DIARY yuutu

yuuutunna toki no nikki

リルケ(1875-1926)「やってこい、お前、お前、最後の者」(1926年):彼は神を持ち出さず、一個の生の責任において激しい苦痛と英雄的に戦った! 

2018-10-19 19:54:57 | 日記
‘Komm du, du letzter’ 「やってこい、お前、お前、最後の者」
          Rainer Maria Rilke ライナー・マリア・リルケ

Komm du, du letzter, den ich anerkenne,  やってこい、お前、お前、私が認知する最後の者、
heilloser Schmerz im leiblichen Geweb: 肉体という織物のうちにある不治の苦痛:
wie ich im Geiste brannte, sieh, ich brenne 私が精神のうちで燃えてきたように、見よ、私がお前(苦痛)のうちで燃える;
in dir; das Holz hat lange widerstrebt, この薪(私)は長く逆らった、
der Flamme, die du loderst, zuzustimmen,  お前(苦痛)が燃え上がらせる炎に応じることに対し。
nun aber nähr’ ich dich und brenn in dir. 今やしかし私はお前を養いそしてお前のうちで燃える。
Mein hiesig Mildsein wird in deinem Grimmen 私のこの世での柔和がこのお前(苦痛)の憤怒のうちで
ein Grimm der Hölle nicht von hier. この世ならぬ地獄の憤怒に変化する。
Ganz rein, ganz planlos frei von Zukunft stieg 全く純粋に、全く計画なく未来と無縁に、私は
ich auf des Leidens wirren Scheiterhaufen,  苦悩が乱れ重なった火刑の薪の山に登った。
so sicher nirgend Künftiges zu kaufen 貯えが沈黙するこの心では
um dieses Herz, darin der Vorrat schwieg.  未来を買う確実さなど誰にもないのだ。
Bin ich es noch, der da unkenntlich brennt?  いまここに見分けがたく燃えているもの、それはまだ私なのか?
Erinnerungen reiß ich nicht herein. 記憶を私は引き寄せない。
O Leben, Leben: Draussensein. おお、生よ、生よ:それは外にある。
Und ich in Lohe. Niemand, der mich kennt. そして私は火炎のうちにある。私であると分かる者は誰もいない。

《感想1》リルケの絶筆の詩。彼は白血病で亡くなった。病気の不治の苦痛と彼は戦った。「やってこい、お前、お前、最後の者」とリルケが言った「最後の者」とは、彼の不治の苦痛だ。
《感想2》私はお前(苦痛)に屈服しまいと長く逆らったが、今や私はお前(苦痛)のうちで燃える。私はお前(苦痛)そのものになってしまった。私はお前を養いそしてお前のうちで燃える。この世の柔和は失われ、私は地獄の憤怒そのものだ。
《感想3》お前(苦痛)のため、心の貯えはなにも語らず、未来の計画など立てようがない。私は苦悩が乱れ重なった火刑の薪の山に登るしかない。苦痛の中での死があるのみだ。
《感想4》今や、私とは、苦痛と憤怒として燃えるだけで、何者か分からない存在だ。
《感想4-2》生と呼べるものはもはやココ(私)にない。生は私の外にある。そして私は苦痛の炎のうちにあり、それが私であると誰も分からない。
《感想4-3》リルケは激しい苦痛を伴う白血病だった。最初、内臓に症状が現れ、最後には口腔や鼻の粘膜にも黒い膿疱ができ破れて出血した。
《感想5》だがリルケは神に頼らない。彼は神を持ち出さず、一個の生の責任において激しい苦痛と英雄的に戦った。
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「山中(ヤマナカ)や菊はたおらぬ湯の匂(ニオヒ)」芭蕉(『奥の細道』)(42):山中温泉に入れば、菊の葉を摘んで聖なる露を飲まなくても、不老長寿を得られる!

2018-10-19 11:10:55 | 日記
「山中(ヤマナカ)や菊はたおらぬ湯の匂(ニオヒ)」
Bathing in Yamanak hot spring that smells good, you can get eternal life even though you don’t break off a leaf of chrysanthemum and drink sacred dewdrops on it.

《感想1》山中温泉をほめた句。宿屋和泉屋の主人久米之助(クメノスケ)への挨拶吟。
《感想2》謡曲『菊慈童』は周の慈童が菊の露を飲んで700年の不老長寿を得たと謡う。山中温泉の湯には、菊を折り取って露を飲まなくてすむほどの薬効があると芭蕉が詠んだ。
《感想3》良い湯の香する山中温泉に入れば、菊の葉を摘んで聖なる露を飲まなくても、不老長寿を得られる。洒落たほめ方だ!
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