★ローマ教皇死去に伴って行われる教皇選挙(コンクラーヴェ)!Cf. カトリックの信者数14億人。
★イギリス出身でローマ教皇庁首席枢機卿であるトマス・ローレンス枢機卿が教皇選挙(コンクラーヴェ)を執行する。100人以上の枢機卿がシスティーナ礼拝堂に集まる。
☆有力な4人の枢機卿
・ベリーニ枢機卿:アメリカ出身でバチカン教区、リベラル派
・トランブレ枢機卿:カナダ・モントリオール教区、穏健保守派
・アデイエミ枢機卿:ナイジェリア教区、初のアフリカ系教皇の座を狙う
・テデスコ枢機卿:イタリア・ベネチア教区、保守派・伝統主義者
さらにベニテス枢機卿:アフガニスタン・カブール教区、メキシコ出身で前年に前教皇によって新たに任命された、開始直前に到着
★どこまでが前教皇の計画だったのか? 生前テデスコ枢機卿とやりあっていた前教皇は、チェスで八手先を読む策略家だった。よって自分の死後の教皇選挙の策略(秘密)を張り巡らせていた。
①ローレンス枢機卿を辞任させず教皇選挙の管理を任せる。
②テデスコ枢機卿に対抗できる人材としてベニテス枢機卿をひそかに指名する。
③相談相手のシスターアグネスに死後のなりゆきのサポート(秘密書類の暴露など)を託す。
④トランブレ枢機卿に、アデイエミ枢機卿潰しの原因となるシスター(性的暴行の被害者)を招致させる。
⑤トランブレ枢機卿を潰せる汚職報告書(秘密書類)をつくっておく。
☆前教皇はトランブレ枢機卿との会合後に急逝、あるいは殺された?
★有力候補のはずだったリベラル派の日和見主義者ベリーニ枢機卿は芯も押しも足りずしぼんでいく。
やる気がある候補は三人、汚職まみれの穏健保守トランブレ枢機卿、初のアフリカ系教皇の座を狙うアディエミ枢機卿、保守派・伝統主義者で排外主義的なテデスコ枢機卿のみ。
☆前教皇に教皇選挙の管理者を課された主人公ローレンス首席枢機卿。教会の規律にこだわる彼は、シスターアグネスの協力のもと違反者のアデイエミ枢機卿(シスターへの性的暴行)、トランブレ枢機卿(汚職)を追放していく。
★トマス・ローレンス首席枢機卿は「疑いのトマス」の立場に立つ。十字架に磔にされ息絶えたはずのイエス・キリストが三日後に復活した噂が流れた際、弟子の一人のトマスは疑念を抱いた。「あの方を見て傷に指を入れるまで信じない」。そうするとイエスがやってきて傷に指を入れるよう命じ、トマスを観念させ、おしえを説く。「信じない者ではなく、信じる者になりなさい」「わたしを見たから信じたのか?見ないのに信じる人は、幸いである」。
★トマス・ローレンス首席枢機卿は、「疑いのトマス」のように、「見ないと信じない」者であり、かくて教皇選挙においても枢機卿たちに関する風聞・噂話を全て確かめずにはにいられない。その結果、アデイエミ枢機卿、トランブレ枢機卿を追放する。リベラル派の日和見主義者ベリーニ枢機卿は芯も押しも足りずしぼんでいく。かくてローレンス首席枢機卿は野心に目覚め、新教皇を目指しはじめる。
★ところが突如、テロリストによる爆発が起き、システィナ礼拝堂の壁が破壊され、教皇選挙が中断される。テデスコ枢機卿のテロリストを「獣」と呼ぶ排外主義が、勝利しそうになる。(ローレンス首席枢機卿の「教皇」への野心は潰える。)だがその時、ベニテス枢機卿が「ヒトを獣と呼び、暴力に訴える態度に人々が陥ってはならない」と忽然と反論する。ベニテス枢機卿の発言はかくて、枢機卿たちの心をつかみ、テデスコ枢機卿は支持を失い、ベニテス枢機卿が新教皇に選出される。
