資の取得も殆ど不可能となり、之に加えて空襲に依る生産施設の被害の増大と作業能率の低下は、各産業に深刻なる影響を與え、工業生産は全面的に下向の一途を辿り、軍官民の努力にも拘らず是が速かなる改善は望み難き状況となったのであります
 鉄鋼の生産は開戦当初に比し約四分の一以下に低下し、鉄鋼に依存する鋼船の新造補給も爾後多くを期待し得ざる状況となりました、又所在資材の活用戦力化も、小運送力の低下、配炭の不円滑等の事情に依り、減退の一路を辿るようになりました
 石炭に付きましても、出炭実績は益〃悪化するに加えて、陸海輸送力の大幅低下に依り、供給は逐次減少し、是が為め中枢地帯の工業生産は全面的に下向き、本年中期以降是等の地帯に於きましては相当部分運転休止を見るが如き由々しき事態の発生をすら予想せらるヽに至ったのであります
 又大陸工業塩の還送減少に伴い、ソーダ工業を基礎とする化学工業生産は加速度的に低下するの已むなきに至り、是が為め本年中期以降に於きましては、金属生産は固より、爆薬等の供給にも支障を生ずる虞なしとせざる危機に瀕したのであります
 液体燃料に於きましても、既に日満支の自給力に依存するの外なき状況にありましたが、而も貯油の払底と拡充の困難に伴い、アルコール、松根油等の生産増強に異常なる努力を傾けましたにも拘らず、航空機燃料等の減少は、遠からざる将来に於て戦争の遂行に重大なる影響を及ぼさざるを得ない状況に立至ったのであります、一方航空機を中心とする近代戦備の生産も亦空襲の激化に因る交通及び生産施設の破壊と、各種材料、燃料等の不足に因り、従来方式に依る大量生産の遂行は遠からず至難を予想られるヽに至ったのであります
 斯くの如く我が国力は急速に消耗し、本年五、六月の交に於きましては、近代戦を続行すべき物的戦力の基盤は極度に弱められ、軍官民相協力して凡ゆる対策を講じ、国力の恢復に異常なる努力を捧げましたが、近き将来に於て物的国力の徹底的転換を図ることは、漸く至難なるものあるを思わしむるに至りました、殊に沖縄戦の終末以来形勢は全く重大化するに至ったのであります
 加うるに長期に亙る戦争の結果、国民生活、特に食料の面に於ける苦難は益〃増加すると共に、インフレーションは逐次一般に浸潤せんとし、戦力の現況は戦争の前途に対し深甚なる考慮を要するに至りました
 此の間我が特別攻撃隊は悲愴極りなき盡忠の精神を発揮して赫々たる偉勲を樹て、硫黄島、フィリピン、沖縄島等に於ける陸海の将兵亦一丸となって奮戦力闘、克く進攻の連合国軍に甚大なる出血を強要する等、我が陸海の精鋭は大東亜全戦域に亙り、一死以て皇国防護の大義に生くる伝統の勇武を発揮し、一億国民亦来るべき本土決戦に完璧の防衛態勢を以て、一挙に上陸連合国軍を撃滅すべく軒昂たる意気を示したのであります、併しながら長期に亙る数々の決戦に於て、其の都度連合国軍に至大なる損害を與えたりとは言え、此の間皇軍の被りました創痍も亦決して少い数字ではないのであります、御手許に配付致しました表に依って御覧の如く、海軍力および航空勢力の消耗は甚大なるものがありました、何れも戦争遂行上重大なる影響を與え、而も前述の如く国内生産の現状に於きましては、是が補充は意の如くならず、又陸上兵力に於きましては、大東亜各地に亙り作戦を続けて来たのでありますが、其の装備は漸く十全を期し難く、終戦時に於ける皇軍の物的戦力は逐次低下するの已むなきに至りました、之に対し厖大なる資源と工業力とを有する連合国側の軍需補給力は愈〃増大し、特に欧州に於けるドイツの屈伏後は、戦勝の余勢を駆って全戦力を帝国の周辺に集中し来り、物的方面に於ける彼我戦力の相対的比率は、急速に均衡を破るに至りました、国力の現状は以上の如く、陸海の戦備も亦斯くの如く低下を見るに至りましては、徹底的勝利の確信も理論上に於ては遺憾ながら其の根拠を減少し、戦争の継続は正に容易ならざる段階に到達したのであります
 一面連合国航空機に依る我が本土の空襲は愈〃甚だしく、大都市は申すまでもなく、中小の諸都市は次々に壊滅し、戦災に因り家屋の焼失せるものは二百二十萬に達し、負傷者は数十萬を以て数え、戦災者は一千萬に垂んとするの惨状を呈しました、而も八月に入りまして連合国軍は新たに原子爆弾を使用するに至り、其の攻撃を受けました広島、長崎両市の惨状は、眼も当てられぬ悲惨なものであります、其の残酷なる非人道的なる災禍の及ぶ所、延いては我が民族の滅亡を来し、世界の人類の文明も為に破壊に陥るを憂えしむるに至りました、加うるにソ連は突如として我が国に宣戦し、国際情勢亦最悪の事態に到達したのであります・・・・
