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バルフィ! 人生に唄えば

2014-08-28 | 劇場映画れびゅー
予告編を観て気になっていたインド映画『バルフィ! 人生に唄えば』を観てきました。
★★★★★

物語が面白い、音楽が楽しい、映像が美しい、二人のヒロインは圧倒的に美しい、バルフィの優しさが心を和ませる、笑いのセンスが心を弾ませる、映画が好きな人はより楽しめる仕掛けに満ちている。
心行くまで楽しんだ後、大いに泣かせてくれたこの映画が大好きです。

メルヘンの世界のように描いているようで、厳しい現実からは目を背けても逃れられない、大人の為のメルヘンチックなラブストーリーに仕上がっている。
一昔前まで際物文化だったボリウッド映画にこう言う感性のものまで生まれてくるとは、日本映画界は本当に気合入れていかないと。

基本的には音楽で『アメリ』の世界観に似た香りを漂わせながら、ボリウッド・ダンスと言うよりもハリウッド・ミュージカルっぽい演出や、ジャッキー・チェン映画から持ってきたチェイス演出や、チャップリンやキートン映画からそのまま持ってきたドタバタコメディー演出、その他ありとあらゆる映画のオマージュだかパクリだか微妙なライン(ぶっちゃけ何も知らない序盤はパクリと思って観ていた)での引用に満ちていて、ハリウッドでのブームから2年遅れてきた強烈な映画愛ムービーとも感じた。

バルフィとシュルティの禁断の恋の話としてスタートする物語ですが、上映時間を確認せずに観に行ったものでこんなに長編だったとは。
でも無駄に長い訳じゃなく、序盤でシュルティが孤独を感じていた意味深な理由に行き当たるまでの描き方が物凄く上手くて、完全に最後まで引き込まれて楽しんで見入ってしまいました。

ネタバレ
映画が始まる時に、「映画が始まるよー♪子供はおしゃべりしないでねー♪この映画は童話だから楽しい事ばっかだよー♪」的な歌詞の、インド語の陽気な歌が流れるところからやたら楽しくて惹き込まれて行きました。

確かにバルフィの性格だけを見て取れば、辛いことや悲しいことが有っても前向きに明るく生きているし、物語全体を通してみれば悲しいシチュエーションでも次の瞬間には希望に満ちていて、やっぱり人生にはそう言う事があったとしてもそれを糧にして次に繋げていくと言う前向きな作りにはなっている。
でも、実はストーリーテラーのシュルティ自身の後悔、彼女自身の孤独は最後まで癒やされることは無く、先に天寿を全うして逝ってしまったバルフィとジルミルに取り残されてしまった自分の人生へのどうしようもない後悔と葛藤。
しかも、物語上は彼女の後悔よりも、逝ってしまった二人に対する感情移入で観客は涙するみたいな、ほんと美人で彼女に感情移入させても成立するのに扱いの勿体なさが余計に上手くて、涙しながら改めて感心する。

夫となる人との婚約中にバルフィとの不義で盛り上がっていた事が、結婚後にバルフィを選ばなかった事を後悔してしまう程に本人が気付かなかった純愛で、久しぶりの再会からその事に気付き、ようやく夫の元を離れてバルフィの基にやって来た時には時既に遅しという、彼女にとっては悪夢のような展開。
久しぶりのシュルティを含めた3人でのデートで浮足立っている間にジルミルを見失ったバルフィのその後の行動を見ていると、もうシュルティの目を見る事も無いほど、行方不明で目の前には居ないジルミルしか見ていない。

バルフィとジルミルの関係は恋とか愛とかそういったものとは違う、そっちへは発展しないと感じていたのが、ここでそうでは無いと気付かされる。
恐らくバルフィ自身もこの時にその事に気付いたんじゃないかな?
ジルミルへの償いとも取れる程に、もう一切シュルティへの関心を見せないバルフィの様子が、純粋なだけ余計に心を打つ。
シュルティとの不義から始まった物語が、ジルミルとの純愛物語に変わっていくこの瞬間が美しい。

ジルミルまで一緒に逝ってしまうラストシーンでさめざめ泣いてしまいました。
それに引き換えシュルティの惨めな事…。

シュルティはバルフィの純粋さや純真さ、奔放さを持った子供のようなところに惹かれていたのだと思うけれど、当のバルフィは自分以上に無垢なジルミルの心に惹かれていたわけで。
重度の発達障害の女性を妻にすることは社会的に難しい事だろうし、しかも巨額の遺産を引き継いでいるというジルミルと全てを捨てて駆け落ちをするようなラブストーリーなんて、日本映画の感性ではこの映画は絶対作れないだろう。
いや、それ以上に、身分制度や差別がいまだまかり通っているインドにおいてこんなにステキな美しい映画が生まれたと言うのも、日本映画以上にあり得なさそうなだけに意外性と製作者の才能に打ちのめされた感覚で映画館を出ました。



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