☆現実的に考えれば、この時点でもローレンス首席枢機卿が新教皇の筆頭候補だろう。ベニテス枢機卿は身元が不明すぎる。しかし教会政治に没頭していた枢機卿たちはこのテロの爆発に「神のみわざ」を感じたのかもしれない。爆破された壁の跡から光と風が射し込む最終投票で、ベニテス枢機卿に票が投じられていき、新教皇が決まる。
★だが新教皇に選出されたベニテス枢機卿のスキャンダルが明らかとなる。ベニテス枢機卿は自分が男性として育ったインターセックス(DSD、性分化疾患)であることをローレンス首席枢機卿に告解する。カトリック教会で叙階される(聖職者の地位につける)のは、本来男性のみだ。
☆かくてベニテス枢機卿は、そもそも司祭and枢機卿の資格が失効するはずだ。秘密を知りながら教皇就任を許可したローレンス首席枢機卿もただではすまないかもしれない。究極の選択を迫られたローレンス首席枢機卿は、前教皇と同じく「秘密」を隠蔽する。
☆「神のみわざ」を信じた「疑いのトマス」、ローレンス首席枢機卿は、教会の規律にそぐわない事実を受け容れつつも、「ベニテス枢機卿が新教皇にふさわしい」という直感を「信じる」。
☆そもそも前教皇はベニテス枢機卿がインターセックス(DSD、性分化疾患)であることを知ったうえで、新教皇にふさわしいと考えていた。
★エドワード・ベルガー監督(1970-)は独プロテスタント文化育ち。彼は言う。「疑念というテーマが好きだ。・・・・生きていれば、誰もが疑念に駆られる。テデスコ枢機卿のような者を除けば。なにが正解かは誰にもわからない。直感に従うしかない。・・・・選択が正しいかはわからない。」
★原作者ロバート・ハリス(1957-)は英国の作家で、リベラル派のフランシスコ教皇(在位2013-)を敬愛する。
《感想1》教皇選挙(コンクラーヴェ)における枢機卿たちの「教皇をめざす野心」と「政治的駆け引き」の描写が圧巻だ。調整者であるべきローレンス首席枢機卿さえ「教皇への野心」に一時、捕らわれる。
《感想2》ベニテス枢機卿の勝利は、おそらく現実の教皇選挙では起きないだろう。枢機卿たちの「教皇をめざす野心」と「政治的駆け引き」のみが教皇選挙に決着をもたらすはずだ。
★イギリス出身でローマ教皇庁首席枢機卿であるトマス・ローレンス枢機卿が教皇選挙(コンクラーヴェ)を執行する。100人以上の枢機卿がシスティーナ礼拝堂に集まる。
☆有力な4人の枢機卿
・ベリーニ枢機卿:アメリカ出身でバチカン教区、リベラル派
・トランブレ枢機卿:カナダ・モントリオール教区、穏健保守派
・アデイエミ枢機卿:ナイジェリア教区、初のアフリカ系教皇の座を狙う
・テデスコ枢機卿:イタリア・ベネチア教区、保守派・伝統主義者
さらにベニテス枢機卿:アフガニスタン・カブール教区、メキシコ出身で前年に前教皇によって新たに任命された、開始直前に到着
★どこまでが前教皇の計画だったのか? 生前テデスコ枢機卿とやりあっていた前教皇は、チェスで八手先を読む策略家だった。よって自分の死後の教皇選挙の策略(秘密)を張り巡らせていた。
①ローレンス枢機卿を辞任させず教皇選挙の管理を任せる。
②テデスコ枢機卿に対抗できる人材としてベニテス枢機卿をひそかに指名する。
③相談相手のシスターアグネスに死後のなりゆきのサポート(秘密書類の暴露など)を託す。
④トランブレ枢機卿に、アデイエミ枢機卿潰しの原因となるシスター(性的暴行の被害者)を招致させる。
⑤トランブレ枢機卿を潰せる汚職報告書(秘密書類)をつくっておく。
☆前教皇はトランブレ枢機卿との会合後に急逝、あるいは殺された?