 組閣の大命を拝するに当りまして、畏くも 天皇陛下に於かせられましては私に対し、「特に憲法を尊重し、詔書を基とし、軍の統制、秩序の維持に努め時局の収拾に努力せよ」との有難き御言葉を賜わりました、私は此の有難き 大御心に副い奉ることを唯一の念願として、之を施政の根本基調として、粉骨砕身の努力を致し、国民の先頭に立ち平和的新日本の建設の礎たらんことを期して居ります、国民諸君も亦畏き 聖慮の存する所を再思三省され、心機一転、溌刺清新の意気を以て、新たなる御代の隆昌に向って勇往邁進して戴きたいのであります
 是が為には特に溌刺たる言論と公正なる與論とに依って、同胞の間に溌刺たる建設の機運の湧上ることが、先ず以て最も重要なりと信ずるのであります、私は組閣の初めに当りまして建設的なる言論の洞開を促し、健全なる結社の自由を認めたき旨意見を表明する所があったのでありますが、政府と致しましては、言論の尊重、結社の自由に付きましては、最近の機会に於きまして言論、出版、集会、結社等臨時取締法を撤廃致したき意向であり、既にそれ等の取締を緩和致しましたことは先に発表致しました通りであります、苟くも国民の能動的なる意欲を冷却せしむるが如きことなきよう、今後とも十分留意して参る所存であります、特に帝国議会は、国民代表の機関として名実共に真に民意を公正に反映せしめ得る如く、憲法の精神に則り正しき機能を発揮せられんことを衷心より希望するものであります
 戦争の終結に伴いまして、軍事上、産業上の復員が行われ、今後多数の同胞は各〃其の家郷に、或は又旧の職場に復帰して参ります、又大東亜各地に配備せられて居ります多数軍隊の内地帰還は真に容易のことではありませぬ、相当の年月を要する処があるのでありますが、是等の任務を解かれた軍人及び産業要員の就職、授産等の援護厚生に付きましては、政府と致しましても固より萬全の準備を盡して遺憾なきを期する所存でありますが、同胞諸君に於かれましても、傷き破れた是等の人々に深き思いやりを致され、温き同胞愛を以て抱擁して戴きたいのであります、特に特別攻撃隊の勇士を初め、壮烈護国の華と散られました幾多の将士の盡忠に対しましては、私は諸君と共に謹んで敬弔の誠を捧げます、又戦陣に傷き病んだ将兵各位に対し深甚なる同情の意を表し、其の速かなる再起を衷心より希望して居るのであります、政府と致しましては軍人遺族並に傷痍軍人の上に寄せさせ給う有難き 大御心を体し、其の援護厚生に今後特段の努力を傾け施政の萬全を期したき考えであります
 又第一線の将兵と変ることなき危険を冒し、幾多の尊き殉職者を出しつヽも、敢然として長期に亙り海上輸送の完遂に撓まざる努力を示して参りました船員諸君に対し、更に空爆下一身の安危を顧みず増産増送の職場を守り抜き、遂に職域に殉じた同胞諸君並に皇国の大義に生くる行学一致の学徒動員に、真に目覚ましき働きを示しました学徒諸君に対しましては、私は諸君と共に心から敬意を表しますると共に、空爆に因り非命に斃れ、家を失い、職を離れた同胞諸君に対し深甚なる同情の意を表するものであります、是等殉職者、戦災者の援護に付きましては、今次の 御詔書に於きましても洵に有難き 御聖慮を拝して居るのでありまして、政府は今後とも全力を傾注致したき考えであります、戦災者諸君に於かれましても、悲運に屈することなく、速かに溌刺たる意気を以て建設に奮起して戴きたいのであります ・・・・
 畏くも 詔書には「朕は常に爾臣民と共に在り」と御示しになって居ります、此の有難き 大御心に感奮し、我々は愈愈決意を新たにして、将来の平和的文化的日本の建設に向って邁進せねばならぬと信じます、全国民が一つ心に融和し、挙国一家、力を戮せて、不断の精進努力に徹しますならば、私は帝国の前途は軈て洋々として開け輝くことを固く信じて疑わぬものであります、斯くしてこそ初めて、宸襟を安んじ奉り、戦線銃後に散華殉職せられましたる幾十萬の忠魂に応え、英霊を慰め得るものと固く信じます
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