★有力候補のはずだったリベラル派の日和見主義者ベリーニ枢機卿は芯も押しも足りずしぼんでいく。
やる気がある候補は三人、汚職まみれの穏健保守トランブレ枢機卿、初のアフリカ系教皇の座を狙うアディエミ枢機卿、保守派・伝統主義者で排外主義的なテデスコ枢機卿のみ。
☆前教皇に教皇選挙の管理者を課された主人公ローレンス首席枢機卿。教会の規律にこだわる彼は、シスターアグネスの協力のもと違反者のアデイエミ枢機卿(シスターへの性的暴行)、トランブレ枢機卿(汚職)を追放していく。
★トマス・ローレンス首席枢機卿は「疑いのトマス」の立場に立つ。十字架に磔にされ息絶えたはずのイエス・キリストが三日後に復活した噂が流れた際、弟子の一人のトマスは疑念を抱いた。「あの方を見て傷に指を入れるまで信じない」。そうするとイエスがやってきて傷に指を入れるよう命じ、トマスを観念させ、おしえを説く。「信じない者ではなく、信じる者になりなさい」「わたしを見たから信じたのか?見ないのに信じる人は、幸いである」。
★トマス・ローレンス首席枢機卿は、「疑いのトマス」のように、「見ないと信じない」者であり、かくて教皇選挙においても枢機卿たちに関する風聞・噂話を全て確かめずにはにいられない。その結果、アデイエミ枢機卿、トランブレ枢機卿を追放する。リベラル派の日和見主義者ベリーニ枢機卿は芯も押しも足りずしぼんでいく。かくてローレンス首席枢機卿は野心に目覚め、新教皇を目指しはじめる。
★ところが突如、テロリストによる爆発が起き、システィナ礼拝堂の壁が破壊され、教皇選挙が中断される。テデスコ枢機卿のテロリストを「獣」と呼ぶ排外主義が、勝利しそうになる。(ローレンス首席枢機卿の「教皇」への野心は潰える。)だがその時、ベニテス枢機卿が「ヒトを獣と呼び、暴力に訴える態度に人々が陥ってはならない」と忽然と反論する。ベニテス枢機卿の発言はかくて、枢機卿たちの心をつかみ、テデスコ枢機卿は支持を失い、ベニテス枢機卿が新教皇に選出される。
☆現実的に考えれば、この時点でもローレンス首席枢機卿が新教皇の筆頭候補だろう。ベニテス枢機卿は身元が不明すぎる。しかし教会政治に没頭していた枢機卿たちはこのテロの爆発に「神のみわざ」を感じたのかもしれない。爆破された壁の跡から光と風が射し込む最終投票で、ベニテス枢機卿に票が投じられていき、新教皇が決まる。
★だが新教皇に選出されたベニテス枢機卿のスキャンダルが明らかとなる。ベニテス枢機卿は自分が男性として育ったインターセックス(DSD、性分化疾患)であることをローレンス首席枢機卿に告解する。カトリック教会で叙階される(聖職者の地位につける)のは、本来男性のみだ。
☆かくてベニテス枢機卿は、そもそも司祭and枢機卿の資格が失効するはずだ。秘密を知りながら教皇就任を許可したローレンス首席枢機卿もただではすまないかもしれない。究極の選択を迫られたローレンス首席枢機卿は、前教皇と同じく「秘密」を隠蔽する。
☆「神のみわざ」を信じた「疑いのトマス」、ローレンス首席枢機卿は、教会の規律にそぐわない事実を受け容れつつも、「ベニテス枢機卿が新教皇にふさわしい」という直感を「信じる」。
☆そもそも前教皇はベニテス枢機卿がインターセックス(DSD、性分化疾患)であることを知ったうえで、新教皇にふさわしいと考えていた。
★エドワード・ベルガー監督(1970-)は独プロテスタント文化育ち。彼は言う。「疑念というテーマが好きだ。・・・・生きていれば、誰もが疑念に駆られる。テデスコ枢機卿のような者を除けば。なにが正解かは誰にもわからない。直感に従うしかない。・・・・選択が正しいかはわからない。」
★原作者ロバート・ハリス(1957-)は英国の作家で、リベラル派のフランシスコ教皇(在位2013-)を敬愛する。
《感想1》教皇選挙(コンクラーヴェ)における枢機卿たちの「教皇をめざす野心」と「政治的駆け引き」の描写が圧巻だ。調整者であるべきローレンス首席枢機卿さえ「教皇への野心」に一時、捕らわれる。
《感想2》ベニテス枢機卿の勝利は、おそらく現実の教皇選挙では起きないだろう。枢機卿たちの「教皇をめざす野心」と「政治的駆け引き」のみが教皇選挙に決着をもたらすはずだ。
